情報サービスのオープンプラットフォームであるインターネットが引き起こした変革

インターネットが引き起こした巨大な変革は、全ての産業を巻き込みながら、現在進行形で継続している。ここでは、変革のアウトラインを辿ったうえで、次のステージを展望してみたい。

目次
  1. インターネットからIoTそしてIoEへ
  2. IoTの普及状況から見る産業とITの関係
  3. IoTによる2つの方向性
  4. IoEを実現するオープンプラットフォームを目指して

日本でインターネットの商用サービスが始まって今年で26年目になります。過去25年でインターネットは全世界に広がり、現在では42億人をつなぐ巨大なネットワークに成長しました。

今やインターネットを介して、企業情報、個人が発信する情報、コンシューマ参加型のコミュニティサイト、映像や音声の配信サービス、ECサイト、オンラインバンキングやオンライントレード、政府や自治体の行政サービス……等々、さまざまな分野の情報にアクセスできるようになり、また、多種多様なコミュニケーション、コラボレーションが可能になりました。

インターネットは、それ以前の情報ネットワークとは全く異なるアーキテクチャを持っています。根本的な違いは、例えば、放送網や電話網が垂直統合型のクローズドネットワークであったのに対し、インターネットは水平分散型のオープンネットワークである点です。

インターネットがオープンアーキテクチャを採用したことで、放送・通信・情報処理といった業界で破壊的イノベーションを引き起こしました。その結果、インターネットはあらゆる情報サービスのオープンプラットフォームへと成長しました。

ここでは、情報サービスのオープンプラットフォームであるインターネットが、これまでにどのような変化を引き起こし、これからどのような変化を起こそうとしているのかを考えてみましょう。

インターネットからIoTそしてIoEへ

インターネットが引き起こした変化を、AOL創業者のスティーブ・ケース氏は、3つの段階に分けて説明しています。これは、アルビン・トフラーが1980年に出版した『The Third Wave』という書籍において、農業革命後の社会の変化を第1の波、産業革命後の社会の変化を第2の波、そして情報革命による社会の変化を第3の波として予言したことに倣ったものです。ケース氏はトフラーの予言した情報革命という第3の波を、さらに3つの段階(=波)に分類し、それぞれをインターネットの第1の波、第2の波、第3の波と呼んでいます。

まず「第1の波」は、1990年前後から起こったインターネットというオープンネットワークの登場自体を指します。これにより、クローズネットワークで提供されてきた電話や放送などのサービスが、インターネットで提供されるかたちに移行しました。それにともない、サービスの内容と質も大きく変化しました。

2000年前後から起こった「第2の波」では、第1の波で作られたオープンネットワークであるインターネットを活用して、電話や放送以外の新しい情報メディアサービスが多数生まれました。グーグルのような検索エンジン、アマゾンや楽天のようなECサービス、LINEやフェイスブックのようなSNS、NetflixやApple Musicのようなコンテンツ配信サービスなどは、インターネットがあって初めて可能になった革新的な情報メディアサービスでした。

インターネットはさらに、これらのサービスを水平に結合することを可能にしました。簡単な例を挙げますと、電話はSkypeのような電話専用のアプリで提供されるよりもむしろ、LINEやフェイスブックのようなSNSの1機能として提供されるようになっています。このようにインターネットを活用することで、多くのサービスが融合していく流れができあがりました。

インターネットの第1の波・第2の波は、産業構造を大きく変化させることになりました。以前は、通信・放送・メディアサービスなどはクローズネットワーク上で、垂直統合型で独占的に提供されていました。ところが、それらのサービスがオープンになり、水平に融合し始めることで、通信業界・放送業界にも大きな変化が起こり始めました。その結果、かつて市場を独占していた巨大な通信企業や放送メディア企業の代わりに、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる、インターネットを活用し、オープンで水平融合的にビジネスを展開する企業群が急成長を遂げ、圧倒的な市場支配力を持つようになったのです。

そして、今起こりつつある「第3の波」では、通信・放送・情報メディア業界が経験した、インターネットによる垂直統合型から水平融合型への変化が、あらゆる産業・業界に浸透し始めています。

例えばAirbnbやUberのような、既存のモノを共用するシェアリングエコノミーもその1つの流れです。これは、ユーザ同士を情報メディアサービスが直接結びつけてしまうことで、ユーザ個人が持つ家や車をシェアできるようにしたサービスです。このようなサービスが市民権を得たことで、タクシー業界やホテル業界は変革を迫られています。

それと並行して、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が進展し、あらゆる機器やデバイスがインターネットにつながるようになり、産業基盤やサービス提供の仕組みがIT化され、インターネットにつながり始めています。さまざまな情報メディアサービスとIoTが組み合わせられることで、モノやサービスの生産・提供・消費などのあらゆる側面が、インターネットを介して相互につながり、融合・連動するようになるでしょう。

ケース氏は、これらの変化の先にあるのはIoE(Internet of Everything:全てのインターネット)であり、人間のあらゆる活動がインターネットを介してオープン化され、融合されることで、既存産業のビジネスモデルが壊れて、新しいものに置き換わっていくと予測しています。

このように、IoEはIoTの先に起こるものと考えられますが、現時点でのIoTの普及状況はどうなっているのでしょうか?

IoTの普及状況から見る産業とITの関係

総務省がまとめた平成29年版「情報通信白書」によると、2016年にインターネットに接続するIoTデバイスの数は173億個で、2015年時点の154億個から12.8パーセント増加しています。今後はさらに増加して、2020年にはおおよそ300億個になると予測されています。

分野別・産業別に見ると、家電(白物・デジタル)、プリンタなどのPC周辺機器、ポータブルオーディオ、スマートトイ、スポーツ・フィットネスといった「コンシューマ」分野がもっとも多く、2016年時点で65億個以上のIoTデバイスがインターネットと接続しています。次いで、固定通信およびセルラー・Wi-Fiを含む無線通信のためのインフラ機器、携帯・スマホなどの端末を含む「通信分野」のデバイスが50億個を超えています。それぞれの成長率を見ると、おおよそ10パーセントから15パーセント前後となっています。3番目に多いのがオートメーション(IA/BA)、照明、エネルギー関連、セキュリティ、検査・計測機器などオートメーション以外の工業・産業用途の機器を含む「産業用途」で、30億個がインターネットに接続しています。これは「コンシューマ」「通信」分野と比べると数としては少ないですが、成長率で見ると25パーセント超と、倍近い伸びを示しています。また「自動車」分野は、接続しているデバイス数はまだまだ少ないですが、「産業用途」と同様に25パーセントを超える高い成長率を示しています。

デバイスの数では、IoTはまず「コンシューマ」「通信」の2つの分野が先行して、引き続き堅調な伸びを示す一方、「産業用途」「自動車」の分野が急速に立ち上がり始めているということになります。デバイスの用途では、「コンシューマ」「通信」分野のデバイスは、第3次産業との関係が強そうです。また「産業用途」は、第2次産業に属しているものが中心となり、センサデバイスなどは農林水産業の第1次産業において用いられているものも含まれ、セキュリティ用途などを考えると、第3次産業にもおよぶと考えられます。

こうしたIoTの普及状況を見ると、産業とITの関係は、最初は第3次産業での利用が中心となって伸びてきましたが、現在は第2次産業での利用が急速に広がりつつあり、さらに第1次産業へと波及していると考えられそうです。

IoTによる2つの方向性

今後、IoTが進展し、IoEへと向かう過程で、どのような変化が起こると期待されているのでしょうか?

1つは、インターネットに接続された機器の内部情報や、搭載されたセンサで取得した機器周辺の環境情報などの活用が進むことです。機器とその周辺の情報をメーカの工場やサポートセンターが収集可能になると、機器の稼働状況を遠隔から監視・解析して、リアルタイムに状態を把握できるようになります。それによって、機器に対して効率化・最適化のための遠隔制御を行なったり、必要なソフトウェアの改善を施せるようになります。また、個々のパーツの不具合を事前に予測して、未然に事故や故障を防ぐことも可能になるでしょう。

第1次産業である農業分野の活用事例としては、温湿度などのデータを測る各種センサを圃場に配置して、作業の適期を予測したり自動化したりして、生産性を向上させることなどが考えられています。さらに、収量・タンパク質・水分含有量などを農機で自動的に測ったり、機器の稼働状況を〝見える化〟することで、農業経営全般の改善も試みられています。

自動車分野では、自動車の稼働データや環境データを大量に収集し、クラウドに蓄積・解析することで、複雑な状況での最適制御を可能にするための基礎データが作られています。さらにAIを活用することで、自動車や産業機器などの自動運転の実用化が進められており、近い将来、複数の自動車同士を遠隔から協調制御させることも可能になるでしょう。

もう1つは、さまざまなモノやサービスの生産と、供給のための機械やインフラをきめ細かく制御することで、多様化するニーズに応えるサービスや商品作りを目指す動きです。

例えば、スマート工場では、大量生産と変わらないコストでオーダーメイド的な商品を作る「マスカスタマイゼーション」の実現なども進められています。顧客からの注文に応じて生産ラインのソフトウェアを変更し、組み立てる順序や部品を変えて、製品を個別にカスタマイズしたり、工場のライン全体の進捗を把握して、どの顧客向けに、どんな製品が、どこにあるのかといった情報をリアルタイムで管理・制御できるようになることなどが期待されています。これがさらに発展すると、生産工程を持つ多数の企業がインターネットを介して情報を共有し、生産・供給に関わる活動を自動的に連携させられるようになるでしょう。

IoEを実現するオープンプラットフォームを目指して

これらの変化にともない、オープンアーキテクチャのインターネットが情報メディアサービスの共通プラットフォームに発展したのと同じように、現在のインターネットをベースとしながら、企業や業界の壁を超えて、さまざまな産業を水平融合するためのIoEプラットフォームが必要になってくるのではないでしょうか。

その際、各業界の各社が所有していた工場設備といった、これまでは垂直分離されていたインフラが水平につながり、共通のプラットフォームを構成するようになる可能性もあります。さらに、そのプラットフォームには、産業側だけでなく、地域社会や家庭などをより緊密につなぎ、産業とコミュニティとを1体化するような仕組みも備わってくるかもしれません。まだまだ時間はかかるでしょうが、多くの業種・業界でIoEプラットフォームへと向かう動きが出始めています。

以降の関連記事では、便宜上、第1次産業、第2次産業、第3次産業という従来型の分類に沿って、それぞれのカテゴリーにおいて、どのような取り組みが行なわれ、どのような変化が起こり始めているのかを取り上げていきます。

(イラスト/高橋 庸平)

インターネット関連の最新情報「IIJ.news」をお届けします

本記事が掲載されているIIJグループ広報誌「IIJ.news」は、インターネット関連の最新動向や技術情報をお届けする小冊子で、2ヵ月に1回発行しています。

定期購読をご希望の方には無料でお送りしますので、ぜひお申し込みください。

掲載内容はIIJ.newsページでご覧いただけます。

※IIJグループ広報誌「IIJ.news vol.146」(2018年6月発行)より転載