IIJが考えるクラウド時代のネットワーク将来像 ~インターネットの発展とネットワークの進化~

クラウド活用はビジネスに不可欠となり、あらゆるシステムがクラウド化する流れが加速している。こうした中、クラウドを安定して利用するために、ネットワークの重要性が以前にも増して高まっている。IIJはクラウド環境を支える多様なネットワークサービスを提供するとともに、次のフェーズに焦点を当て、新たなサービス開発にも継続的に取り組んでいる。

株式会社インターネットイニシアティブ
ネットワーククラウド本部長
城之内 肇

(2019年10月23日開催「Lead Initiative 2019 ~インターネットの力でビジネスを前に~」講演レポート)

目次
  1. クラウドの利用を支えるセキュアで高機能なネットワークを提供
  2. クラウド上のデジタル・ワークプレイスで働き方改革も支援
  3. 4つのキーワードでネットワークのさらなる価値向上を推進

クラウドの利用を支えるセキュアで高機能なネットワークを提供

インターネットは様々なモノをつなぎ、情報の流通を支え、ビジネスに、そして社会にイノベーションを起こしてきた。インターネットの発展はネットワーク技術の進歩を促し、インターネットVPNをはじめとする様々なネットワークサービスを生み出した。これらのネットワークサービスは、現在のクラウド時代の牽引役と言っても過言ではない。

実際、クラウドを一部でも利用している企業は60%近くに達しており、前年比でも12%増加。そしてその8割以上が効果を実感しており、クラウド利用がますます進んでいる。それに伴い、ネットワークにも変化が求められている。

「コンテンツがリッチになったため、トラフィックが増大し処理が遅くなる。クラウドサービスの提供スピードも速く、サイジングが難しい。セキュリティの不安を払拭し、クラウド管理も効率化したい。クラウド利用を加速したいユーザは、こうしたジレンマに陥っています」とネットワーククラウド本部で本部長を務める城之内 肇は指摘する。

このジレンマを解消するため、IIJは多様なネットワークサービスを開発・提供している。まず「IIJ Omnibusサービス」はネットワーク仮想化技術のSDNやNFVを活用し、インターネットとは違うプライベート空間を実現するクラウド型のネットワークサービス。「インターネットとの境界には、ファイアウォールやメール/Webゲートウェイを提供し、各種クラウドとダイレクトに接続。モバイルのダイレクト接続、WANやリモートアクセス環境、さらにデジタル・ワークプレイスまでセットで提供し、これらすべてをポータル上で管理できます」と城之内は説明する。

「IIJクラウドエクスチェンジサービス」は、Microsoft AzureやOffice 365などのマイクロソフトのクラウドサービスとオンプレミス環境をプライベート接続する。「ExpressRouteライセンスや導入に必要なネットワークインテグレーション、導入後のサポートまでワンストップで提供します」と話す城之内。このサービスは国内150社以上に利用されている。豊富な導入実績と高い技術力が評価され、Microsoft Azureのパートナープログラムにおいて、国内で初めて「Microsoft Azure Networking MSP」の認定も取得した。

「IIJクラウドプロキシサービス」はクラウド上のプロキシで通信を適切に振り分けるサービスだ。お客様環境のファイアウォールやプロキシなどの負荷を軽減する。振り分けのための専用回線や機器を用意する必要はなく、コストも抑えられる。またOffice 365は、接続URLや宛先IPアドレスが日々更新されるが、このサービスは最新宛先リストに自動で追従する。「煩雑な更新作業が不要になり、更新漏れやミスもなくせます」と城之内はメリットを述べる。

さらに迷惑メール対策の「IIJセキュアMXサービス」、URLフィルタリングやアンチウイルスの「IIJセキュアWebゲートウェイサービス」、ファイアウォールの設定・監視・サポートをフルマネージドで提供する「IIJマネージドファイアウォールサービス」、セキュリティログの収集・分析とインシデント対応を行う「IIJ C-SOCサービス」など安全・快適なインターネット利用を実現するサービスも豊富に提供している。

クラウド上のデジタル・ワークプレイスで働き方改革も支援

拠点間をつなぐWANやリモートアクセス環境を提供するサービスもある。IIJ Omnibusの「WANユニット」は、専用線、VPN、モバイルネットワークなどを組み合わせ、各拠点が相互に直接つながるフルメッシュ型の柔軟なWAN構成を実現する。IPoE方式によるIPv6接続サービスを利用することで、フレッツ回線の輻輳による遅延も回避できるという。

「IIJモバイル大規模プライベートゲートウェイサービス」は数百、数千、数万規模のモバイル端末向けに、インターネットを介さないプライベートネットワークを提供する。また「IIJフレックスモビリティサービス」は一時的に通信不可になっても接続を継続する「切れないVPN」を実現する画期的なサービスだ。

ネットワークの先にオフィスIT環境を実現する「デジタル・ワークプレイス」も提供可能だ。そのサービスの1つが「IIJ仮想デスクトップサービス」である。「Windowsのデスクトップとアプリケーションを仮想化してクラウド上で提供する仮想デスクトップソリューションです。どこでも、どんなデバイスでも、オフィスと同じように仕事ができるようになります」(城之内)。これによって、働き方改革の取り組みも大きく加速するだろう。

さらに「IIJ IDサービス」は、複数のサービスIDやOffice 365の認証基盤「Active Directory(AD)」を連携させたシングルサインオン(SSO)を実現する。「IIJディレクトリサービス for Microsoft」を活用すれば、Active Directoryの機能をクラウドサービスとして利用できるようになる。「紹介したこれらのサービスは、管理ポータル上で統合管理が可能です。ネットワーク構成や状況を可視化することで、運用管理も効率化できます」と城之内は話す。

4つのキーワードでネットワークのさらなる価値向上を推進

ネットワークはクラウドの運用・管理に不可欠なインフラである。クラウドの利用拡大に伴い、その構成や利用環境はさらに複雑化が予想される。環境の変化に対応し、クラウドの価値を高めるネットワークサービスが求められている。そこでIIJでは4つのキーワードを軸に、新たなネットワークサービスの開発を進めている。そのキーワードは「楽に管理」「安定化」「拡張性」、そして「国際化」である。

「楽に管理」を実現するために進めているのが、管理ポータルの機能拡張だ(図1)。「見えないネットワークをどう見えるようにするか。回線や帯域、コストやセキュリティを含むネットワーク設計をより簡易に行えるポータルを企画・開発しています」と城之内は述べる。

図1 開発中のポータル画面イメージ
ネットワーク構成やトラフィックの可視化機能、トラブル発生時の通知機能などを、より詳細で分かりやすくしていく

クラウドの利用が一般化した今、ネットワークの問題は業務停止に直結する。「安定化」が目指すのは、停止や遅延のないネットワークだ。提供済みの「IIJクラウドプロキシサービス」の機能はOffice 365を中心とした経路制御だが、この機能を拡張し、G suiteやその他のSaaS系クラウドの経路制御も可能にしていくという。

「IIJクラウドエクスチェンジサービス」も新たな接続方式について、マイクロソフトと交渉を進めている。「Office 365のExpressRoute経由での接続は承認制ですが、この承認が不要な接続方式をサービスとして提供する計画です。すでにPoC環境によるテストを実施中。リリースに向けて開発を進めています(※)」(城之内)。

(※追記)「Microsoft Azure Peering Service」に対応したサービスを、2019年12月上旬より提供開始します。

「拡張性」向上を図るために取り組んでいるのが、2020年春に商用サービスが始まる次世代モバイル通信「5G」への対応だ(図2)。IIJ Omnibusのアクセス回線として5Gを活用するとともに、高速・低遅延、ネットワークスライシングなど5Gのポテンシャルを活かしたネットワークサービスを新たに開発していく。さらにIoTプラットフォームサービスとの連携も強化する。「5Gを使って、より多様な産業機器やセンサ、ドローンやウェアラブル端末との接続を可能にし、IIJ Omnibusの価値向上を目指します」と城之内は前を向く。

図2 IIJ Omnibusのサービス拡張イメージ
アクセス回線として5Gを活用できるようにする。多様なデバイスとの接続にも対応し、IoTネットワークとしても進化していく

そして「国際化」については、お客様にとってより使いやすいグローバルネットワークサービスの提供に注力していく。IIJ Omnibusは日本を中心にサービス提供をしているが、IIJバックボーンは海外にも展開している。「このネットワークと、NFVをはじめとするネットワーク仮想化技術を活用し、クラウド事業者と連携した国際展開の企画・検証を進めています」(城之内)。

企業におけるクラウド利用が100%になる時代が間近に迫っている。その安定運用を支えるネットワークの役割はますます重要になる。ネットワークの進歩は継続しており、新しい技術も次々登場してくる。IIJは新たな技術と顧客ニーズを積極的に取り入れ、これからもクラウド時代をリードするネットワークサービスを提案し続けていく。