IoTが創出する新たな利活用

我々の家庭やビジネスシーンにおいて、IoTが一段と身近な存在になってきた。ここでは、IIJのサービス概要を見ながら、IoT活用について考えてみたい。

目次
  1. 拡大するIoT市場
  2. 具体化が進む活用内容
  3. IIJの取り組み
  4. 新たな利活用を創出する

「ねぇ、Google、15分でタイマーかけて」。ふとしたキッカケから料理が趣味となり、ここ数年、週末の我が家の食事は、妻の代わりに私が担当しています。圧力釜で肉を柔らかくするときなど、以前はキッチンタイマーを使っていましたが、昨年からはGoogle Home(AIスピーカー)が時間を計ってくれます。ちょっとしたことですが、調理中など手が離せないときに便利です。

はじめは単に流行り物に乗っかったわけですが、「テレビを消して」「YouTubeで◯◯を再生して」など、Google Chrome Castやテレビとも連携し、すっかり我が家でも定着してきました。

AIスピーカーの活用領域は家庭にとどまらず、ビジネスシーンにおけるお客さまとの会話でも話題になります。例えばメーカの工場では、安全面や衛生面から「手袋をはずせない」「手を離すことができない」といった場面がありますが、そうした際にも音声による機器操作や業務記録は有効です。今はまだ応答や入力の精度・信頼性、規則や文化といった諸事情から、本格導入に向けたハードルが高いかもしれませんが、試験的な取り組みはスタートしており、AIスピーカーがごく自然にビジネスの場で使われる日も近いかもしれません。少し変わったところでは、居酒屋の注文で使われ始めたというニュースも目にしました。

拡大するIoT市場

IoT市場全体を見渡すと、グローバルでは2025年までに1兆1000億ドル、接続件数は2025年までに31億件に達すると見込まれており(GSMアソシエーション)、国内でも2020年には12兆円に達するとされるなど(IDC Japan)、拡大傾向が続きそうです。

国内メーカ各社の動きも、いわゆる「モノ」売りから「コト」売りへのシフトを掲げ、IoTを活用した変革に乗じて、新しい体制を立ち上げたり戦略を打ち出したりするなど、昨年後半からひと通り方針が出揃ってきた感があります。

具体化が進む活用内容

IIJにご相談いただいている案件の傾向を見ますと、「IIJ IoTサービス」を発表した2016年度に比べて、2017年度は案件総数が約2.5倍に伸びています。さらにその中身は、より具体的なご相談内容が増えています。

IIJ独自の分類となりますが、お客さまの予算・スケジュールといった計画の具体性や、実現したい機能や解決したい課題といった内容の具体性をもとに、要件の明確さを「高」「中」「低」「情報収集段階」という4つの段階に分類したところ、「高」のご相談が2016年度は全体の7パーセントだったのに対し、2017年度は22パーセントに伸びており、IoTへの取り組みが着実に具体化しつつあると考えられます。

数年前は興味・関心の分野から「まずは試してみよう」という雰囲気だったのが、先のAIスピーカーのように、少しずつ身近な課題の解決や、新たな利便性・必要性の発見につながる状況へと変化しつつあると言えるのではないでしょうか。

IIJの取り組み

IoTに関するIIJの取り組みは、最新技術研究を基礎とし、ネットワーク・クラウド・セキュリティの3つの領域における戦略に沿って、クラウド機能を提供する「IIJ IoTサービス」や、モバイルのSIM機能を提供する「フルMVNO」といったサービスを軸に拡充を進めています。また、先に紹介したような市場の変化を機敏に察知しながら具体的なニーズを機能として取り込む活動と、特定分野における利活用の場面をIIJ自身が創り出す活動とを組み合わせながら展開しています。

最近の動きとしては、今年4月、「IIJ IoTサービス」で、IoT機器やセンサーデータの監視機能の拡充と、センサーや制御設備が接続されるゲートウェイ機器(Linux BOXや産業用PC、その先につながるPLC)のリモート制御機能をリリースしました。従来はネットワークに接続してデータを集めるまでのニーズが中心でしたが、要件の具体化が進むにつれ、温度や振動といったセンサーから得られる数値データの監視や、異常値を検出して通知するといった機能が求められるようになったためです。

データの監視に加えて、監視する仕組みの監視、例えば、データを中継するゲートウェイ機器の監視などが必要になるため、ping監視といった死活監視の機能も揃えました。このように業務への適用が進み、運用やメンテナンスに備えたリモート制御機能の必要性も増してきたため、そのニーズにもお応えしています。

また今年7月には、データをコピーして複数の宛先に転送する機能をリリースしました。バックアップ用に複数の拠点にデータを転送したり、利用中のシステムを停止することなく通常のデータ転送はそのままに、もう1つデータの流れを作って、検証や拡張開発用に利用したりするための要望にお応えする機能です。そのほか、外部システムとの連携を強化するAPI機能も同時にリリースしています。

今後も「IIJ IoTサービス」は、4半期単位で機能を追加していく予定です。1例を挙げますと、近年、マルチクラウド利用が進んでおり、Amazon AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといったパブリッククラウドと安全かつ簡便に連携したいというニーズが高まっています。「IIJ IoTサービス」では、すでにパブリッククラウドとの閉域ネットワークでの接続機能は提供済みですが、さらにパブリッククラウドのPaaSとの連携強化も図っていきます。

今年3月にリリースした「フルMVNO」においても、柔軟性の高いメニューと自由度の高いSIMの特徴をフル活用して、IoTを実現するうえで不可欠で、より利便性を高めることができるSIM機能の提供を目指しています。

今日の企業にとってグローバル化は、ビジネスを拡大するうえで必須の要件となっているので、海外へ展開する製品や設備との安全な閉域接続を提供する国際ローミング機能を提供する予定です。また、車載用や可動部の振動・熱の影響を受けやすい設備向けに、耐久性・振動・温度耐性に優れたチップ型SIMの展開も予定しています。さらに将来的には、運用で書き換え可能な「eSIM」の提供も検討しています。

特定領域における活動も拡大しつつあります。農業分野では、農林水産省の公募事業として水田の水管理の効率化を目的とした実証実験に取り組んでいます。コネクテッドホーム分野では、家庭向けIoTサービスを提供する新会社を中部電力とともに今年4月に設立し、活動を本格化しました。工場分野では、生産エンジニアリングメーカの平田機工と協業して、今年7月に製造業のスマートファクトリー化や、製造現場のプロセス改革を推進するソリューション「Cognitive Factory」を発表しました。グローバルなIoT活用にも着手しており、今年5月、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の公募事業として、タイの水産加工事業者のエビ養殖場における水質管理の実証実験もスタートしています。

新たな利活用を創出する

こうした取り組みの狙いは、事業としての成功はもちろんですが、IIJがインフラ機能を提供するだけでなく、事業者と一体となって〝新たな利活用の場面〟を創出していくことにあります。

IoT活用の領域は幅広く複雑ですが、現場に近いところに具体的な課題やニーズが存在しています。そこで、お客さまやパートナー企業にもご協力いただきながら、我々自身が水田や工場などに足を運んで、「自分達で取り組み、課題を実感し解決する」という活動を行なっています。

IoTの実用化は着実に進んでいます。IIJでは引き続き「IIJ IoTサービス」や「フルMVNO」サービスを充実させながら、利活用の場面を広げていき、より実用的なソリューションの提供に努めてまいります。今後の展開にご期待ください。

(イラスト/高橋 庸平)

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※IIJグループ広報誌「IIJ.news vol.147」(2018年8月発行)より転載」