IIJ法人サービスのマーケティング全般を担当。市場トレンドを的確に捉え、お客様に"今"必要なコンテンツを提供。メールマガジンのコンテンツ企画、ウェビナー・イベントの企画、アンケート調査に基づくデータ分析など、多岐にわたる業務に従事し、トレンドやニーズに応じた情報発信を行う。
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こんにちは。マーケティング担当の大利(おおとし)です。
ビジネスにおけるSaaS(Software as a Service)利用の増加により、ID管理が複雑化しています。組織改編など人事イベントごとに発生する対応に、頭を悩ませている情報システム部門や人事部門は多いのではないでしょうか。こうした課題を解決するのが、「IIJ IDガバナンス管理サービス」です。「企業のID情報を時系列で見える化」できる新サービスの開発背景や特徴について、開発責任者であるIIJネットワーク本部の堤と渡辺に話を聞きました。
大利
現在の立場や携わってきた仕事について教えてください。
堤
私たちはネットワーク本部 エンタープライズサービス部に所属しており、ID管理サービスの企画・開発をメインに行っています。お客様と会話する機会も多く、ID管理に関する悩みを相談されることも少なくありません。
大利
今回、新サービスである「IIJ IDガバナンス管理サービス」の提供を開始しました。開発の背景を教えていただけますか?
堤
IIJでは、これまでもお客様の環境変化にあわせてID管理サービスを開発してきました。2016年には、普及期にあったクラウドサービスに対応するため、シングルサインオン(SSO)を実現するIDaaS「IIJ IDサービス」の提供を開始しました。その後、2018年にはActive Directoryの機能をクラウドサービスとして利用できる「IIJディレクトリサービス for Microsoft」をリリースしました。こうしてID管理サービスを提供する中で、お客様より「利用しているSaaSが増えて、新卒採用や退職、昇進などに伴う権限付与を都度行うのが大変」と相談をいただくことがありました。当時、渡辺とは別の部署でしたが、ID管理サービスの業務にはそれぞれ携わっていたため、「権限付与の手間を、既存のサービスでは解消できないね」と会話をよくしていたのを覚えています。
大利
IDを管理するサービスは既に多くありますが、なぜお客様は困っているのでしょうか??
堤
確かに、ここ数年、様々なID管理サービスが登場しています。外資ベンダーなどが提供するクラウド型のID管理サービスは、従来のパッケージ製品では対応できなかったSaaSも管理できるようになってきています。しかし、依然として日本企業特有の人事イベント(入退社・兼務・組織の大規模改編)を考慮できているサービスはないのが実情です。自社の人事イベントに対応しようとすると、新たに多額のシステム開発費用が発生するということもあります。そのため、人事発令のタイミングにあわせて、自動制御できるサービスが求められていることが、お客様との会話からみえてきました。
その後、偶然が重なり渡辺と同じ、ID管理サービスなどを企画、開発する部署になり、改めて「IDのガバナンスをきかせるサービスが今の日本企業には必要だ」という点で考えが一致しました。こうして、日本企業が抱えるID管理に関する悩みを解決すべく、2022年から、今回リリースしたIGAaaS(IIDガバナンス管理サービス)の企画がスタートしました。
「IIJ IDガバナンス管理サービス」の概要
大利
今回リリースした新サービス「IIJ IDガバナンス管理サービス」とは、どのようなサービスですか?
渡辺
一言でいうと、過去・現在・未来の状態を時系列管理できる日本企業のためのID管理サービスです。従来の多くのID管理サービスで個別開発が必要であった人事発令日と実施日を起点に、組織や人の変更を自動で反映させる仕組みを標準機能として提供します。さらに、「時系列管理機能」によって、ユーザ、組織、会社単位で過去・現在・未来の任意のタイミングにおいてどのように変化したのか、変化するのか情報を管理することが可能です。
例を2つほど挙げます。多くの日本企業は、新年度に組織体系を新たにします。このような大規模な改編の場合、前もって人事発令が行われますが、従来のID管理サービスでは、その時点でのID情報しか反映できないため、ID更新作業は改編実施日の当日になります。つまり、新年度のデータが期待通りに反映され、それを元に各サービスに展開されるかは、ある意味、改編当日にぶっつけ本番というのが現状かと思います。「IIJ IDガバナンス管理サービス」では、発令日に予め新しい情報を登録し、実施日にその結果を反映させることが可能です。これにより、人事発令に基づく人事イベントに対応することはもちろん、処理内容を予めシミュレーションできます。
また、「時系列管理機能」では、過去日の情報に遡ることも可能です。内部不正が起きてしまった場合、ログで追って遡っていくというアプローチではなく、発生前後の日付に移動して、その時点のID情報を確認することで、調査や原因特定といった対応も容易にできます。
大利
開発にあたって工夫した点はありますか?
渡辺
SaaSの利用が増えている現在、複雑化するID管理は、多くの企業にとって運用負担になっていることが多いです。こうした運用の負担を私たちは解消したかったため、どのような機能/UIを実装すれば、ID管理を手間なく行うことができるかという点を追求しました。特に本サービスは、情報システム部門だけなく人事総務部門など様々な方が触れる可能性があるサービスでもあるため、誰でも直観的に使いやすいUIであることは重要だと考えました。
日本企業特有の人事イベントに対応した時系列管理機能
大利
ID管理に悩まれている企業も多いですが、特にどのような企業におすすめですか?
堤
自社で利用中のSaaSが複数で、それらのID管理を適切に行いたいと考えている企業におすすめです。ここ最近は、特にSaaSに対して退職者のアカウントの削除漏れ防止を課題とされているお客様が多くいらっしゃいます。「IIJ IDガバナンス管理サービス」であれば、人事イベントを起点にしたID管理が可能になるため、もちろん退職者IDについても、適切な削除、管理ができます。また、グループ会社全体でIDを一元管理したい場合も、本サービスをおすすめしたいです。グループ会社など複数企業にまたがるID管理は、兼務や異動、出向などが絡むため、より複雑になりがちです。いかにシンプルに管理できるかが重要になり、本サービスの価値を実感いただけると思います。
渡辺
また、本サービスはクラウドサービスとして提供しており、スモールスタートで始められることもあり、スタートアップ系の企業にも関心を持っていただけると思います。
大利
最後に今後の展望を教えてください。
堤
他のIIJサービスとの連携は強化していきたいと考えています。具体的には、IIJの強みであるネットワークと連携した閉域接続やセキュリティ機能の提供などです。また、アセット管理なども含めたお客様のITリソースを統合的に管理できる環境のご提供も目指していきたいと考えています。リソース全体の状況を管理できれば、SaaSコストの可視化、最適化も可能になります。IDを起点とするお悩みが少しでもありましたら、ぜひお問い合わせください。