DXの実現にはデータの分析・活…
AWSやMicrosoft Azureなどマルチクラウドの推進に従事。中でも生成AIをメインに活動し、コラム執筆やウェビナー講演などにも注力している。
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生成AIは、業務効率化や新たな価値創出の鍵として、多くの企業で注目を集めています。IIJの調査では、すでに半数以上の企業が生成AIを業務に活用していると回答しており、生成AIへの期待がうかがえます。本記事では、生成AIの現状や代表的なツールをご紹介すると共に、IIJの活用事例などを通じて、どのように社内業務の効率化や課題解決に役立てられるのかを解説します。また、自社データを活用する上での注意点についても詳しく説明します。
私たちの生活やビジネスの在り方に大きな変化をもたらしているAI。特にChatGPTなどに代表される「生成AI」は、社内業務の効率化などを目的に、昨今多くの企業で導入に向けた検討が進んでいます。
業務での生成AIの活用状況についてIIJが調査したところ、すでに半数以上が生成AIを利用していることが分かりました(「業務に本格的に取り入れている(9%)」「試しで利用している(43%)」の合計。※1)。また16%は「利用検討中」と回答しており、今後さらに活用が進んでいくことが予想されます。
(※1)参考:生成AI利用状況を調査!各社の意外な活用方法も公開
現在、社内業務に活用できる生成AIとして様々なツールが提供されており、用途によって幅広い選択肢が存在します。代表的なツールをいくつかご紹介します。
まず、文章やレポートなどの迅速な生成には「ChatGPT」や「Microsoft 365 Copilot」がよく知られています。自然な文章を生成できるだけでなく、データの分析やアイデアの整理にも活用できます。
画像生成では「Stable Diffusion」や「Adobe Firefly」も有名です。商品デザインや広告ビジュアルの作成など、デザイン業務の時間短縮に役立つツールです。
音声生成には「VALL-E」なども活用されています。動画編集やナレーション作成の効率化に有効です。
プログラミング支援としては「GitHub Copilot」が多くの開発者に利用されています。コーディング時間を短縮し、効率的なアプリケーション開発を実現するツールです。
今後、生成AIの普及により、従来の社内業務の効率化が大きく進んでいくことが期待されています。IIJでも、自社の社内業務へ生成AIの組み込みを推進しているほか、お客様の社内業務における生成AIの活用検証等の支援を行っています。次の章から、IIJ社内での活用事例やお客様へのご提案例をご紹介し、自社データ活用において考慮すべきポイントを解説していきます。
バックオフィス業務では、社内からの問い合わせ対応に想像以上に多くの時間が取られます。また、これらの業務が特定の担当者に依存していると、その担当者が不在の際には他のスタッフが適切な回答を提供できず、業務が停滞するという問題も発生しがちです。
IIJでは、従来、人事や総務担当者が対応していた給与計算、福利厚生、雇用契約などに関する社内問い合わせを、社内データを学習させた生成AIチャットボットに肩代わりさせるご提案をしています。
生成AIを活用することで、特定のルールに基づいて迅速かつ正確な回答が提供可能になるため、業務の属人化を防ぐだけでなく、人手で行っていた対応時間の削減分をコア業務に投入できるため、全体の業務効率化にもつながります。また、チャットボットという仕組みは、社員が気軽に質問できる環境を整えつつ、人と人のコミュニケーションで起こる摩擦も減らしてくれます。
コールセンターなど顧客からの電話応対業務では、契約内容の確認や請求手続きなど、多岐にわたる問い合わせに対応するため、経験豊富なオペレータが社内の複数のシステムを活用した属人的な対応をしがちです。顧客に提案できる商品の選択肢が多いと、それだけ最適な商品やプランを迅速に判断するのが困難になります。
IIJは、こうした課題の解消にも生成AIをご提案しています。AIに契約情報やコールセンターの対応履歴、SFA(Sales Force Automation)の登録情報など顧客データを横断的に解析させ、「A様の契約状況は?」「過去の同様の問い合わせ事例は?」「追加で提案するならどんなトークが適切か?」といった情報をオペレータに横断的に提供できるようにしています。オペレータが属人的に行っていた複雑な作業をAIがサポートすることで、対応工数を大幅に削減可能です。また、オペレータのスキル、習熟度を問わず一貫性のある迅速な対応が可能になることで、顧客体験や満足度の向上も期待できます。
属人化しやすい営業活動にも生成AIの活用は有効です。担当者の経験やスキルに大きく依存する営業活動においては、成約率にばらつきが生じやすいのが現状です。
IIJは、生成AIにハイパフォーマンス人材の会話データを解析させ、成功要因を特定する検証のご提案をしています。会話データを社内の契約情報、対応履歴、営業データ等と掛け合わせることで、商品ごとや顧客ステージごとの「勝てるトークスクリプト」を作成します。これにより、個々の経験やスキルに頼らない、組織全体としてのスキル向上や一貫性のある営業活動、営業成果の向上が期待できます。また、生成したスクリプトを活用することで、新人社員でも効率的に成果を出せるトレーニングプログラムの設計など、組織としての競争力強化にもつながると考えています。
営業活動では、サービス情報を迅速、正確に把握することも重要です。一方で、多岐にわたるサービスを提供している会社では、営業担当がそのすべての仕様を把握しておくことは困難です。IIJもその1社であり、必要な情報を社内ポータルから探したり、サービス担当者へ確認したりする作業にも多くの時間を費やしていました。
この課題を解決するため、IIJではサービス詳細資料、オンラインマニュアル、過去の社内FAQデータ、一部の社内メールなどを読み込ませたAIアシスタントを開発しました。このツールにより、営業担当が自社サービスの仕様を手軽かつ迅速に確認できるようになりました。
ここまで社内のデータを活用した業務効率化の事例をご紹介しましたが、実際に自社データと生成AIを連携する基盤を用意していくにあたって、考慮しなくてはならない大きな3つの課題があります。それぞれ詳しく解説していきます。
①-1. 連携インタフェースの用意が必要
生成AIを活用して業務効率化を進めるには、単一のデータソースではなく、複数のシステムやツール間でデータを連携し、複数のデータソースを利用できるようにする環境の構築が必要です。しかし、既存システム同士は必ずしも互換性があるわけではなく、データをスムーズにやり取りするための連携インタフェースの構築が必要となります。ただし、連携対象が増えるたびに新しいインタフェースを個別に開発する場合、開発コストや保守コストが大幅に増加してしまいます。
①-2. AIが扱いやすいようにデータ形式の変換が必要
例えばAシステムの売上実績データとBシステムの売上見込データを抽出して統合しようとしても、それぞれのデータ形式が異なると生成AIにてうまく関連付けできない可能性があります。生成AIに最大限効果を発揮させるには、各種データを生成AIが活用しやすい形式に成形することが必要ですが、膨大なデータを手動で変換処理していくのは現実的ではありません。
SaaSにあるデータを生成AIに接続する場合はインターネット経由でも事足りるかもしれませんが、オンプレミス環境にある機微なデータは閉域接続が必要になるケースも多いでしょう。このように、社内データ活用にあたっては、データソースに合わせたネットワークの構築まで視野に入れることが必要になります。
③-1. データ保存先は国内に閉じているか
生成AIを用いる際には、法規制やデータ漏えいリスクの観点からも、データの保存先が国内かどうかを明確にしておく必要があります。例えば外資系のクラウドサービスを利用する場合には、データインフラの所在地はもちろん、バックアップなどで海外テナントへのデータ連携が発生しないかなども確認が必要になります。
③-2. 機微なデータを保護できるか
生成AI活用の効果を最大限引き出すためには、顧客情報や業務機密といった機微なデータを入力するケースが増えます。このような機密性の高いデータを入力する場合、そのデータを無加工のまま利用して問題ないのか、リスクを慎重に判断する必要があります。データ暗号化などの処理を事前に実施し、セキュリティリスクを低減する対策が重要です。
IIJでは、これらの課題を解決し、自社データを簡単・セキュアに生成AIと連携、活用するためのプラットフォームや支援サービスを提供しています。特長について詳しくご紹介します。
Azure OpenAI Service(AOAI)は、データ漏えい対策やきめ細かいユーザ統制ができるなど、数ある生成AIの中でも企業での利用に向いています。
※参考:Azure OpenAI Service(AOAI)とは?ChatGPTとの違いを解説
IIJでは、AOAIの導入を検討されるお客様向けに、検証環境の構築から本番導入に向けた評価までをワンストップで支援するソリューション「IIJ PaaS活用ソリューション with Microsoft Azure」を提供しています。
Microsoft Azureの基盤は日本リージョン、かつお客様のテナントに閉じたセキュアな環境を提供しているため、データの所在地が不明確になることはありません。
また、IIJはMicrosoftの公式パートナーとして各種認証を取得しており(※2)、Microsoft Azureへの閉域接続を含め、Microsoftソリューションの豊富な実績とノウハウに基づいてサービスを提供します。
(※2)Microsoft認定ソリューションパートナー、国内初のMicrosoft Azure Networking MSP Partner、またクラウドサービスに関するパートナー認定プログラムである「Specialization」の「Infra and Database Migration to Microsoft Azure」を取得。同認定はMicrosoft Azureサービスの提供とサポートにおいて、最高水準の基準を満たしているとMicrosoftが委託する第三者機関の監査により認められた事業者に与えられるもの
<導入事例>
生成AI活用にあたっては、 自社データをそのまま生成AI基盤に連携するのではなく、まず散在しているデータを収集して生成AIが活用しやすい形式に整えていくことが重要です。その手段として、IIJは、あらゆるシステムやクラウド間のデータをセキュアにつなぐiPaaS「IIJクラウドデータプラットフォームサービス」を提供しています。
Salesforceやkintoneなど、約90種類の豊富なアダプターを備え、様々なデータソースとの簡単な連携を実現します。これにより、分散しているデータを効率的に収集し、形式の異なる複数のデータを生成AIに連携しやすいよう結合・集計・加工することが可能です。
更に、データマスキング機能も備えており、データの参照整合性を維持しつつ、個人情報や機微データをマスキング加工することもできます。社内データを生成AIに連携する前段階でデータをマスキングすることで、安全性と精度の両立を実現できます。
また、本サービスの基盤もIIJのIaaSであり、国内で稼働しているため、セキュリティ面でも安心です。
お客様のオンプレミス環境からiPaaS基盤、AOAIに至るまでの経路をセキュアにつなぐため、IIJは閉域接続サービス「IIJ Smart HUB」をご提供しています。
各種SaaSなどお客様のクラウド環境にあるデータについてはiPaaS基盤側でインターネットへの疎通性を持ちますが、オンプレミス環境にある機微データについては本サービスを経由してiPaaS基盤及びAOAIまで閉域で接続が可能なため、連携先システムに合わせたネットワーク構築が可能です。
これらサービス・ソリューションの組み合わせで、お客様の自社データ活用を強力にサポートします。生成AIを活用した社内業務の効率化をご検討の際は、ぜひIIJへお気軽にご相談ください。