ヘルスケアとICTをめぐるキーワード(用語集)

2025年問題

世界最速で超高齢社会に突入している日本ですが、2025年頃には団塊の世代(約800万人)が75歳以上の後期高齢者となり、65歳以上の前期高齢者を合わせた高齢者人口の割合は、総人口の30パーセントを超えるとされています。今後、ますます高まっていく高齢者医療や介護のニーズに対応するために、地域包括ケアや健康寿命延伸などの取り組みが始まっており、医療や介護の地域連携が重要になっています。

超高齢社会

総人口に占める65歳以上の割合を高齢化率として、国連やWHO(世界保健機関)が定義したところによると、高齢化率が7パーセントを超えると「高齢化社会」、14パーセントを超えると「高齢社会」、21パーセントを超えると「超高齢社会」となります。日本の高齢化率は2007年に21.5パーセントに達し、世界最速で「超高齢社会」に突入しました。2014年には高齢化率が26パーセントとなり、先例のないスピードで高齢化が進んでいます。

地域包括ケアシステム

厚生労働省では「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進」しています。

超高齢社会では、中核病院を中心とした医療から在宅を中心とした医療へシフトしていくと見られており、在宅患者を対象とした医療・介護体制の整備が必要となります。その際、従来は病院に閉じていた患者の情報を、在宅医療に関わるチーム(中核病院、在宅医、訪問看護師、薬剤師、介護士、家族など)で共有していくことが求められます。在宅患者を取り巻く多職種チームが情報連携を円滑に行なうためのICT基盤が、地域包括ケアシステムでは重要な役割を果たすと考えられています。

レスパイト

レスパイト(respite)とは、「休息」「息抜き」という意味の英語ですが、介護現場においては「レスパイトケア」「レスパイトサービス」などとして、在宅で介護する家族の休息や家族に対するケアの意味で使われます。介護施設への短期入所など、ひととき、家族が介護から解放されて休息をとる支援なども行なわれています。高齢者の介護を家族だけで抱え込まず、介護スタッフや医療スタッフとコミュニケーションを密にとりながら、高齢者を含む家族全体をケアしていくことが大切です。

急性期病院

生命の危機にさらされた急性疾患や重症患者に対して、手術や全身管理などの高度医療を提供する病院を「急性期病院」と分類し、治療日数は14日以内とされています。一方、急性期を脱したものの入院治療が必要な状態を「亜急性期」、生命の危険が少なく進行がゆっくりで継続的な治療が必要な状態を「慢性期」と分類します。

今後は、急性期治療後のリハビリや在宅復帰へ向けた医療・支援を提供する地域包括ケア病棟が増えて、急性期から在宅療養への連携が進むと見られています。地域包括ケアシステムの実現により、地域の病院と在宅医が連携して、患者の状態に応じた適切なケアを施せるようになることが望まれています。

薬剤師

現在、医療機関の近隣に立地する、いわゆる門前薬局を中心に約57,000の薬局が存在していますが、今後は地域包括ケアシステムの一翼を担う「かかりつけ薬局」としての機能が期待されています。そして薬剤師が、患者のかかっている全ての医療機関や服用薬を一元的・継続的に把握し、薬学的管理・指導を実施していくには、ICT活用が重要になると考えられます。薬剤師が医師および患者の双方と連携して、投薬など幅広い相談を受けられる「かかりつけ薬剤師」となれば、在宅医療においてより大きな役割を果たすことができるでしょう。

お薬手帳

「お薬手帳」は「どんな薬を、いつ、どこで、もらって服用しているのか」を記録・管理するとともに、医師や薬剤師が薬の飲み合わせや副作用などをチェックする際にも活用されます。お薬手帳の情報は、PHRとして管理される身近な健康情報とも言えます。お薬手帳の電子化なども進みつつありますが、将来は、かかりつけ薬剤師に自分の電子お薬手帳へのアクセスを許可して、薬学的管理や指導を一任するといった使われ方が広がるかもしれません。

PHR(Personal Health Record)

我々の健康情報は、医療機関、健診機関、家庭などに散在していますが、個人がこれらの情報を時系列に沿って収集管理する仕組みがPHRです。日本では、医療情報は病院のものというのが一般的な認識で、PHRのあり方については、制度やシステムなどの面からも議論されています。将来的には、医療情報は患者のものであって、患者が自らの意思で医療・介護関係者に必要な情報を提供し、共有するという考え方が一般的になるかもしれません。

EHR(Electronic Health Record)

狭義には、病院に閉じた電子カルテで管理されるような情報をEMR(Electronic Medical Record)と呼び、院内での患者の治療に用いられます。一方、地域の医療機関同士で医療情報を共有するような仕組みをEHR(Electronic Health Record)と呼びます。EHRは患者本人のために利用されますが、匿名化されたデータを研究や公益目的に再利用することも想定されています。EHRはPHRと対をなすもので、将来に向けて、患者個人の医療情報を、医療機関を越えて連携・活用していく仕組みが検討されています。

日本再興戦略 改訂2015

2015年発表された『日本再興戦略 改訂2015』では、新時代への挑戦を加速する施策として「セキュリティーを確保した上でのIT利活用の徹底」が挙げられており、そのひとつに、医療・介護などの分野におけるICT化の推進が明記されています。

具体的には、医療などの分野における番号制度の導入、地域医療情報連携ネットワークの全国普及、 電子カルテの全国普及率の引き上げ、診療報酬におけるICTを活用した医療情報連携の評価の在り方の検討、医療などの分野関連データベースの徹底活用による医療・介護の質の向上といったことが言及されています。今後は、ICT活用が遅れているとされる医療・介護の分野においても、ICT利活用がいっそう進むと見られています。

(イラスト/STOMACHACHE.)

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※IIJグループ広報誌「IIJ.news vol.134」(2016年6月発行)より転載