【徹底解剖】巨大化するWindows 10の更新プログラム。アップデートの通信負荷と配信管理の最適化手法(前編)

Windows 7のサポート終了に伴い、次期クライアントOSとしてWindows 10への移行を考える企業が増えています。しかし、Windows 10は更新プログラムの配信・適用の考え方がWindows 7とは大きく異なります。従来のやり方でアップデートを行うと、最悪の場合、ネットワーク遅延や長時間PCが使えなくなる恐れもあります。こうした問題を解消するためには、3つの視点で対策を講じる必要があります。ここではその対策を、2回に分けて徹底解説します。

目次(前編)
  1. 半年に1回サポート期間が変わる!? Windows 10のアップデートはWindows 7とは別物
  2. Windows 10の更新プログラムは2種類
  3. Windows 10アップデートの最適化に欠かせない3つの対策とは?
  4. 対策1:5つの更新プログラム配信方法のメリット/デメリット

半年に1回サポート期間が変わる!? Windows 10のアップデートはWindows 7とは別物

企業のクライアントPCの主流OSとして広く利用されてきたWindows 7。そのサポートは、2020年1月14日で終了を迎えます。新たなクライアントOSとして注目が高まっているのがWindows 10です。

マイクロソフトは最新OSのスムーズなアップデートを行うため、Windows as a Service(WaaS)という新しいコンセプトを採用し、継続的に最新バージョンのWindowsを提供する仕組みを整えています。一方でこのWaaSは、PCやネットワークの管理を担う担当者にとって、少々厄介な仕組みでもあります。更新プログラムの配信と管理方法がWindows 7と大きく異なるからです。

Windows 7ではセキュリティ更新プログラムと機能更新プログラムが毎月提供され、その後、ある程度の期間が経つと、それまでの更新をまとめ、機能を追加したService Pack(SP)が提供されていました。OSとしてのサポート期間は、OSのバージョンとSPのバージョンによって定義されていました。

それに対してWindows 10は、適用した更新プログラムのバージョンによってサポート期間が異なるのです。しかも、そのサポート期間も何度か変更されています。最新の提供形態とサポート期間の確認には注意が必要です。

Windows 10の更新プログラムは2種類

では、更新プログラムの配信と管理方法が変わることで、PCやネットワーク管理者には、どのような対応が求められるのでしょうか。Windows 7との違いを知るため、まずWindows 10の更新プログラムがどういうものかを説明しましょう。

Windows 10の更新プログラムは、大きく2つの種類があります。OSをバージョンアップする「機能更新プログラム」と、セキュリティ問題や製品の不具合を修正するため毎月一回以上提供される「品質更新プログラム」です(その他ドライバーの更新などもありますが、この記事では割愛します)。

機能更新プログラム 「機能更新プログラム」は年2回のペースでリリースされます。OSのアップグレードに近いもので、そのサイズは大容量。フルサイズで2~3GBになることもあり、ダウンロードとPCへの適用には非常に時間がかかります。どの時期の機能更新プログラムを適用しているかによって、OSとしてのサポート期間も異なります。開発される時期にちなんで「Windows 10 1909」といった形で表現されます。
品質更新プログラム 「品質更新プログラム」は、機能更新プログラムのリリース後、サポート期間中に毎月提供されます。累積的な更新プログラムのため、以前リリースされたすべての品質更新プログラムが含まれています。品質更新プログラムを毎月欠かさず適用していれば、「エクスプレス配信」という仕組みにより、1ヵ月のダウンロード容量は200MB程度に抑えられます。ただし、エクスプレス配信に対応していないアップデート管理システムを使用している場合は、フルパッケージのダウンロードが必要です。毎月の適用を怠った場合も、それまでの更新プログラムが累積されていくため、フルパッケージのダウンロードが必要になります。

Windows 10アップデートの最適化に欠かせない3つの対策とは?

このようにWindows 10はWindows 7の場合に比べて、機能更新プログラムの提供頻度が高く、そのサイズも大容量。これによるダウンロードの通信量増大は、世界的に大きな課題になっています。適切な管理を怠ると「ネットワーク負荷が増大し、通信が滞る」「更新プログラムの適用に長時間かかり、PCが使えない」などの問題が発生し、業務に支障をきたす恐れがあります。

※最新の2019年11月の機能更新プログラムでは、イネーブルメントパッケージが採用され、適用時間が短縮されました。しかし、この仕組みは1903から1909への更新のようにシステムファイルが共通していることが前提となります。なお、2020年5月27日にリリースされた2004は、再び適用時間が長くなっております(Version2004について追記しました(2020年6月))。

こうした問題を解消するためには、以下の3つの対策が求められます。

  1. 更新プログラムの配信方法
  2. ネットワークの負荷制御
  3. 更新プログラムの適用計画
本記事(前編)では、1つ目の「更新プログラムの配信方法」について、詳しく紹介しましょう。

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対策1:更新プログラムの配信方法
5つの更新プログラム配信方法のメリット/デメリット

更新プログラムのメジャーな配信方法には、以下の5つの手法があります。

1. Windows Update Windows Updateはマイクロソフトが公開するWindowsのアップデートモジュールを利用し、PCを直接インターネットに接続して更新プログラムを取得します。インターネットにつながる環境さえあれば特別な設備は必要ないため、導入コストはかかりません。ただし、更新プログラムは個々のPCで取得・管理しなければなりません。また配信タイミングの変更はできないため、更新プログラム適用時のネットワークに大きな負荷がかかります。Homeエディションではこの手法のみとなります。
2. Windows Update for Business Windows Update for Businessは、Windows Updateの機能強化版。PCを直接インターネットに接続し更新プログラムを取得する点はWindows Updateと同じですが、更新プログラムの適用を保留することができます。適用時期を先延ばしできるわけです。しかし、こちらも配信タイミングの変更はできないため、更新プログラム適用時のネットワークの負荷増大は避けられません。
3. WSUS(Windows Server Update Services) WSUSはマイクロソフトが企業向けに提供している更新プログラムの配信・管理ソフトウェア「Windows Server Update Services」を用いる方法です。更新プログラムの保留だけでなく、配信する更新プログラムとデバイスも指定可能です。配信状況を確認することもできます。WindowsのIIS(Internet Information Services)機能を活用することで、配信の帯域制御も行えます。ただし、WSUSサーバを新規に構築する必要があり、定期的なメンテナンスも欠かせません。初期導入コストと運用コストも、ある程度見込んでおく必要があるでしょう。
4. アップデート管理システム アップデート管理システムは、マイクロソフトのクライアント管理ソリューションであるSCCM(System Center Configuration Manager)やサードパーティ製品を導入して管理する方法です。配信する更新プログラムとデバイスの指定、 配信状況の確認が可能です。指定した更新プログラムのプッシュ型インストールや帯域制御に対応しており、ネットワークの負荷軽減に一定の効果が見込めます。しかし、機能豊富なシステムが多いため、構築コストや運用コストは肥大化しがちです。
5. BranchCache BranchCacheはWAN経由のファイルサーバアクセスを高速化するWindows Serverの機能「BranchCache」を利用する方法です。PC同士による分散型キャッシュモード、またはBranchCacheサーバとPC間でのホスト型キャッシュモードで更新プログラムデータを共有します。更新プログラムが十分にキャッシュされれば、配信のためのネットワーク負荷を最小化できます。更新プログラムとデバイスの指定、 配信状況の確認などの機能は実装していないため、WSUSやアップデート管理システムとの併用が推奨されます。分散型キャッシュモードであれば初期導入コストは比較的低いのですが、BranchCacheの設計・構築やグループポリシー制御が必要です。キャッシュを保存するPC側の空き容量確保も考慮しなければなりません。

後編は、残る2つの対策を解説

このように更新プログラムの配信方法には、それぞれメリット/デメリットがあります。大きな効果を上げるためには、残る2つの「ネットワークの負荷制御」や「更新プログラムの適用計画」まで含めた対策が不可欠です。どのような解決方法があり、自社にとって何が最適なのか。後編で詳しくお伝えします。

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