IIJのクラウドサービスの今後 ~マルチクラウド時代におけるIIJのクラウドサービス~

企業におけるパブリッククラウドの活用が進み、事業変革への試行も広がりを見せる。その一方、コンプライアンス/セキュリティの確保や運用管理の煩雑化など様々な課題が露呈し、IT部門の役割が変化している。こうしたニーズに対応するため、IIJは4つの分野からなるクラウドサービス戦略を推進している。第3世代となる「次期IIJ GIO(ジオ)」の実現に向けた新プロジェクトも動き始めた。

株式会社インターネットイニシアティブ
システムクラウド本部長
染谷 直

(2019年10月23日開催「Lead Initiative 2019 ~インターネットの力でビジネスを前に~」講演レポート)

目次
  1. クラウド登場以前から、クラウド志向サービスを展開
  2. オンプレミスのクラウド移行とマルチクラウド化にワンストップで対応
  3. 「つなぐ」を支援し、マルチクラウドの統合管理も可能
  4. 第3世代のIIJ GIOが目指すサービスコンセプトとは

クラウド登場以前から、クラウド志向サービスを展開

クラウドサービスはいまや企業ビジネスに欠かせないインフラの1つである。パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド、複数のクラウドサービスを使い分けるマルチクラウドを選択する企業も増えている。

IIJは「クラウド」という言葉が一般化する以前から、このメリットを先取りしたサービスを展開してきた。その先駆けが、2000年に提供を開始したリソースオンデマンドサービス「iBPS」である。低コストでネットビジネスがスタートできるサービスとして好評を博した。ここで培った技術と実績が、2009年より提供を開始した本格的なクラウドサービス「IIJ GIO」へとつながっていく。

2015年には2代目IIJ GIOとなる「IIJ GIOインフラストラクチャーP2」をリリース。仮想サーバを中心としたパブリックリソース群と、VMwareプラットフォームと物理サーバで構成されるプライベートリソース群を提供し、2つをIIJプライベートバックボーンでセキュアに閉域接続することが可能だ。

現在、IIJ GIOは国内6拠点、海外7カ国のサイトでサービスを提供。顧客数は1,760社超で、設備規模と併せて国内トップクラスを誇る。「お客様の77%がIIJのネットワークサービスを併用契約し、ネットワーク/セキュリティを連携した総合インフラサービスとして活用いただいているのが特徴です」とシステムクラウド本部で本部長を務める染谷 直は話す。

オンプレミスのクラウド移行とマルチクラウド化にワンストップで対応

AWS、Microsoft AzureなどのメガクラウドとIIJ GIOを併用するケースも増えているという。オンプレミスでの自社構築、レガシーシステムのクラウド移行ニーズも根強い。クラウドの活用パターンやニーズが多様化しているのだ。

これに伴い、情報システム部門の役割にも変化が見られる。「オンプレミスの運用・保守だけでなく、クラウドを含めたハイブリッド環境の維持、パブリッククラウド利用時のコンプライアンス/セキュリティの確保が求められています。契約の取りまとめや社内ユーザのサポートなども重要な業務になりつつあります」と染谷は説明する。

こうした変化に対応するため、IIJは「プライベートクラウド」「パブリッククラウド」「ネットワーク」「管理・運用の効率化」という4つの分野でクラウドサービス戦略を推進している。

プライベートクラウドを実現するソリューションとなるのが、IIJ GIOインフラストラクチャーP2である。VMwareプラットフォームをベースとしており、オンプレミスのVMware資産をそのまま移行できる(図1)。「実績のある移行ツールを活用することで、『持たない』プライベートクラウドを短期間かつ容易に実現できます」と染谷はメリットを述べる。

図1 「IIJ GIOインフラストラクチャーP2」のサービス概要
既存アプリケーションの改修は不要。移行後の運用手順も変える必要がない。オンプレミスのVMware資産を活用した「持たない」プライベートクラウドを実現する

移行作業自体もサポート可能だ。「経験豊富な移行担当チームが作業を行うため、システムを止めずにリスクの少ないクラウド移行が可能です。移行作業費用は都度見積もりではなく、提供レベルと移行するVM数に応じた定額メニュー。コストも最適化できます」(染谷)。

パブリッククラウド分野の強みはAWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformをはじめとする多様なパブリッククラウドをワンストップで提供できること。サービスの運用を効率化する管理プラットフォームも提供する。「お客様は個別にクラウド事業者と契約する必要はありません。すべてのクラウドをIIJから提供できます」と染谷は語る。

「つなぐ」を支援し、マルチクラウドの統合管理も可能

ネットワークに関しては、あらゆるクラウドと連携する「IIJ Omnibusサービス」を提供している(図2)。これをベースに付加価値の高いサービスを提供しており、クラウド事業者にも高く評価されている。「Microsoft Azureのネットワークサービスに特化したマイクロソフトのパートナー認定プログラム『Microsoft Azure Networking MSP』を2019年7月に国内ベンダーとして初めて取得しました」と話す染谷。豊富な導入実績と高い技術力が評価された形だ。

図2 「IIJ Omnibus」によるクラウド連携イメージ
オンプレミス、多様なパブリッククラウドやIoTデバイスも1つのネットワークでつなぎ、シームレスに連携できる

さらに2019年8月には、産業用コンピュータで世界トップシェアを誇る台湾Advantech社と産業IoT分野でビジネス協業を発表。IIJのサービスの1つとして、産業用IoTプラットフォーム「WISE-PaaS(ワイズパース)」を日本で提供していく。「サービスの提供を通じ、スマートファクトリーやスマートシティ、遠隔医療の実現に貢献したい」と染谷は期待を寄せる。

そして管理・運用の効率化を支援するのが「IIJ統合運用管理サービス」である。各クラウドの監視ツールを統合し、チケットの起票などインシデント対応も自動化する。AIチャットボットによるサポート支援のほか、統合窓口による有人サポートも受けられる。「複数のクラウドサービスを利用していても、監視・管理とサポートを一元化できるのです」(染谷)。

実際、IIJ GIOを利用する多くの企業が目を見張る成果を上げている。例えば、読売新聞東京本社ではMicrosoft Azureをベースに、IIJのネットワークサービスとインテグレーションを利用し、「読売新聞オンライン」を支える基盤のフルクラウド化を実現した。オンラインサービスの可用性向上に加え、アプリの内製化も進み、開発・運用体制の俊敏性も高まったという。

占いなどのモバイルコンテンツ事業を展開するザッパラスは、サービス基盤としてAWSやオンプレミスで700台超のサーバを運用している。この監視作業を効率化するため、IIJ統合運用管理サービスを導入した。「アラート通知の自動化により、通知時間を50%削減し、障害対応の迅速化を実現。人的作業が不要になったことで、コストも97%削減されています」と染谷は話す。

第3世代のIIJ GIOが目指すサービスコンセプトとは

マルチクラウドのさらなる価値向上に向け、IIJは新たな取り組みにも積極的にチャレンジしている。すでに第3世代のIIJ GIOの実現に向けた「GRP(GIO Re-birth Project)」を推進中だ。「IIJ GIOインフラストラクチャーP2のパブリックリソース群とプライベートリソース群をよりシームレスに連携させ、真の融合を目指します。オンプレミス/既存IIJ GIO/パブリッククラウド間の移行性向上を図り、5G時代の次世代アーキテクチャとして広帯域モバイルサービスへの対応も進めます」と染谷は展望を語る。

GRPの一環としてデータセンターも拡充している。西日本の松江DCP(データセンターパーク)に続き、東日本エリアのフラグシップデータセンターとなる千葉県・白井DCC(データセンターキャンパス)が2019年4月から稼働を開始した。第3世代のIIJ GIOは2020年末にリリースする計画である。

IIJは今後も新たな価値と利用形態を提案する革新的なサービスを開発し続け、日本の、そして世界のネットワーク社会の発展に貢献していく。