情シスへのキャリアチェンジで待ち受けていた試練【情シスのキャリア】

IIJ 情シスBoost-up Projectでは、情報システム部門の皆さんに、日々の活動を更に充実させるためのヒントをお届けしています。

本記事は、情報システム部門で活躍するプロフェッショナルのキャリアを通じて、皆さん自身のキャリア設計や情報システム部門の魅力を再発見していただくためのコラムシリーズです。

今回は、2社の独立系SIerでシステムインテグレーションを経験し、その後広告業界の情報システム部門に転職されたH.S.氏のキャリア遍歴についてお話を伺いました。

H.S.氏のキャリア遍歴についてお話を伺いました

某広告業界 情報システム部門
H.S. 氏

大学卒業後、独立系SIerに入社し、システムの設定や運用、保守を担当。その後、別の独立系SIerに転職し、ベンダー管理を担当。現在は広告業界の情報システム部門で業務に従事。

目次
  1. 現職に至るまでの2社の独立系SIer企業での経験
  2. 情報システム部門へのキャリアチェンジで直面した試練と得た知見
  3. これまでのキャリアから得た学びとその価値

現職に至るまでの2社の独立系SIer企業での経験

H.S.さんは大学卒業後、SIerに入社されたと伺いました。特に印象に残っているエピソードはありますか?

H.S.氏:

1社目で印象に残っているのは、金融機関のリモートアクセスサーバ(RAS)を検証するチームに常駐していた時の経験です。ダイヤルアップ接続の検証では、ノートPCを並べ、電話回線を故意に外して障害テストを行うなど、泥臭い仕事をしていたことが強く印象に残っています。

その後、別のSIerに転職されたとのことですが、決断の主な理由は何ですか?

入社から4年が経過した時、1社しか知らない状況が良くないと感じ、多様な知見を得るために転職を考えました。
その結果、1社目の経験を活かせる、同じく独立系SIerに入社することを決意しました。

2社目のご経験について教えてください。

SIerはシステムの設定や運用、保守など現場寄りの業務が多いのですが、2社目では保険業界のユーザ企業に常駐し、ベンダー管理を担当しました。具体的には、ベンダーが作成したドキュメントの確認やシステム導入時の立ち会い、各拠点のシステム入れ替えに伴う社内調整を担当しました。特に社内調整は、各担当者への作業内容やスケジュールの共有、入館方法の確認など細かい業務が多く苦労しました。1社目とは異なる視点での業務だったため、多くの学びと充実感を得ることができ、非常に印象深い経験となりました。

その中で、現職である広告業界の情報システム部門に転職された理由は何ですか?

SIerの2社ではお客様先に常駐し多様な拠点での経験を積んできたため、今後は1つの拠点で業務に集中したいと考えるようになり、現職への転職を決意しました。

情報システム部門へのキャリアチェンジで直面した試練と得た知見

H.S.さんは2社のSIerを経て、情報システム部門にキャリアチェンジされました。転職後、特に苦労された点は何ですか?

H.S.氏:

「正解がない状況で最適な方法を導き出すこと」です。SIerでは機器設定作業など、やることが具体的で明確な業務がメインでしたが、情報システム部門では「会社をどう良くするか」という漠然とした問いに真剣に向き合う必要があります。この過程では、抽象的思考と具体的思考を行き来することが求められますが、私はこれまでそのような経験をしてこなかったため、この思考法の習得に非常に苦労している状況です。

特にここ2年半は辛い時期でした。
インフラ担当が私を含めて2人体制だったものの、事情により1人で業務を行っていたため、相談や意見交換の機会が少なかったことも辛い要因でした。この困難を乗り越えるため、他チームとのコミュニケーションを通じて業務の進め方を学び、関連書籍を読んだり、ネットで情報収集を行ったりするなど、自らできることに全力を尽くしました。その結果、今年に入り、抽象的思考と具体的思考の行き来のコツを掴んだように感じており、以前よりもスムーズにできるようになりました。

現在、直面している課題や困難はありますか?

後輩の育成を担当しており、その過程で苦労しています。
直属の後輩を持つのは初めてで、育成スケジュールの作成や指導方法には多くの試行錯誤が必要です。しかし、自分がこれまで習得した知識をアウトプットする貴重な機会であり、後輩から新たな視点を学ぶことも多いので、大変ですが非常に有意義な経験となっています。

H.S.さんは、これまでSIerと情報システム部門の両方を経験されています。その中で、情報システム部門の魅力はどのような点にありますか?

まず、自社の社員が顧客であり、直接感謝や不満を受け取れる点です。エンジニア職の中でも、顧客の反応を直接感じられるのは情報システム部門の特徴だと思います。また、SIerと比べて無茶な要求が少ないことや、社内調整を行う機会が多いため、知り合いが増える点も魅力です。中でも一番の魅力は、会社をより良くするために最適な方法を導き出す過程で思考力を高められることです。このプロセスは難しく、時間もかかりますが、問題解決に興味がある方には大きなやりがいとなります。私自身もキャリアチェンジ当初は苦労しましたが、今ではこのプロセスが醍醐味になっています。

今後、どのようなことにチャレンジしたいと考えていますか?

社内のIT関連の潜在的な問題を積極的に解決していきたいと考えています。現状に満足せず、「更に改善できる点はないか」「無駄はないか」を常に考え、主体的に問題解決に取り組みたいです。また、問題解決力やロジカルシンキングといった汎用性の高いスキルを、業務を通じて更に磨いていきたいと思っています。このようなスキルは昨今、セミナーや書籍で見ることも学ぶ機会も多いですが、実践できる人は限られているため、これらのスキルを実務で更に磨いていきたいです。

これまでのキャリアから得た学びとその価値

ご自身のキャリアを振り返り、特に重要だと感じるポイントはありますか?

H.S.氏:

これまでのキャリアを振り返って、「壁打ち」と「リフレクション」の重要性を強く感じています。

まず「壁打ち」についてです。自分ひとりで考えられることには限界があるため、他者と意見を交わすことは非常に有益です。時には「怒られるかもしれない」といったネガティブな考えから他人に頼ることを躊躇するかもしれませんが、実際にその心配が現実になる確率は極めて低いと思います。ですので、良くも悪くも自分の考えていることをさらけ出し、他者の意見を積極的に取り入れることをおすすめします。

次に「リフレクション」についてです。私は自分自身の考えを振り返るリフレクションの時間を大切にしています。これは関連書籍を読んだことがきっかけで習慣になりました。日々のリフレクションは電車での移動中や入浴中など、思考に集中できる時間で行っています。中長期のリフレクションは期の節目や、プロジェクト終了時に行うようにしています。ポイントは、悪い点だけでなく良い点にも目を向けることです。成功要因に気付くことで再現性をもたせられますし、失敗要因は次回の改善に活かせます。リフレクション初期はかなりエネルギーを使いますが、時間がかかっても続けることで徐々に慣れてきます。
最初は正直辛いときもありますが、継続すると自己理解が深まり、不安抑制といったストレス軽減にも繋がりますので非常におすすめです。

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