MSP(マネージドサービスプロバイダ)とは?メリットや選定ポイントを徹底解説 – クラウド時代に求められるMSPの形とは

IIJ クラウド本部マルチクラウドMSP企画室

室長

吉川 義弘

執筆・監修者ページ/掲載記事:4件

AIによる要約 β版(Microsoft Copilot)

  • MSP(マネージド・サービス・プロバイダ)は、お客様のIT環境を24時間365日監視し、異常やトラブルを早期に検知・対処するサービスです。これにより、情報システム部門はコア業務に注力できます。
  • MSPは、他のマネージド・サービスと比較して、監視・保守を専業にしている点が特徴です。しかし、最適なクラウド活用まではサポートできないため、その部分は他のパートナーの支援が必要です。
  • MSPの選定には、提供範囲やサポート内容、得意分野などを事前に確認することが重要です。また、料金はシステムの規模や監視ポイントの数などで変わる場合があります。

クラウドは働き方改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に欠かせない重要なインフラです。多様なクラウドを適材適所で使い分けるマルチクラウド化も進展しています。これに伴い、情報システム部門の役割も複雑化しています。この解決策としてMSPを利用する企業が増えています。MSPとはどのようなサービスで、どんなメリットを享受できるのか。最適なMSP選びのポイントとは。これらを徹底解説した上で、MSPの進化まで俯瞰していきます。

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目次
  1. MSPとは?
  2. MSPと他のマネージドサービスとの違い
  3. MSPのサービス内容とサポート範囲
  4. MSPサービス導入のメリット
  5. MSPサービスの選定ポイント
  6. 監視・保守メインのMSPサービスの限界
  7. IIJはクラウドの最適利用をトータルにサポート

MSPとは?

MSPとはマネージドサービスプロバイダの略。お客様のIT環境を、お客様に代わって監視・保守する専業事業者です。端的に言えば、お客様のIT環境の“見守り役”といったところです。

IT環境の構成要素はサーバやストレージ、ネットワーク、各種システムなど多岐にわたります。そのどこかで異常やトラブルが発生すると、パフォーマンスが低下したり、最悪の場合、システムが停止して業務に大きな影響を及ぼします。異常やトラブルは早期に検知・対処することが重要ですが、IT環境全般を常に監視するのは大変な手間。MSPはこの作業を代行してくれます。異常やトラブルを検知したら、直ちに通知してくれます。オンプレミスやクラウド環境、SaaSなど多様なシステムの監視に対応します。監視だけでなく、障害復旧やサーバチューニングなどを代行してくれるサービスもあります。

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MSPと他のマネージドサービスとの違い

マネージドサービス自体の定義は広く、企業の様々なIT環境に関わる業務をアウトソーシングできるサービスを指します。MSP以外にもマネージドサービスを提供する事業者はあります。それらとMSPは何が違うのでしょうか。

例えば、SIerはシステムをゼロから開発したり、パッケージ製品をカスタマイズしたりして提供します。マネージドサービスはオプションとして、提供したシステムの監視・保守や障害対応、不具合や機能アップデートなどを提供します。

またVAR(付加価値再販業者)はハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどのサードパーティ製品をベースに、追加機能やマネージドサービスなどの付加価値を提供しています。

どちらもマネージドサービスはオプションや付加価値の1つという位置付けです。それに対し、MSPは監視・保守を専業にしている点が一番の違いです。

似ている用語にMSSP(マネージドセキュリティサービスプロバイダ)があります。こちらはセキュリティに特化した監視や運用管理を行う事業者。セキュリティ製品やサービス導入後のアラートの検知やシグネチャ更新などを代行するケースが多いようです。更に踏み込んだインシデント対応や通信遮断などの緊急対応まで行うサービスもあります。

MSPのサービス内容とサポート範囲

MSPはお客様のIT環境を24時間365日監視します。ツールを使ってリモートで監視を行うケースが主流ですが、有人監視で対応するサービスもあります。IT環境全体を監視対象にするか、特定のシステムのみ監視対象にするかは契約時に選択します。

MSPのサービス内容

サービスの提供形態として多いのは、監視をメインとするもの。障害やトラブルが発生したら、メールやコミュニケーションツールを使ってアラートを通知しますが、その後の復旧作業や原因調査はお客様自身で行う形です。

障害復旧などの各種作業まで代行するサービスもありますが、その場合は手順書の作成が必要です。例えば「このアラートが発生したら、サーバをリブートする」といったように、現象に応じた対処法を決めておき、それを代行してもらうためです。

ただし、障害原因を解析し、根本的な対処を行うには、システムに精通した専門家の知見とスキルが求められます。この作業は開発ベンダーや運用管理を担う委託ベンダーとともに、お客様側で対応する必要があります。

MSPサービス導入のメリット

MSPを利用する最大のメリットは、IT環境の監視・保守をアウトソースできること。監視・保守のために人員を割く必要がなくなります。時間とコストをかけて、担当者を育成する必要もありません。

監視だけでなく障害復旧まで委託すれば、夜間や休日に障害が起きても、対応をMSPに任せられます。情報システム部門の業務負荷を軽減できるだけでなく、心理的なストレスも軽減できるでしょう。MSPを利用することで余力が生まれ、情報システム部門はDXや業務変革などの価値を生む業務にリソースを注力できます。

システムの可用性向上も期待できます。障害復旧まで委託しておけば、迅速な復旧が可能になるからです。システムのダウンタイムによる機会損失や業務遅滞を最小限にとどめることができるでしょう。

MSPサービスの選定ポイント

MSPサービスの提供範囲やサポート内容は事業者やプランによって異なります。また事業者によって、得意分野があります。基幹系システムが得意な事業者もあれば、SaaSが得意な事業者もあります。何を、どこまでサポートしてくれるか。MSPを選定する際は、これらを事前に確認しておく必要があります。

すべての事業者が障害復旧まで対応するわけではありません。基本サービスは監視と通知のみで、障害復旧はオプション対応という場合もあるので注意が必要です。

監視をリモートで行う場合は、お客様環境とMSP事業者をつなぐ監視・通知経路を閉域で接続できるかどうかも重要なポイントです。閉域接続であれば、第三者による不正利用や情報漏えいのリスクが極めて低く、安心して任せられます。

料金はシステムの規模や監視ポイントの数などで変わる場合があります。何を監視対象にし、どこまでのサポートを求めるかを決めた上で、比較検討するといいでしょう。

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監視・保守メインのMSPサービスの限界

繰り返しになりますが、MSPはIT環境の監視・保守がメインです。

昨今は企業ITにおいてクラウドの利用が一般化していますが、クラウド上のシステムやSaaSの監視・保守は対応できても、最適なクラウド活用まではサポートできません。SaaSの乗り換え、オンプレミスからクラウドへのリフト&シフトもMSP事業者では対応できません。

あくまでお客様のIT環境の“見守り役”。お客様のシステムを知っているからといって、現行の課題の把握やその改善にまで踏み込んだ対応は行っていません。現行システムの“その後”まで期待するのはお門違いです。クラウドの最適活用を考えるなら、監視・保守をメインとするMSP以外のパートナーの支援が不可欠です。

IIJはクラウドの最適利用をトータルにサポート

クラウドの最適活用を支援するパートナーとして、IIJは「マルチクラウドMSP」というコンセプトを掲げ、多様なクラウドの最適利用を支援しています。マルチクラウドMSPとは、マルチクラウドのライフサイクル全般をマネージドサービスとして継続的にサポートすること。移行前の戦略・計画作成、移行後の運用管理を通じて継続的改善を行い、お客様の満足度を上げつつ、クラウド化のライフサイクルを回し続けます。

IIJは自社クラウドサービス「IIJ GIO」の提供に加え、Microsoft Azure、AWS、Google Cloudなどの導入・運用を支援し、リフト&シフトやクラウド上でのSI実績も豊富です。多様なクラウドに関する幅広い技術と知見を有しています。こうしたバックボーンがあるから、マルチクラウドMSPを提供できるのです。

マルチクラウドMSPのライフサイクルイメージ

IIJは大手クラウドベンダーが提供するクラウド導入・活用のガイダンス「Cloud Adoption Framework」(以下、CAF)を研究し、クラウド活用の現実解を導き出しました。特定のCAFに依存することなく、お客様にとって最適なクラウドの導入・活用を提案します。それを実現する方法論も「デザインパターン」として豊富に用意しています。これを活用し、課題の把握からゴール設定、実際のクラウド移行までお客様に伴走してトータルにサポートします。デジタルシフトが進む中で、オンプレミスからクラウドへの流れが加速しています。MSPの活用で情報システム部門はコア業務に注力できるようになりますが、戦略的なクラウド活用までは支援していません。IIJはお客様の“頼れるパートナー”として、包括的な視点でクラウドの最適活用を支援しています。