#1 IIJのルータ「SEIL(ザイル)」って?開発当時を知る人に突撃

はじめまして。IIJ新人営業の川口 萌恵(かわぐち もえ)です。IIJのネットワークサービスのプロダクトセールスを担当しています。
IIJが提供するネットワークサービスについてもっと知り、魅力を広げていくため、コラムを担当することになりました!
第1回は、IIJが自社開発しているルータはどんなものなのか、開発当時を知る社員にインタビューします。

<今回話を聞いた人>
サービスプロダクト推進本部長 林 賢一郎
目次
  1. IIJがルータを自社開発しているってほんと?
  2. 画期的技術SMFを組み込んだIIJ製ルータ「SEIL」とは
  3. SEILシリーズが繋ぐ、IIJのSD-WANサービス

IIJがルータを自社開発しているってほんと?

新人営業の川口です。よろしくお願いします!
IIJといえば、日本で初めて商用のインターネット接続サービスを開始した会社ですよね。ISPでありながら、ルータも自社開発しているということを入社して初めて知りました。

実は、私もIIJがルータを作っていること知ったのは、入社してからのことでした。2001年に中途入社して間もなく、当時の開発リーダーから自社開発のルータへの熱い想いを語ってくれたのです。私自身その話を聞いて、「IIJの技術力があればこんなこともできるんじゃないか?」と次々にアイデアが浮かびました。それを開発リーダーにぶつけて、何時間も語り合い、私も開発に携わることになったのです。

どうしてIIJは、ルータを自社開発することになったのでしょうか?

誤解を恐れず話すと、当時市場にあったルータがあまり気に入らなかったと(笑)。
反骨精神が旺盛だったんでしょうね。こうした方が絶対にすごいでしょ!という情熱があったからこそ、動作一つ一つにこだわりを持って開発していました。
本当に熱意のある人たちが集まって、ルータを作っていたんだなと思います。

画期的技術SMFを組み込んだIIJ製ルータ「SEIL」とは

当時の開発者の方々の熱意が伝わってきます……!
IIJのルータは「SEIL(ザイル)シリーズ」と呼ばれていますよね。ちなみに「SEIL」の名前の由来って何ですか?

「SEIL」はドイツ語で「綱」という意味があります。登山とかで使うロープ。SEILは「インターネットとユーザを結ぶ命綱でありたい」という意味を込めて名付けられました。ドイツ語ということもあり少々読みづらいところはありますが(笑)、国内初のISPとしてのプライドが名前に秘められています。

SEILの特長と言えば、SMF(SEIL Management Framework)という遠隔管理の技術ですよね!情報をすべてサーバ側で管理することで、機器の自動設定と一元管理を実現する。お客様にも、物理的に結線するだけで自動的にセットアップが完了する点が評価されています。どうしてこれを思いついたのですか?

お客様の負担を軽減したくて……と言いたいところなんですが、実は最初に思いついたきっかけは、IIJ側で展開作業をする人間が少なかったからです(笑)。
IIJのルータをとにかく世の中に広めていきたいという気持ちとは裏腹に、当時のIIJにはルータを展開するにあたっての作業や設定を行う人間が足りていないという課題がありました。そこで思いついたんです、「じゃあ、全部自動化しちゃえばいいんじゃない?」と。
誰が繋いでも同じ結果になれば、わざわざ現地に作業員を派遣する必要もない。現地ではルータを結線するだけなので、結果的にお客様の作業も楽になり、初期コストも大幅に下がりました。

なるほど。SMF開発のきっかけには、IIJ側の事情もあったのですね(笑)。
SMFを世の中に発表したときの反応って覚えていらっしゃいますか?

いやあ……すごかったですよ(笑)、世界初の技術でしたからね。ネットワークに繋がるためには、ルータに設定を入れ込んでおくのが当時の常識でした。この常識を覆し、設定自体を自動化してしまった。それを実現したのがSMFなんです。現地の人にとっては本当にゼロの状態から自動的に動作ができるようになるので、“ゼロコンフィグ”や“ゼロタッチプロビジョニング”とも呼ばれています。
特に当時はインターネットVPNが流行り出した時期だったんですが、インターネットVPNの設定って暗号化の設定だとか結構複雑なんです。そういった時代の流れもあり、設置するだけでどんどんネットワークに繋がるようなSMFの技術が世間に受け入れられたのだと思います。

それだけ画期的な技術だったのですね……!初めてSMFを導入されたお客様のことは覚えていますか?

銀行のお客様でした。業界柄当然セキュリティを気にされるわけです。そんなとき、お客様に響く大きなポイントが1つありました。SMFでは、ルータの情報はすべてサーバ側で管理されます。だから、電源をオフにするとルータの中の情報は消える。つまり、ルータを盗まれても中の情報が見られることはないんです。これが完全に決め手でした。

サーバ側で情報を管理することで、セキュリティの面でもメリットがあるのですね!

当初はセキュリティ機能としては売り出していませんでした。でも、よくよく考えたらセキュリティ的にいいね、という話になり、この部分も後々売りにしていきました。

SEILシリーズが繋ぐ、IIJのSD-WANサービス

SEILシリーズは、1998年に初代をリリースしてから現在までに数多くの製品がリリースされていますよね。よく見ると“SA-W2L”のように“SA-○○”という名前の製品もありますが、これも同じSEILシリーズなんですか?

名前にSEILが入っていませんが、これもSEILシリーズです。SAとは「Service Adapter(サービスアダプタ)」の略で、ネットワークと一緒に提供することを前提に作られています。ですからルータ単体では販売されておらず、サービスの中で提供しています。最新機種のSA-W2Lではモバイル回線も終端できるようになっています。

サービスの中で……というのは、例えばどんなサービスでしょうか?

IIJ Omnibusサービスという、IIJを代表するSD-WANのサービスがその1つです。ルータ・SMFの機能と回線をセットで提供しています。セットで提供することで、保守や運用もワンストップで行えるんですよ。

なるほど!サービスとして利用することで、自動化の価値をより感じられそうですね。
本日はSEILについて教えてくださってありがとうございました。
最後に、開発当時を知る林さんのSEILに対する熱い想いを聞かせてください!

なんてったって自社製品ですからね。自分たちで作って自分たちで売る、これは他社のISPにはない強みです。技術力のあるIIJだから実現できること。まさにオンリーワンと言えるんじゃないでしょうか。IIJの技術をこれからもサービスとして具現化し、世の中にアウトプットしていきたいです。

IIJ本社の受付には歴代のSEILが展示されています。
お越しの際はぜひご覧ください!

インタビューを終えて

今回開発当時を知る社員に開発当時の話を聞き、SEILがIIJのこだわりの製品だということを改めて知ることができました。
自社で作った製品を売ることにより、お客様に提供できるサービスの幅も広がると感じました。今後もSEILの進化が楽しみです!(川口)