水産IoTソリューション

さまざまな分野でIoT活用が進むなか、タイにおけるエビの養殖にも最先端の技術が導入され、成果をあげつつある。

目次
  1. 東南アジアにおけるエビの養殖
  2. LPWAやIoTセンサーを活用

皆さんが普段、何気なくスーパーやレストランで目にしている〝エビ〟――彼(女?)達がどこからやって来たのか、ご存じですか?

今、世界の漁業は転換期をむかえています。健康志向の高まりから、魚介類の消費が急増する一方、それを支える生産面では養殖業が伸びており、牛肉の生産量を超えています。東南アジアは、この養殖生産を支える地域として注目を集めています。

東南アジアにおけるエビの養殖

エビの養殖は、初期投資が比較的少なくてすみ、単価も高く、なかでも「バナメイ」と呼ばれる品種は他のエビよりも成長が早く、病気にも強いことから主流となっています。スーパーに置いてあるエビの品種は、ブラックタイガー、バナメイエビ、サクラエビなどさまざまですが、バナメイエビは海外、特にASEANからの輸入がほとんどです。

東南アジアにおけるエビ養殖業の大部分は、伝統的なやり方で行なわれていますが、生存率は約6割程度、つまり養殖の過程で4割近くは死んでしまうそうです。また、養殖業者もできるだけ大きな収入を得たいため、どうしても高密度に養殖しがちで、災害や病気の流行によって大きな損害を被ったり、水質のコントロールがむずかしくなるなど、課題も多くあります。

現状、水質やエビの健康状態は、職人の長年の勘にもとづいたオペレーションに頼っており、エビの生存率も担当者の力量に大きく左右されます。

LPWAやIoTセンサーを活用

IIJではこのたび、タイの大手水産加工会社と協力し、LPWAやIoTセンサーを活用することで、水質の〝見える化〟を進めて、先述した課題を解決するための取り組みを、日ASEAN新産業創出実証事業として実施しています。

この取り組みでは、特にエビや養殖対象に有害なファクターとなり得る、水温、pH、溶存酸素、アンモニア濃度、亜硝酸濃度などを計測して、アプリケーション上でリアルタイムに表示し、危険値に迫ると警告が出る仕組みになっています。さらに、作業員の行なう給餌、水交換、収穫といった人手を要するオペレーションをアプリケーションに入力することで、センサーデータと合わせて統合管理できるようにしています。

上:エビ養殖池とオートフィーダー(自動給餌器)
下:出荷サイズのバナメイエビ

このように、これまで見えにくかった水質状況をリアルタイム監視することで、より適切なタイミングで調整作業を行なったり、コストの削減やエビの生存率の向上などが期待されています。

また、ベテラン職人がオペレーションした水質状況を解析し、そのノウハウを〝見える化〟することで、どの作業員でも同じ品質のオペレーションを実現できるようにすることも、この実証事業の目的になっています。

今回は、タイのエビ養殖事業者の協力のもと、IIJのタイ・リージョンのクラウドサービスでシステムを動かしていますが、IIJはグローバル市場、特にアジアでの事業展開に力を入れており、この取り組みは、IIJのIoT技術を海外市場へ展開する第1号案件となっています。

今後は、アジアにおける養殖業の盛況を追い風として、IIJのクラウド拠点からアジア各地に水産IoTソリューションを提供していく予定です。

こうした水質の〝見える化〟やオペレーション履歴の一元管理といった機能は、エビの養殖に限らず、他の水産事業にも幅広く活用可能であり、水質測定に関しては、工業分野など水を扱う現場にも応用できると考えています。水にまつわるIoTシステムの可能性は、想像以上に開けているのかもしれません。

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※IIJグループ広報誌「IIJ.news vol.147」(2018年8月発行)より転載」