◇ 本記事はこちらの続きになります。
DXの取り組みで最も注力しているのは「業務プロセスのデジタル化(ペーパーレスやRPA、ワークフローの自動化など)」、次に「新しいビジネスの創出」、そして「既存ビジネスモデルの変革」の順になっています。
DXの取り組みでやるべきだと思うが現状できていないのは、先ほどの“最も注力しているもの”で上位に挙げられていた「新しいビジネスの創出」「既存ビジネスモデルの変革」、そして「DX人材の採用」の順になっています。
DX推進においての課題として最も多く挙げられたのは「DX人材の不足」であり、次いで「組織文化の変革」「ビジョンや戦略の欠如/不明確さ」が続いています。
自社のDXの必要性について、「必要と感じている」と回答した方は約70%に上り、役職が上がるほどその割合が高くなる傾向があります。業種別に見ると、その割合が最も高いのは「外食・中食業界」で、次いで「食料・生活用品業界」、「機械・電気製品業界」の順になっています。
必要と感じる理由としては、「生き残りをかけてビジネスモデルを見直し、最適化を目指す必要がある」「人材確保や収益確保が厳しくなる中、業務効率化や新戦略・新事業を支えるシステム構築などを迅速に行う必要がある」といった点が挙げられています。
続いて、情報システム部門のDXへの貢献度についてです。情報システム部門の自己評価では、約6割が「貢献している」と評価しており、これはDX関連部門からの評価と同等の割合になります。
DX担当部門が、“情報システム部門がDXに貢献している”と評価した理由としては、「他部署からの信頼が厚い」「全社に向けて新たな取り組みを発信している」「DXの基盤を支えている」といった点が挙げられています。一方で“貢献していない”と評価した理由としては、「既存システムの運用・保守にリソースを割かれており、DXまで手が回らない」「DXを推進できる人材がいない」といった点が挙げられています。
一ノ瀬氏
業務プロセスや顧客接点のデジタル化には積極的に取り組んでいますが、新規ビジネスの創出や既存ビジネスモデルの変革にはまだ着手できていない状況です。
籔田氏
弊社では「DX」という言葉が登場する前から、経営層が新規事業創出を推進しており、既にその取り組みを実施していました。
デジタル化を進める際に、上層部や現場の理解が得られず進まないことがあります。そのような場合は「売上」「利益」「社会貢献」のいずれかの効果を訴求して提案すると理解を得やすいです。例えば、「システムを入れ替えることで、人件費が3割削減できます」と提案するのが効果的です。
また、成果をアピールするためには、総額人件費及び従業員1人当たりのデジタル投資額の推移を提示できるようにすると良いです。従業員1人当たりのデジタル投資額は上がったが、総額人件費は下がったなどと成果を示すことができます。
園氏
DXがうまく進まない理由の一つに、事業部門の意識の問題があると思います。DXの成果はその部門の業績に反映されるため、事業部門が最も意識すべきです。
DX推進部門の設立も、理想的には事業部門の要望によるべきですが、実際には社長の要望で設立されることが多いです。この場合、手段が目的化しないよう注意が必要です。
弊社では、情報システム部門がDXも担当し、事業部門のDX活用状況を評価しています。事業部門の業績評価には、新しいシステム導入により生産性がどのくらい向上したか、具体的にどのような取り組みを実施しているかなど、活用状況に関する項目が含まれており、その評価を情報システム部門が行っています。
井原氏
DXとは何か?のような議論がありますが、テクノロジーを使わないでできる変革はないので、変革に取り組んでいれば自ずとDXになると思います。
弊社は、経営のなりたい姿をまとめた「やりたいことリスト」に基づき、DXプロジェクトを進めています。改善ではなく変革なので、プロジェクトのスポンサーは社長や本部長が務め、リーダーはスポンサーの右腕となるLOBの部長が担っています。デジタルであろうとなかろうと変革は必ずデメリットが先に訪れるので苦労しますが、それでも工夫して乗り越える拠点が出てきて、横展開してみんなで乗り越えていきます。近道はなく必ずこの道のりを辿るのだと思って地道に進めています。
井原氏
経営層と現場社員では視点が異なり、経営のなりたい姿だけだと分かりづらいので、各プロジェクトで何がどうなったら成功したことになるのかを共有して進めています。
籔田氏
部門をまたいで進める際、一方の部門はメリットを享受し、もう一方は苦労することがあります。このような状況では、全体を俯瞰し、最適な解決策を見つけ、目指す形を示すことが重要です。そうしないと合意を得るのは難しいです。
また説明は担当者ではなく、役員が行う方が効果的です。
一ノ瀬氏
全体最適化のために必要であることを、関係者にストーリー形式で伝えれば、理解を得られると思います。
弊社の場合は、まだ従業員数がそれほど多くなく、会社の規模や文化によるところが大き いのかもしれませんが、そういった手法で進めれば大きな抵抗を受けることはありません。
園氏
事業部門が現状を改善しようとする意識を持たなければ、プロジェクトは円滑に進まないと考えます。
井原氏
園さんがおっしゃる通り、DX推進の成功には、実業を担うビジネス部門の意欲が不可欠だと考えます。
あとは上層部の人たちは常に未来を見据えているので、その視点に合わせると進めやすいです。また、情シスが提示したデータ分析結果が上層部の感覚と異なる場合、新たな発見や気づきとなることもあります。
一ノ瀬氏
データ分析は私が担当しており、気になる点があれば積極的に共有しています。
「データを分析する時間がない」という方も多いと思いますが、それは優先順位の問題かもしれません。経営課題として取り組むべき内容であれば、他の業務よりも優先されるべきであり、そのための時間も確保できると思います。
井原氏
情報システムを使わない部署はなく、情シス部門はどの部署とも接点があるので、各部門の課題を発見するには非常に有利な立場だと思います。
弊社は経営目線での問題の大きさで表現するようにしており、仮説を立ててからデータ分析することが多いですが、経営課題の発見につながるのは1割程度です。また、経営課題だと分かったとしても現実解がない場合も多いです。
園氏
私は事業部門の責任者を兼任しており、そこでデータ分析を行っています。その視点から、事業部門が見落としている点に気付き、提案ができる情報システム部門が存在すれば非常に有益だと考えます。
IIJでは、今後も情報システム部門の皆さまにお役立ていただけるイベントやオンラインコンテンツをお届けしていきます。最新情報は以下のサイトからご覧ください。