“つなぎ”続けるIIJのIoTビジネスと最新事例 ~今もこれからも支えるIIJのIoTテクノロジー~

今後の成長戦略を考える上で「IoT」は外せないキーワードである。IoTを活用して、新たなサービスやビジネスモデルの創出に取り組む企業も増えつつある。IIJは自らが特定領域で事業を展開し、お客様と共に経験を重ねることで、IoT技術を進化させている。その経験をもとに、5G時代を見据えた新たなIoTソリューションも数多く開発・提供している。

株式会社インターネットイニシアティブ
IoTビジネス事業部長
岡田 晋介

(2019年10月23日開催「Lead Initiative 2019 ~インターネットの力でビジネスを前に~」講演レポート)

目次
  1. IoTの必要性が浸透し、活用・効果確認のフェーズへ進展
  2. IIJ自身が米作りに挑戦し、農業IoTの課題を現場で把握
  3. ネットワーク/クラウドに加え、エッジデバイスやPaaSも一括提供

IoTの必要性が浸透し、活用・効果確認のフェーズへ進展

ビジネスにおけるIoTの期待がますます高まっている。数年前まではIoTに慎重な企業が多かったが、今はその必要性が浸透し、実際の活用・効果確認へとステージが変わりつつある。

IoTのユースケースも広がりを見せている。「製造業やフィールドワークといった“主戦場”に加え、ICTとは無縁だった分野でもデータを活用した自動化・省力化を目指す取り組みが進んでいます」とIoTビジネス事業部で事業部長を務める岡田 晋介は述べる。

実際、IoTビジネスを支えるIIJのモバイル回線契約は右肩上がりで伸長し、現在その契約数は170万回線超。IoT関連の引き合い案件数も前年比200%以上で増え続けている。

IIJはネットワークサービスや「IIJ GIO」を中心とするクラウドサービスの提供にとどまらず、お客様と共に技術検証に取り組んでいる。「自らが課題や効果の把握に努め、お客様の実現場・業務への実装を支援する。これがIIJのIoT戦略の特徴であり、強みなのです」と岡田は主張する。

IIJ自身が米作りに挑戦し、農業IoTの課題を現場で把握

すでに多くのお客様と共にプロジェクトを推進し、新たなIoTビジネスの創出に貢献している。農業IoTの取り組みはその好例である。具体的には水田に水量・水温センサを設置し、水位や水温変化をリアルタイムに把握。給水弁を自動制御することで、水田水管理を省力化する。国が進める「水田を遠隔で監視できるICTを活用した低コスト水管理システム」の一環として取り組んだものだ。第一弾は静岡県で始まり、その後、岐阜県、宮城県、北海道へと広がりを見せている。

IIJはこのプロジェクトにおいて、水量・水温センサをゼロの状態から設計・製造した。地理的状況やコストを考え、最適なネットワークを提供したこともポイントである。「水量・水温センサとクラウドをつなぐネットワークには、少ない消費電力で広いエリアをカバーする免許不要の無線通信『LoRa』を活用しました。電波調査から基地局の設置先調整、実際の設置と設定、その後の運営までIIJが実施。農業IoTの課題を自分たちで実感するため、圃場を借りてコメ作りにも取り組みました」と岡田は説明する。

この知見とノウハウをもとに、継続的な活動と商業化を目指す。水田水管理の仕組みは住友商事と協業し、2020年度より商業展開する予定だ。LoRaについても、このプロジェクトと約3年にわたる実フィールドの導入・運営ノウハウをパッケージ化したソリューション展開を図る。将来的にはIoTデバイス間インタフェースをオープン化し、農業IoTの全国普及に貢献する。

設備監視のIoT活用にも自らが取り組んでいる。IIJ 松江コンテナ型データセンターパークでは電力使用量や室温などのセンシングデータを取得し、電力や空調管理の最適化に向けた実証実験を展開。「この仕組みとノウハウを、2019年4月より稼働開始したIIJ 白井データセンターキャンパスに適用し、データセンターの最適運用に役立てています」と岡田は語る。

ある自動車メーカーと共に工場IoTにも取り組んでいる。狙いは生産プロセス全体の品質向上と作業の効率化だ。工程やパーツ単位で品質条件を満たしても、誤差が生じると後工程に影響を及ぼし、品質にバラつきが出る。「そこでPLC/CNCよりデータを取得し、設備/ラインごとの時系列の稼働情報と抜き取り検査データを照合し品質傾向を把握。ボトルネックを改善することで、品質の維持管理と生産性向上を実現しています」(岡田)。

重要な社会インフラである道路の保全活動も支援している。道路保全サービス事業者が運用する車両のドライブレコーダー映像をモバイルネットワークでクラウドに蓄積し、それを解析することで状況把握と保全業務の効率化を図った。一般的なパブリッククラウドはデータ転送量に応じた従量課金のため、データ量が増えるとコストも膨らむ。「IIJはモバイルネットワークに加え、下り通信のデータ転送費用が必要ない『オブジェクトストレージ』を提供することで、この課題を解消。コスト負担の少ない最適な仕組みを実現しました」と岡田は述べる。

IIJはNTTドコモのネットワークを利用した、国内初の「フルMVNO」事業者でもある。この強みを活かして、IoTビジネスを支える独自のモバイルサービスも展開している。「例えば、埋め込みチップ型のSIM(M2M UICC)は、一般的なSIMカードと比べ広範囲な温度環境に対応し、耐振動性や腐食性にも優れています。モバイル通信に必要な情報を内部メモリ内に論理的に書き込む『ソフトSIM』も提供可能です」(岡田)。IoTシステム事業などを展開するmtes Neural Networks(エムテス ニューラル ネットワークス)は、このチップ型SIMを活用し、屋外IoT機器のヘルスモニタリングシステムを実現。商用車向け制御システムのWABCOジャパンは、ソフトSIMを組み込んだSIM機能内蔵通信モジュールをトレーラーに実装し、走行状況の遠隔監視サービスを提供している。

ネットワーク/クラウドに加え、エッジデバイスやPaaSも一括提供

IoTビジネスの広がりと共に、お客様ニーズも変化しつつある。ネットワークやクラウドだけでなく、IoTビジネスを支える仕組み全般をトータルで支援してほしいと考えるお客様が増えているのだ。

この期待に応えるため、IIJは新技術の導入、実活用に基づく新サービス・ソリューション開発、さらに既存サービスの機能拡充を積極的に推進している。「ネットワークサービスやクラウドサービスのほか、センサをはじめとするエッジデバイス、IoTデータを分析・利活用するアプリケーションの開発・提供まで、IoTビジネスの広範な領域をカバーするソリューションラインアップの拡充に努めています」と岡田は話す(図1)。

図1 IIJ IoTソリューションのカバレッジ
強みであるネットワーク/クラウド領域に加え、エッジデバイスやPaaS/アプリケーション領域でも革新的なサービスを提供。IoTビジネスをトータルにサポートする

2020年1月にリリース予定の「WISE-PaaS JP」はその1つである(図2)。これは産業用コンピュータで世界トップシェアを誇る台湾Advantech社との協業で実現した、産業分野向けIoTのReadyクラウドサービス。IoTプラットフォームとなるPaaS基盤からエッジアプリ、セキュアなIoTネットワークまで必要な機能をワンストップで提供する。「エッジアプリは多くのPLCに対応し、PaaSはオープンソースベースで技術習得が容易。開発の手間と時間を大幅に低減できます。多様な産業用機器との接続に対応しているため、適用領域も幅広い。対応機器の設置場所や型番などを管理する機能も標準で実装し、設備の稼働率や良品率の把握、電力マネジメントなどを容易に実現できます」と岡田はメリットを述べる。さらにSRP(Solution Ready Package)を導入すれば、特定業務や目的に特化したアプリケーションも利用可能になるという。

図2 「WISE-PaaS JP」のサービス概要
設備機器のIoTデータをセキュアな閉域ネットワークでPaaSにつなぎ、実績のあるアプリケーションでデータを利活用できる。オープンソースベースなので、独自のアプリケーションも容易に開発可能だ

セットアップ済みのカメラ、閉域ネットワーク、管理ソフトウェアをセットで提供するサービスもある。それが「ネットワークカメラソリューション」だ。インターネットを介さない安心・安全の閉域ネットワークによる映像監視・管理の仕組みをすぐに実現できる。

IoTビジネスの立ち上げをサポートする「IIJ IoTサービス」の機能も拡充した。「モニタリング機能で検知した異常を、メールに加えてMicrosoft TeamsやSlackでも通知可能になりました。デバイスビューアの機能も強化し、IoTゲートウェイやネットワークカメラの管理画面を閉域ネットワークでも参照できます。センサのデータに対して、クラウド側でデータラベルを付与する機能も実現。これにより、モバイルデータ転送量を低減できる上、エッジデバイスが変わってもクラウドでデータの集中管理が可能です」と岡田は説明する。

2020年11月には「IIJ LoRaWAN®ソリューション」をリリースする。LoRaWAN®は農業IoTの事例で紹介したLoRaの一種で、オープンな無線ネットワーク規格。LoRaと同様に低消費電力・長距離通信に対応し、免許不要で利用できる。電波のカバーエリアも1Km以上ある。IIJ LoRaWAN®ソリューションは温湿度センサ、LoRaWAN®の屋外ゲートウェイ、IIJ IoTサービスのマネジメント機能などをパッケージ化したもの。「LoRaWAN®の利用には通常ネットワークサーバが必要ですが、このソリューションはネットワークサーバも標準で提供します。Wi-Fiより広範囲な独自無線ネットワークを低コストかつ短期間で実現できるのです」(岡田)。先に紹介した農業IoTのほか、ビルや商業施設でのIoT活用用途を見込んでいるという。

フルMVNO事業者の強みを活かし、SIMソリューションのラインアップも拡充する。リモートSIMプロビジョニング可能なeSIM(Embedded SIM:組み込み型SIM)はその1つだ。物理的なSIMの差換えなく、通信サービスに必要な電話番号や契約内容などの加入者情報を遠隔から書き込みできる。すでに2019年7月に個人向けサービス「IIJmio」でβ版の提供を開始した。法人向けサービスも近く提供を開始する。

IoT向け通信として注目されているセルラー系LPWA規格の「LTE-M」や「NB-IoT」も極小通信を想定した「IoT応援パック」として提供済みだ。住友商事のローカル5G実証実験に協力事業者として参加し、その構築・運用のための技術や知見の蓄積にも努めている。

今後は5Gをはじめとした新技術の研究開発を進めると共に、エッジコンピューティングやIoTセキュリティの機能拡張を推進。さらにIIJ自身が特定領域の現場へ踏み込み、その経験をフィードバックすることで、お客様のニーズと期待に応えるIoTソリューションをより一層拡充していく考えだ。