「情シス800人に聞いた『全国情シス実態調査』から読み解く情シスの課題と展望」イベントレポート(前編)

情報システム部門の皆さまに、日々の活動や組織運営のヒントとなる情報をお届けする「IIJ 情シスBoost-up Project」。今回は、2023年3月8日に開催した「情シス800人に聞いた『全国情シス実態調査』から読み解く情シスの課題と展望 ~情シス座談会/キーマンと語るトークセッション~」イベント前半の様子をレポートします。

<話者>
株式会社アクティオホールディングス 取締役 Chief Information Officer 井原 宏尚 様(写真左)
エクシオグループ株式会社 ソリューション事業本部 ICTエンジニアリング本部長 DX戦略部兼務 園 洋志 様(写真中央)
株式会社 LIFULL テクノロジー本部 コーポレートエンジニアリングユニット ユニット長 籔田 綾一 様(写真右)
IIJ サービスプロダクト推進本部 コミュニケーションデザイン室 向平 友治

目次
  1. 情シスの「人材」に関する課題意識
  2. 情シスの存在理由は「ITでビジネスに価値を生み出すこと」

本日は「キーマンと語るトークセッション」ということで、IIJが情シスの皆さんを対象に独自に調査した結果をご紹介しながら、普段感じている課題や今後どうすれば良いのかというところを、実際に情報システム部門のマネジメントをされている方をパネリストとしてお迎えし、共に議論をしていきたいなと思います。

テーマは3つです。1つ目「情シスはどんな課題を持っているのか」。2つ目「人材、人員不足とどう向き合うのか?」。3つ目「情シスの皆さんの待遇をどう改善していくのか」という点を1時間ほど議論したいと思います。

ではここから今日のパネリストのお三方をご紹介します。アクティオホールディングスの井原さんからお願いします。

井原様

アクティオホールディングスでCIOを務めている井原です。弊社は建設機械のレンタルというビジネスをやっていまして、非常にニッチなマーケットではあるんですが、そこで頑張っています。

では続いてエクシオグループ園さんお願いします。

園様

エクシオグループの園です。弊社は通信設備の建設事業を中心に、その他SI事業もやっています。私はSIer事業も兼務しながら、社内ITのインフラ部分の責任者をしています。本日は皆さまと一緒に有意義な議論ができればと思います。

最後にLIFULL籔田さんお願いします。

籔田様

LIFULL籔田です。不動産ポータルサイトHOMESっていうサービスを運営しています。今日は隠すことなく、色々お話したいと思います。

情シスの「人材」に関する課題意識

早速テーマの1と2について、ディスカッションしたいと思います。
IIJが独自に実施した「全国情シス実態調査2022」を紹介するんですが、全国の情シス部門の方に「情シスの課題」について尋ねた設問では、こんな結果になりました。

見ていただけると分かるとおり、上位は人材に関することですね。「人材が足りない」「人員が足りない」多分その2つに比例すると思うんですが、「属人化してる業務がある」などですね。
IIJではこの情シス実態調査を2021年からやっていますが、実は2021年と2022年で順位が全然変わっていません。なかなか、即解決できるような課題ではないということですね。

ちょっと違う調査なんですが、「情シス人材に関するアンケート」も実施しています。人材・人員が足りない、じゃあ「何か人材なり人員を確保するための施策を情シス部門はしていますか?」ということなんですが。

トップは「特にしていない」。情シスの方が直接的に採用活動みたいなものを行うって、難しいんだろうなということが見て取れます。
じゃあ「人材確保のために何を改善したいですか?」と聞いてみると。

給与、待遇条件というのが、棒グラフとしては長く突き出ていてトップなので、やはり待遇は結構あるんだろうなと思います。普段接している情シスの方々とお話をすると、最近エンジニア全般の給与が高騰していて、自社の給与テーブルに合わなくなってきているというお話もよく聞きます。
じゃあ、「人が足りない」っていう話のなかで、どんなものに工数を取られるのかというと。

トップは多分想像できると思うんですが「システムの運用監視」。やはり既存システムの運用監視に手が取られているようです。
人員が足りないから、取るなり育てるなりしなきゃいけないんですが、「部門内教育」とか「トレーニング」「スキルトランスファー」といった項目は最下位でして。なんとかしてこの上の方の時間を下の方に費やしていくっていう動きは必要なんだろうなと思います。
続いて「今後強化すべき、したいと考えてる点」という質問もしているんですが。

2位に人事育成が入ってるんですね。やはりここは強化したいポイントなんだと思います。井原さん、いかがでしょうか?

情シスの存在理由は「ITでビジネスに価値を生み出すこと」

井原様

実は私の感覚とはだいぶ違うんですが、よく聞く話だなとは思っていまして、そこは納得ですね。悩み自体は常にいくつもありますけど、どう捉えるかでなりたい姿も道のりも多分変わってくるんだろうと思うんですよね。
そもそもなぜ会社に情報システム部門があるんですかって言ったら 「ビジネスに価値を提供するためです」だと思うんです。課題としてあるとしたら、「ビジネスに価値が提供できてません」とか「もっと提供できると思ってやりたいことがあるんだけど、なかなかできません」みたいなものが課題感としてあれば良いんだろうなと思います。
その意味だと、「できる人がいない」というのは、何かやりたいことがあるから、ということでしょうから、課題感としては良いと思いました。ただそれ以外は「価値を提供できてない」といった話があまりなくて、そんな課題の捉え方はあまりされないんだな、それはなぜかな、という感想ですね。

そうですね。究極的にはその会社で仕事をしている以上、収益にインパクトを与えるというところが目標にはなってくるけれども、そこに至るところを情シス部門として見せられていない、っていうところはきっとあるのかもしれませんね。
園さんいかがでしょうか?

園様

意外と「予算が足りない」というのが下の方なんですね。予算が増やせても良い人が採れないのか、あるいは予算自体増やせないということなのか。
私自身も採用活動していますが、なかなか良い人って採れないんですよね。その点は悩みです。

やはり採用は難しいですか?

園様

SIer事業部門の方も兼務しているんですが、その部門の離職は増えてきていますね。ユーザ企業の情シス部門に行く人も多いです。最近DXや内製化といったワードもありますが、IT事業者側からユーザ企業側に対する人材の流れは起きてきていますね。

ではユーザ企業の情シス部門としては、その人材の流れをいかにキャッチするかは大事になりそうですね。籔田さんいかがでしょうか?

籔田様

今課題として挙げられてるものは一定の理解はできますね。ともかく情シスは忙しいんです(笑)。 忙しいって実は喜ばしいことではあるんですが、放っておくと今の業務に追われて次の攻めができなくなる悪循環に入っちゃうんですよ。今はいいんだけど、今後を見据えたときに後手になっちゃう。だから、まずは忙しさを解消したい、すなわち人材が足りないとなってしまうことですね。でも人が・予算が欲しいって言ってるだけではなかなかくれないんですね。じゃあどうするか?

後編では、下記の内容についてお話しています。

  • 情シスの頑張りをビジネス目線でわかりやすく、正当にアピールする
  • 教育は組織体制とセットで
  • 情シスの「業務内容」「待遇」に関する課題意識
  • 無理して頑張ってなんとかしない方が良い
情シス800人に聞いた『全国情シス実態調査』から読み解く情シスの課題と展望
~情シス座談会/キーマンと語るトークセッション~

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