◇ 本記事は後編です。前編も併せてご覧ください。
籔田様
社内で目立つことが大事だと思います。成果を分かりやすく出すことです。例えば社内で表彰制度があったらそれを目指してみるとか。情シスって目立たないんですよね。皆さん「いて当たり前」というか、社員と接点もそんなにないじゃないですか。なので社員の皆さんが不満に思ってることを解消して、それをアピールするとかですね。
籔田様
そうそう、基本的に怒られる部門なんですよね(笑)。
だから「おれら頑張ってるのに」と言ってるだけではなかなか状況が変わらないですね。
井原様
籔田さん良いこと言いますね。仰るとおりだと思います。結局情シスの皆さんは「頑張ってる」とは言いますが、その頑張ってることって「ビジネスとの方向感は合ってますか?」というのがまずありますね。「経営としての価値はどの程度あるのか?」という目線で説明できたら良いと思います。経営も投資に見合うリターンがあると思ったら投資しますので(笑)。なので、投資しないのはなぜか?っていうとそのリターンを期待できないからなわけで、「私に任せてくれたら良いことありますよ、リターンがありますよ」って言えばいい、そういう話だと思います。
籔田様
そうですね、「これできたらもっと費用対効果出ますよ!」と言って、それで通らなかったら諦めるしかないですよね。いや、実際は諦めないですけど(笑)。
園様
その意味では、コロナ禍はIT部門にとってある意味チャンスでもありましたよね。今までやってる業務を変えなきゃいけないっていう時に色んな依頼が社内からありましたし、リモートワークが安全にできるようになったとか、今まで会社に行かなきゃいけなかったものが自宅からできるようになったりとか。
井原様
情シス側が、経営側に分かる言葉で説明できれば良いのかなと思います。究極的には経営が分かっていれば良いと思うので、IT部門側がビジネスのことを理解して、ビジネスの言葉に置き換えて説明してあげれば良いのかなと思います。
井原様
できて当たり前っていうのはそのとおりなんですけど、その結果がどんなにビジネスに価値を提供してますというのは「言えばいいじゃないか」ということですね。当たり前のことだけど、それ言ってますか?ということで。言わないと相手は分かりっこないので、言ってないならぜひ言いましょう。
井原様
例えばリモートワークである種ITが脚光を浴びましたけど、我々ITは以前からリモートワーク用のサービスを提供しているじゃないですか。その結果、コロナ前から社員はITを使ってたわけです。なので間違いなく価値を提供してるわけだから、投資にあった効果を出してますよって言い続けていれば、「もっと投資したらもっと効果あるかも」と思うかもしれない。何も言わなくて「お金使ってごめんなさい」としか言わなければ、それはやっぱり理解されないですよね。
井原様
結局ビジネスでやってますから、投資対効果をきちんと見せる、それに尽きますよね。
園様
いや、毎年のようにマルウェア被害の話題がでてるのに、何も危機意識を感じない経営者はいないと思いますよ(笑)。
井原様
確かに「マルウェアが~」と説明しても分からないかもですが、「ビジネス上こんなダメージあったらどうしますか?例えば請求書出せないかもですよ」という説明で、危機感を感じない経営者はいません。「どんなビジネスのダメージがあるのか」という視点で説明すれば、「それは困る」っていうはずですけどね。
なので、ひたすら社内からの改善要望に応え続けて「頑張ってるでしょう」って言われても、「それビジネスにどんなリターンがあるの?」に答えられなくて「経営から見ると実はやってもやらなくても一緒でした」だと、それはね……、になっちゃうので「ビジネスのなりたい姿と方向感に対してこんなにリターンをもたらしてますよ」っていう説明が必要かなと思います。
籔田様
規模によって情シスの人数は変わると思うんですけど、LIFULLの場合も十年ほど前は従業員400名ぐらいに対し2人でやってましたね。
今は従業員1,000人規模で社内ITを専門で担当してるのは実質人数10名ぐらいまで増えたんですが、忙しいは忙しいので、アウトソースはある程度活用していますね。
園様
私は比較的内製化を進めてる方だと思っています。例えば、社内のPCキッティングなど定型化している業務はアウトソーシングしますが、DCのネットワーク装置やサーバの保守業務はどんどん内製化しています。アウトソーシングしても年間の故障頻度も少ないですし、とても価値に合わないと思い始め、もう自分でやった方がいいよねと。それが若手の人材育成にもつながっています。エンジニアがやりがいがあると感じられるようなところに関してはどんどん内製化していって、定型的な業務はアウトソーシングしています。
園様
基本的な外部資格は受けてもらいますね。ただ、それ以降はOJTメインです。
井原様
弊社ではあまり内製化は頑張っていなくて、むしろ外部依存をどんどん進めています。外部依存に対する弊害の話はよくある話なので、外注ベンダーさんにチームリーダーを任せて、その下にプロパーをつけて、社員と区別が付かないぐらい組織に組み込んでいる形で、言ってみれば内製化のつもりです。それが良いのかっていうとやはり一長一短はあるんですけど、弊社が置かれた現状では、それが一番パフォーマンスを上げやすいのでそんなやり方にしてます。
あとは「こういうことができるようになったらいいよね」という姿は描いてあるんですが、そうなるためには1割は座学、2割は周りの人の仕事を見て学んで、残り7割は実際自分でやって身に付ける、そんな割合だとすると、やっぱり会社の仕事でそれをやることになっていない限り、できるようにはならないと思っています。
なので教育方法の話ではなく、組織の立て付けかなと思っています。IT部門の中を「こういうことができるようになって欲しいチーム」ということで、求められる専門性ごとにチーム分けをして、やりたい人にそこに入ってもらう。基本は手を挙げたらとにかくできなくても任せるようにしています。
井原様
いえ、それはプロパー社員のマネージャーがやっています。
籔田様
内製に関して言うと、体制とセットだと思います。その人が辞めたりしたときに属人化してしまっていると、どうにもならない状態になります。そのリスクがあるんだったら、内製化にこだわらなくてもいいんじゃないかな。内製化したものを外部に販売するとか、そこまでできるなら良いと思うんですけど難しいですよね。
あとは、例えば中途採用で人が足りないから採用しようと思っても、なかなか人がいないという現状はありますね。5年前と比べてもなかなか見つからない。じゃあどうするべきか。最近なんですけど、エージェントの紹介を待つだけじゃなく、自分たちでTwitterで探したりしていますね。「情シス 転職」って検索してると呟いている方がいたりするので、直接アプローチしたりとか。あとはこういうイベントに出て情報発信することで、「見ました」って言ってくださる方もいるので、そういう機会も活用していますね。
籔田様
待遇に満足することって永遠にないと思いますね(笑)。お金の話ではなくて、例えば忙しいとか、疲れるとかの話で、それが続くと余裕がなくなってくるんですよね。それを改善しないといけないんですが、それは人を増やさないといけない。
そのときに大事なのが「頑張らない」ということだと思います(笑)。無理して頑張って、それでなんとかできてしまったとすると結局長続きしない。だから無理して頑張りすぎるのって実はあまり良くなくて、できてしまうよりはある意味クリティカルな影響が出ない範囲で問題を起こさないといけない(笑)。そうすることで経営側も必要意識が生まれるので。そうでもしないとなかなか改善されないと思います。
園様
籔田さんのお話、私も参考になりました。
社内の色んなユーザから様々な要望が来ますが、本当にそれを全部最適に応えようとするともう絶対無理ですね。なので規定のレギュレーションを決めて、本当に自分たちもやりたいことをやる、やらなきゃいけないことをやっていくように、上手くやらないと苦しいですよね。社内の知り合いから言われて断りにくくて苦しんでる姿も見るので、組織的なレギュレーションが必要かなと思います。
井原様
お二人の話に乗っからせてもらうんですが、マネジメントのやり方がかなり影響するんだろうなと思います。ユーザからの改善要望とか機能追加とか、色んなものを入れてくれっていう要望はもう果てしなく続くじゃないですか。ITの人たちって困ってる人を助けてあげたい人たちで、自分のスキルをなんとか発揮して助けてあげようみたいな人が多いので、頑張っちゃうじゃないですか。
なので、体力が続く限り要望に応えようとして「忙しい」ってなっちゃう。弊社ではとにかく「投資対効果」ですよってしています。
制度として色んなチェックポイントを設けていて、担当者の判断でやらないというのではなく、会社のルールとしてやらない、と言えるようにしています。
籔田様
あとは例えば、「忙しいのでアウトソースしましょう」と、ある業務をアウトソースする。で、アウトソースするとコストが見える化するんですね。そしてそのコストを、新しいシステムを導入することで削減したこともあります。
コストを見える化しないと、情シスっていつまで経っても改善しないんですよ。だったら、コストを見える化してやれということで。そうすると、上層部に説明するときも非常に分かりやすいんですよね。だから「大変だ」「忙しい」「お金がない」じゃなくて、誰から見ても分かりやすくするような工夫が必要ですね。それをまた成果にして、好循環を生み出すようにしています。
IIJでは今後も情報システム部門の皆さま向けに、イベントを定期的に開催していきます。最新情報は以下のサイトからご覧ください。