「全国情シス調査データを元に、情シスの今後の役割・立ち位置を考える」イベントレポート

◇ 本記事はこちらの続きです。

目次
  1. 情シスの頑張ったこととその評価は?
  2. 情シス部門の社内での存在感は?
  3. 情シス実施アクションの社内訴求の方法は?
  4. 情シスの役割や社内の期待は変化している?

情シスの頑張ったこととその評価は?

早速、テーマ1「情シスの社内での立ち位置、存在感は?」と、テーマ2「情シス実施アクションの社内訴求の方法は?」についてディスカッションをしていきたいと思います。
まずはIIJが独自に実施した「2022年 情シス頑張ったことアンケート」をご紹介していきます。
全国の情シス部門の方に「頑張ったこと」について尋ねた設問では、このような結果になりました。

(クリックして拡大)

2021年の結果と比較してネットワーク、セキュリティ、DXというワードが大きく登場するようになりました。具体的な内容はこちらです。

(クリックして拡大)

(クリックして拡大)

(クリックして拡大)

「その頑張りに対して社内からの評価に満足していますか?」と尋ねた設問では、このような結果になりました。

(クリックして拡大)

4割ぐらいが「満足している」から「やや満足している」、6割ぐらいが「どちらでもない」から「満足してない」という回答です。
続いて、「社内の存在感が向上したと感じますか?」と尋ねた設問ではこのような結果になりました。

(クリックして拡大)

2021年と比較して、「向上した」と感じている人が減ったという結果です。これはリモートワークが定着してきて、腕の見せ所が減ったのかなと捉えています。存在感が「向上した」と回答した人の具体的な取り組みを尋ねたところ、他部門との情報交換、意見を取り入れるといった話が出ていますね。

(クリックして拡大)

情シス部門の社内での存在感は?

ここからパネリストの皆さんにもお話を伺っていきたいと思います。存在感に関して、情シスは組織内の立場が低く設定されがちだと思う、という課題意識はよく聞くのですが、パネリストの皆さんがどのように捉えられているかお話を伺っていきたいと思います。

井原様

可能性は3つあると思うんです。1つ目は、経営層の理解力が低くて、情シスの重要性が理解できてませんという可能性。2つ目は、情シスが自分たちの価値をわかっていなくて、経営層に説明ができてませんという可能性。3つ目は、情シスが思っていること自体に価値が高くないという可能性があると思うんですね。1つ目は、会社が生き残って、伸びている会社であれば可能性は低い。3つ目はあるかもしれないんですけど、可能性が高いのは2つ目でないかなと思います。例えば、ネットワークを刷新しましたと、やったことはそうなんですけど、何のためにやったの?それってビジネスにどんないいことがあったの?というところまで説明できていないんじゃないかなと。そこまで説明したら受ける側もよくやってくれたね、確かにそれやらないとうちの売上こんなに伸びなかったわ、利益がこんなに出なかったわってなるんじゃないかと思うんですね。良かれと思ってやっているわけだから、売上を増やすか、コストを下げるか、リスクを減らすか、どれかに帰着すると思うんですよ。そこまで繋いで説明をすれば、正しく評価してもらうことができるんじゃないかなと思います。

情シスがビジネスの言葉で成果をインプットすることの大事さ、それもあるんじゃないかというお話ですね。園さん、いかがでしょう?

園様

今はITを使うことによって企業価値を高めたり、お客様にとってもっと魅力的な会社になると経営者は思っているはずです。そこに対してITが重要だと、情シスが経営層にインプットできているか、ちゃんと情シスが認識できているかというところになるのかなと思います。井原さんの例を聞いて思ったんですけど、例えば社内のインターネットが混んでいるといった時に、「値段が高くなるからこれ以上帯域増やせません」みたいな思考になってないかなと思うんですよね。そうじゃなくて、ここでビジネスが困ってるんだよという認識になっているか。そうでない限り、情シスの人がどう貢献しているのか、経営層はわからないんじゃないかなと思いますね。

今の例で言うと、インターネットが混んでいる、みんなが使ってる、つまりビジネス上、有効な使い方をしているであろう。ならば、もっと投資すべきだという発想っていうことですよね。籔田さん、いかがでしょう?

籔田様

目立たないのは確かですけど、組織内での立場は低くはないかなと思っていて、困ってないから目立たないっていう、それはそれでいいことだと思うんです。そこで組織内の立場を向上させるといった時に、自分たちは周りからどう思われているか知るのは大事だと思うんですね。私が情シスの責任者を始めてから、ずっと半期に1回アンケートを取っていて、一番最初のアンケートでは思ったより評価が低かったですね。そこから何回も何回もやっているんですけど、じりじりと評価が上がってきています。アンケート時には、我々は昨期こういうことやりましたとアピールもしておくんですよ。社内の大体6割ぐらいの方からご意見をいただいて、それを次に活かすっていうことをやり続けてますね。

最初評価が低かったとおっしゃっていたんですけど、その時ってどんなことを言われてたんですか?

籔田様

反応が遅いとか、質問してもレスが遅いとか、PCスペックが…とか、ネットワークが遅いとかですね。

色々言われたことに対して籔田さん、情報システム部門の皆さんで、対応すべきものを決めて、1個1個潰していくような作業ってことですね。

籔田様

そうですね。満足度っていう指標を作って、例えば5段階で4以上と言ってくれる人をまずは8割を目指そうってやると、それぞれ担当の人が工夫し始めるんですね。それで少しずつ改善していくので、今では4以上が85%以上と結構高いです。

ありがとうございます。一ノ瀬さん、いかがですか?

一ノ瀬様

中小企業だからか、インフラって動いてて当たり前って思われているので、その価値をちゃんと知ってもらうための活動は必要だと思います。もう1つは信用してもらうこと。そのためにビジネスに繋がるようなストーリーを作って、小さいことでもいいんで、成功したよ、投資したモノに対してリターンを得たよっていうことを積み重ねて信頼してもらう。そうすると意外と大概のことは意見が通るようになっていく。予算も動かせるようになってくるのではないかと。

情シス実施アクションの社内訴求の方法は?

社内、経営層に対して、情シスの取り組みをわかってもらうためにやっている施策は何ですか。

一ノ瀬様

コミュニケーションを取ることは重要だと思います。会社がよくなるためにはこうした方がいいってことは、積極的にコミュニケーションを取るようにしています。

経営層、他部門などステークホルダーに対して上手くコミュニケーションを取る方法みたいなものって、例えば井原さんは経営層の立場でいらっしゃいますが、社長さんに対してITの価値の説明の仕方を改善するには、どのようにしたらよいでしょうか。

井原様

ビジネスに対して、こんな価値を提供してるんだって説明ができるようになるには何が必要かっていうと、ビジネスに興味を持つ、あとは人間の行動に興味を持つっていうことだと思うんですね。例えば、ネットワークが遅いとなった時に、エンドユーザがそこで何の仕事をやっているのかがわかって、ネットワークが遅いとどんなダメージがあるかが理解できて、ここは切迫してますねと、これは投資する価値があるんですっていう話に繋がるわけです。なのでビジネスに関心を持たない限りは説明ができないんですね。

園さんは、情報システム部門の方が何か工夫されているコミュニケーションの仕方、施策はあったりしますか。

園様

事業に貢献するとなると業務部門との連携が非常に大切になるんですよね。困っている、変えなきゃいけない業務は現場なので、そこに対してどう貢献できるかは結構地道なんですよね。開発したところまでが情シスの仕事ではなくて、ちゃんと使われて、成果を出すところまでが仕事だと思わざるを得ないかなと思いながら、結構地道にやってるっていうのはありますね。そこまでやると成果が出ればよろしい、ダメだったらダメでしょうがないと思うしかないんじゃないですかね。

籔田さんは先ほど情シスの評価を見える化しているとのことでしたが、それ以外で社内に対して情シスの仕事の伝達、施策はありますか?

籔田様

自分達の仕事を、「株式会社情シス」だと考るようにしています。そう考えると、社員からの問い合わせはインバウンドなんですよね。頼られている証なんで、「困った時にだけ頼りやがって」ではなく、「ありがとうございます」っというマインドでやっていくと存在感が増してくるんですよね。

お客さんと会話していると見るか、社内からの問い合わせと見るかで、全然違うんでしょうね。

籔田様

違いますね。モチベーションも変わってくるし、そうするとありがとうございますって言われる件数も増えます。

情シスの役割や社内の期待は変化している?

ありがとうございます。そろそろお時間なので3つ目のテーマに行きたいと思います。
まずはIIJが独自に実施した「全国情シス実態調査2023」をご紹介していきます。
経営や社内の他部署の方が情報システム部門に求める役割、期待は変化していると思いますか?と尋ねた設問で、このような結果になりました。

(クリックして拡大)

「非常に感じる」から「感じる」まで足すと6割以上と、多くの企業で期待が変化していると捉えていいのかなと思います。また従業員規模が増えるほど期待値が変化しているという傾向になっています。
具体的にどのような点が変化しているかと尋ねたところ、業務部門からのリクエストだけではなく、情報システム部門もその中に入って一緒に業務プロセスをシステムの目線で設計するというお話が出ています。

(クリックして拡大)

続いて、情報システム部門の平均人数、今後の人員方針について尋ねてみました。

(クリックして拡大)

「人員を増やす方針」と回答いただいている企業が2022年に比べてかなり増えていて、現状維持と回答している企業が減っているので、情報システム部門の人は人員を増やしたいという回答が多いかなと思います。
続いて、経営層の方々とのミーティングの頻度を尋ねた設問の結果になります。

(クリックして拡大)

3割ぐらいがほとんどないと回答していて、月に1回、週に1回、3ヵ月に1回の順番で並んでいます。月に1回ない、ほぼないという企業が3割ぐらいというイメージだと思います。
経営層とのミーティングで何を会話するんでしょう?と尋ねたところ、多くは現状の課題洗い出し及び時事で問題となっているセキュリティ対策関係ですね。

(クリックして拡大)

役割の変化を感じている情報システム部門の皆さんが非常に多いということが、調査結果から読み取れるのですが、一ノ瀬さんいかがでしょうか。

一ノ瀬様

個人的に、役割はあまり変わっていないという認識です。昔から期待はされていると感じています。ですから期待値が高くなってるとは思っていません。ただ、情シスの社員が辞めた時になかなか補充がない状況なので、期待されていないのではと不安に思っていましたが、本日のイベントの開始前にパネリストの皆さんとの意見交換の中で「どこでも採用はすごく難しい」というお話が聞けてちょっと安心しています。社内にいて自分だけで考えていると期待値ってモヤモヤするんですが、こうやって外で色々な方とお話すると期待値は低くなかったんだなと感じられたので、こういった機会はありがたいと思っています。

経営層からITへの理解とか、ITに関して重要だと思っている度合いみたいなものは結構感じられるものですか?

一ノ瀬様

比較的若い会社なので、皆さん、重要度が高いと思ってくれていると感じています。ただ、その重要度への理解の深さがあるかと言われれば、そこまで深くはないですね。「期待してるよ」というような、ふんわりとした感じかなと思います。

ありがとうございます。薮田さんはいかがでしょうか?

籔田様

情シスには売上に関して期待してるよという明確な期待がないんですよね。なので何もアクションをしなければ、恐らく現状維持でいいよって言われる。でもそれだと僕が楽しくないので、5、6年先のビジョンを作って、こちらからこうやりたいっていうのを、例えば経営層の方とお話しながら予算をとって進めていくみたいなことをやっていると、勝手にこっちは期待を作ってるという状態になるので、期待されるじゃなくて、期待されるようにしてるっていうんですかね。

なるほど。DXみたいなワードをきっかけに急に期待値が変わったっていうことはあまりなくて、普段から自分たちでこういうことをやりたいですっていうものをアウトプットされているっていうことですね。

籔田様

そうそう。
経営とか、会社がどこを目指してるか、そこは外さないように気を付けながら、やりたい方向性を見出して進んで行くみたいな。

やりたいことの見つけ方はどのようにされているんですか?

籔田様

中期経営計画の資料とかって社内を探せば多分出てくるはずだし、上司に聞けば教えてくれますので、そこに対する情報システム的な課題はないかなとか、もしかしてこれやった方がいいんじゃないですかとか言ってると、そうそうとなってくるので、そうすると動きやすいですね。非常に大義名分あるし。

ありがとうございます。園さん、いかがでしょう?

園様

籔田さんが言ってたみたいに、やっぱりIT部門のリーダーがロードマップというか、ちゃんと持たないと期待してもらえないんじゃないかな。期待は非常に感じてますよね。事故が起きたら業務停止しちゃうとか、急に致命的になるので、そこに対して、今で言うとAIとか使った安全対策とかですね、そういうのは非常に大切だと思います。AIを使ってもっと上手くできないかみたいな期待が社内でもどんどん来ててですね、今色々取り組んでいる感じですね。

井原さん、いかがでしょう?

井原様

期待はもともと高いと思いますけどね。今時何か新しいことをやるのに、テクノロジー、ITを使わないでできることなんてないんだから、期待はあるでしょうっていう話と、あと籔田さんの話でいいなと思ったのは、期待されなくたって自分でやりたいことをやったらいいじゃんっていうのはありますね。ITを使うと絶対に会社を良くできると思いますよ。なのでもう期待されてなくたって良くなることはやったらいいと思います。

良くなるだろうなって思うことを、やりたいと意思表明してやるということですが、良くなるポイントをどう見つけるかっていうのがカギになるのでしょうか。

井原様

極端な例を言うと、現場の人たちからの要望は山ほど来ます。やっぱり困っている人は助けてあげたいですし、自分の持っているスキルを使えばなんとかしてあげられるとなると、どうしても現場の要望に応える方に行きがちなんです。ただし、そのような要望の大抵は投資対効果を見るとやってもやらなくても同じくらいの内容で、それを体力が続く限り消化しても、変革してよくできるポイントが見つかるわけではないし、経営からIT部門への変革の期待が大きくなるわけでもありません。変革しようと思うとIT部門だけが頑張ってもできないのでビジネスと伴走して一緒にやる必要がありますし、弊社の場合は、IT部門の中に経営層・ビジネス部門長とのコミュニケーションを担当する「ビジネスリレーションチーム」というチームを作って、苦労しながら頑張っています。

本日のチャットに「社員にありがとうって言われるとちょっと嬉しいんですよね」っていうコメントもあって、それが社員の皆さんからのリクエストに応えるモチベーションになってたりするわけなんですけど、やはりそれだけをやってるとっていうお話ですよね。社内からのリクエストはたくさん来るし、社員の皆さんからの期待も高いんだと思うんですが、じゃあ元々この本日のテーマを設定した背景にあった社内での立場が低くて…みたいな話は何だったのかなと思っちゃうんですけど、それは何なんでしょうか?

一ノ瀬様

情シスの取り組みを知ってもらえてないっていうのと、自分らで勝手に下げているっていう可能性も高いのかなって今日の話を聞いてて感じました。「自分は価値があるよ」ってもっと自信を持つことで、勝手に好転すると思います。

籔田様

会社からこれやれって言われそうな雰囲気の時あります?言われてやるんじゃなくて、そのような雰囲気を感じたら自分たちでやりますって言った方が良い。どうせやるんだったら同じことなので。

井原様

やれって言ったやつの成果ですからね。やったやつじゃなくて。

例えばどんなことですか?最近あった先回りした事例みたいなことなんかあります?

籔田様

基本、いつも先回りしてるつもりですね(笑)

井原様

セキュリティなんてわかりやすい例ですよね。事故起きる前にやりますから。まあ大概やれとも言われないので。

事故が起きてないから投資してもらう説明が難しいって声もよく聞くのですが、セキュリティとか先回りしてやる時ってどうなんですか?

井原様

よく聞きますけど、それって説明をできない人の言いわけかなと思わないでもないんですよね(笑)

園様

ちゃんとリスクを設定して、このリスクヘッジをするかしないかじゃないですか。我々はした方がいいと思う理由はあるわけなんで。そこをちゃんと説明できれば、ごめん今年お金ないから来年ねって言われるかもしれませんけど、そこでちゃんとディスカッションできる。

一ノ瀬様

最終的には投資するかしないかは経営判断になるので、ただディスカッションする機会を設けられるっていう、第1ステップだけでもできれば話は変わってくる気がしますけどね。

なるほど、パネリストの皆さん、本日は有意義なお話、ありがとうございました。

IIJでは今後も情報システム部門の皆さま向けに、イベントを定期的に開催していきます。最新情報は以下のサイトからご覧ください。