クラウドサービスの利用増加に伴うネットワーク課題を解決する技術として、ここ数年で導入が進んだSD-WAN。現在は、IT活用が進む店舗、建設現場、工場などオフィス以外でのニーズも広がっています。クラウド時代のネットワークとして利用が広がるSD-WANについて、改めて仕組みやメリットなどを解説します。
- 目次
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- SD-WANとは
- SD-WANの仕組みと主な機能
- SD-WANのメリット
- SD-WAN導入時に考慮すべき点
- SD-WANならシェアNo.1のIIJ Omnibusサービス
SD-WANとは
SD-WAN(Software Defined Wide Area Network)とは、WAN(Wide Area Network、広域通信網)をソフトウェアで仮想的に制御する技術です。ネットワーク全体をソフトウェアで自動制御することで、アプリケーションやトラフィックに応じて組織全体のネットワークを最適化できます。また、管理ポータルを通じて遠隔で一元管理を行うことができる点も特長です。
SD-WANは2016年頃から活用され始めた技術です。ここ数年、クラウドサービスの浸透や働き方の多様化によりインターネット利用が増加し、社内ネットワークへの負荷が問題となっていますが、これを解消する技術として注目を集めています。特に、コロナ禍でWeb会議などのクラウドサービス利用が急増し、導入が進みました。また、最近では、IoTやDXが進む店舗、建設現場、工場などオフィス以外の拠点接続においても、通信の安定性や導入・管理のしやすさが評価され、ニーズが広がっています。
SD-WANの仕組みと主な機能
SD-WANの主な機能として、以下のようなものがあります。
- ネットワークの一元管理
SD-WANでは、管理ポータルを通じて複数のネットワークを一元管理できます。複数拠点のネットワークを遠隔でまとめて設定・監視できるため、運用コストの削減と効率化が図れます。また、全拠点のネットワーク状況をリアルタイムで把握できるため、本社や管理側での障害把握や切り分けが迅速かつ容易になります。
- 複数回線による冗長化
SD-WANでは、複数の回線を運用できます。一部回線の障害時にも安定したネットワーク接続を維持することで、冗長性を確保できます。また、価格や通信量など自社の条件に応じて回線を組み合わせることで、コストパフォーマンスの高いバックアップ環境を構築できます。例えば、フレッツ光とモバイル回線を組み合わせることで、高いコストパフォーマンスと冗長性を備えたネットワークが可能になります。
- ローカルブレイクアウト(LBO、インターネットブレイクアウト)
企業の各拠点や社外からインターネットに接続する場合、本社データセンターに集約したゲートウェイを経由して通信する方法が一般的です。しかし、最近ではクラウドサービスなど外部ネットワークの利用が急増しており、拠点のトラフィックがゲートウェイに集中することで通信遅延が発生し、業務に影響が及ぶことが問題になっています。これを解消する技術として注目されているのがローカルブレイクアウトです。ゲートウェイを経由せず、拠点の通信を直接インターネットに振り分けることで、社内ネットワークの混雑を緩和し、快適なクラウドサービスの利用を実現します。これはSD-WANの代表的な機能と言えます。
- ゼロタッチプロビジョニング
SD-WANの導入時に、機器をネットワークに接続するだけでWANを利用開始できる技術です。ネットワークに接続した機器がコントローラーの設定を取得し、SD-WANに必要な設定作業を自動で行います。習熟した経験や専門知識がなくても容易に対応できるため、専門人材の不足時や導入時の省力化に役立ちます。
SD-WANのメリット
SD-WANの主なメリットとしては以下のようなものがあげられます。
- 通信の安定性向上
ローカルブレイクアウトにより、各拠点から直接インターネットへの接続が可能になることで、ネットワークの輻輳が解消され、快適なインターネットアクセスが可能になります。例えば、Microsoft 365などクラウドサービスの利用急増で輻輳が問題になっているケースでは、ローカルブレイクアウトを使い、安全性の担保されているクラウドサービスへは拠点から直接接続することで、輻輳解消につながることが期待できます。
- 柔軟なネットワーク構築と最適化
通信経路を柔軟に制御することで、機密性の高い通信や重要拠点は高セキュリティで高速の回線にするなど、自社の環境やニーズに合わせたネットワークを構築できます。また、SD-WANでは、複数の回線を使用できるため、メイン回線がダウンしても自動でバックアップ回線に切り替わり、通信の安定性を確保します。これにより、万が一、メイン回線にトラブルが発生しても、業務が中断されることなくネットワーク環境を維持できます。
- ネットワーク導入、運用・管理負荷の軽減
管理ポータルを通じて、拠点のネットワークを一元管理できるため、運用負荷を軽減できます。設定変更も管理ポータルから一括でできるため、特に管理対象が多い多拠点、多店舗を有する企業では、作業にかかる運用の手間を大幅に削減できます。導入時もゼロタッチプロビジョニングにより、自動的にWANを構築できるため、現地での複雑な設定作業が不要です。このように、日々のネットワーク運用から資産管理や保守まで、負荷を削減できる点も大きなメリットです。
SD-WAN導入時に考慮すべき点
IIJがSD-WANの導入・運用を支援する中で、多くのお客様に共通する課題から考慮しておきたい点をご紹介します。
自社要件への適応
SD-WANの機能や契約内容が要件に合っているか確認することが必要です。特に確認しておきたいポイントをご紹介します。
- ゼロタッチプロビジョニング
機器をネットワークに接続するだけで、すべての初期設定が自動的に行われる技術を指しますが、サービスによっては一部手動での対応が求められるケースもあります。運用にも影響するため、事前に確認することが必要です。
- ローカルブレイクアウト
ローカルブレイクアウトで振り分けられるMicrosoft 365やGoogle WorkspaceなどのSaaSでは、予告なく宛先が変更されます。ローカルブレイクアウトでは、こうした宛先変更に常に対応していく必要があるため、導入後の運用(メンテナンス)を考え、自動で対応できる仕組みがあることも重要です。
- キャリアの制約
従来のWANと異なり、複数回線をまとめて利用できるSD-WANでは、特定のキャリアに依存せずに複数キャリアからネットワークを構成できます。サービス選定時には、こうしたSD-WANのメリットを活かせる内容か、キャリアの縛りはないか、確認することをおすすめします。
- 契約内容、範囲
導入後の運用も考えて、契約内容が自社の条件に合っているか、リソースや予算で対応できるかも重要なポイントです。例えば、簡単な設定変更や障害時の一次切り分けでも、都度契約先に対応依頼が必要となり、場合によっては追加費用が発生するケースもあります。事業者側のサービス提供範囲、そして自社の対応範囲を確認することをお勧めします。
将来的な拡張性
今後の自社のビジネス展開やIT戦略を視野に入れ、サービス選定や導入計画を進めることが重要です。クラウドサービスの利用拡大やゼロトラストの推進など、IT戦略に対応する柔軟性と拡張性を持ったサービスを選択することが求められます。
SD-WANならシェアNo.1のIIJ Omnibusサービス
IIJでは、SD-WANサービスとして「IIJ Omnibusサービス」を提供しています。ローカルブレイクアウト機能などにより、クラウドサービス向けのトラフィックによるインターネットゲートウェイの輻輳などの課題を解消し、快適な業務環境を実現するクラウド時代に最適なSD-WANサービスです。様々な業種、業態のお客様にご利用いただき、国内SD-WAN市場において3年連続シェアNo.1(※)のサービスです。
※出典)富士キメラ総研「2022~2024 コミュニケーション関連マーケティング調査総覧」2021~2023年度の年度末時点のサービス利用CPE(顧客構内設備)累計台数ベース、売上金額(SD-WANサービスの利用料収入)ベース
IIJ Omnibusサービスの主な特長
- 導入がとにかく簡単
特許技術(※)を利用したゼロタッチプロビジョニングで、機器にケーブルをつないで電源を入れるだけで、設定完了です。展開時に現地に技術者を派遣する必要はありません。
※特許技術:SEIL Management Framework(SMF)。2006年からサービスリリースしているゼロタッチプロビジョニングの技術。IIJにて特許取得済
- クラウドと快適につながる
拠点から直接クラウドサービスへ通信するローカルブレイクアウトに対応し、快適なネットワークを実現します。ローカルブレイクアウトでは、Microsoft 365など予告なく変更されるSaaSの宛先情報を自動収集し、各拠点のネットワーク機器へ経路を自動配信することで、運用の手間なくローカルブレイクアウトを実現できます。
※別途IIJクラウドナビゲーションデータベースのご契約が必要です。
- アクセス回線のマルチキャリア対応
アクセス回線は、フレッツ、モバイル、専用線などから、拠点の規模や用途に応じて選択できます。IIJは独立系通信事業者のため、異なるキャリアによる冗長構成や、フレッツとモバイルによる冗長構成なども可能です。
- 分かりやすい管理ポータル
誰でも分かりやすいシンプルな管理ポータルをご提供します。担当者の知識・ノウハウに左右されずに利用できるため、運用のブラックボックス化を防ぎます。また、管理ポータルから、お客様自身でトラフィックや機器の状況確認・設定変更が可能で、追加費用も発生しません。
SD-WANのIIJ Omnibusサービスを中核に、セキュアWebゲートウェイ(SWG)、Fire Wall as a Service(FWaaS)などネットワークに求められるセキュリティ機能を包括的に提供し、SASEへの移行を支援しています。これらの機能はクラウドサービスとして提供しているため、お客様の環境、要件に合わせて、必要なタイミングで段階的に実装いただくことが可能です。また、無料ワークショップ「IIJ Sketch & Draw Workshop」では、お客様ごとのご要望に応じて、ネットワーク環境の検証、課題解決、見直しなどネットワークのお悩み解決を専門家がサポートしています。随時、参加のご相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
SD-WANなら3年連続シェアNo.1の
「IIJ Omnibusサービス」
- サービスガイドブック
(PDF:28ページ)
- サービス機能やお客様事例を通じてネットワーク品質や運用にもたらす効果をご紹介します