生成AI時代に「変化」を力に変える情シスの戦略【イベントレポート前編】

デジタルが競争力の源泉となった今日、ITはどの企業にとっても常に経営戦略の主要テーマとなっています。その中で情シスは、従来の役割にとどまらず「生成AI活用」や「DX推進」を担う存在として、経営層や他部門からこれまで以上の期待が寄せられています。
一方で、役割の変化を強く感じながらも、その期待にいかに応えるべきか模索している情シスリーダーの方も多いのではないでしょうか。

こうした課題へのヒントを得るべく、2026年3月17日に「生成AI活用を成果に変える情シス戦略 いま求められる発想転換とは」と題したIIJ Motivate Seminarを開催。富士フイルム及びロート製薬でDX推進や生成AI活用を牽引してきた板橋 祐一氏に登壇いただきました。本記事ではこのセミナーの模様をお届けします。

本セミナーは2026年8月2日(日)までの期間限定で、アーカイブ映像を公開しています。実際の発表や質疑応答の模様は、ぜひ映像でもお楽しみください。

課題解決のヒントと明日への活力を得られる IIJ Motivate Seminar
生成AI活用を成果に変える情シス戦略 いま求められる発想転換とは
【無料】アーカイブ動画を視聴する

Office ITaBridge 代表
板橋 祐一 氏

化学系エンジニアとして富士フイルム入社。R&Dにて画期的デジタルプリント技術を開発。イメージング事業部に移り写真のデジタル化に伴う本業喪失の危機の中でデジカメやデジタルプリントシステムの商品化・マーケティングなど事業変革に取り組み、特にチェキ事業再生では中心的役割を果たす。その後ICT戦略室やデジタルマーケティング室長としてデジタルテクノロジーを活用した同社の経営変革に貢献。2021年ロート製薬入社、執行役員CIO兼IT/AI推進室長として同社のデジタル変革を推進。現在はOffice ITaBridge 代表であるとともにマルホ株式会社CDOとして製薬業の経営変革に取り組む。

※登壇者の所属、役職は講演時のものです。

板橋氏は、富士フイルムにてデジタルプリントの研究開発に従事した後、事業変革やデジタルマーケティング、ICT戦略など幅広い領域を経験。フイルムからデジタルへの変革を現場と経営の双方から牽引してきました。ロート製薬ではCIOとしてデジタル変革を推進し、独立後、現在はマルホ株式会社CDOとして製薬業の経営変革に取り組んでいます。
本セミナーでは、「生成AI活用を成果に変える」をテーマに、新たなイノベーションに企業がどう向き合うべきか、そしてIT部門にどのような成長機会があるのかについて語られました。

目次
  1. 変革を単なる「道具の変化」と捉えた誤算
  2. 過去の失敗からの学び
  3. 生成AIの本質は「知的労働の再定義」
  4. 加速するAI進化と停滞する企業活用
  5. 「守り」から「価値創出」へ、再定義される情シスの役割(後編)
  6. AIは業務を“作り替える”(後編)
  7. AI活用の最後の壁は「人」(後編)
  8. Q&A・トークセッション(後編)

変革を単なる「道具の変化」と捉えた誤算

板橋氏:

富士フイルム時代の経験から少しお話しします。
2000年前後、写真業界はデジタル化という大きな変化に直面しました。フイルムがなくなるかもしれない、そんな危機です。
私は開発エンジニア、事業変革、経営と複数の立場でこの変化を経験しましたが、このときの感覚が今の生成AIと重なっています。

フイルム市場は、2000年頃をピークに急速に縮小しました。ただし、デジタル化そのものについては多くの企業が予測していて、富士フイルムも準備はしていました。当時の課題は、その変化を「フイルムがデジカメやメモリーカードに置き換わる」といった、“道具の変化”として捉えていた点にありました。

(クリックして拡大)

スマートフォンやSNSが広がると、写真は一気に日常のコミュニケーション手段になり、「1枚にお金を払う」という価値はなくなりました。つまり、本当の変化は、道具ではなく「使い方」「価値」「ビジネスモデル」まで含めたものだったのです。

これが、後から気付いた、破壊的イノベーションの本質です。

過去の失敗からの学び

いまオフィスでも同じような変化が起きようとしています。
約30年前、Windows 95の登場により、コンピュータは一部の特別な人のものから、全社員にとっての前提へと変わりました。これと同様に、これからはすべての人がAIと協働する時代になると思っています。書く、考える、設計するといった知的労働そのものが変化するフェーズです。

(クリックして拡大)

重要なのは、私たちが過去に何を見誤ったかという点です。写真の価値は本来「特別な瞬間を残すこと」にありましたが、デジタル化やスマートフォン、SNSの普及によって「日常のコミュニケーション」に変わりました。当時、私たちはこれを単なる効率化として捉えてしまいました。その結果、多くの企業が本質を見誤り、競争力を失いました。

学びはシンプルです。失われるのは製品ではなく、価値の定義そのものだということです。生成AIに対しても、同様の危険な誤解に陥らないようにしていただきたいと思うのです。

(クリックして拡大)

生成AIの本質は「知的労働の再定義」

生成AIを効率化ツールとしてのみ捉えるのは危険です。文章作成や要約などで効果が出るのは事実ですが、それはあくまで入口にすぎません。本質は、「知的労働の価値そのものが再定義される」点にあります。

(クリックして拡大)

調べる、まとめる、企画するといったプロセスが、人の経験や時間に依存しなくなってきています。ベテランの知見も、対話的に誰でも引き出せるようになりつつあります。

更に、組織における情報の流れも変化します。これまでは階層的に情報を集約してきましたが、AIを活用することで、一次情報から直接必要な知見にアクセスできるようになります。

ここで重要になるのが「一次情報」です。質の高いデータを、使いやすい形で所有できているかどうかが競争力を左右します。

(クリックして拡大)

これまで言われてきた「データは新たな石油である」という考え方が、生成AIの普及によって現実のものとなりつつあります。自社データをどう整備し、AIで活用できる状態にするか。ここが大きな分かれ目となります。

加速するAI進化と停滞する企業活用

ここで少し話題を変え、AIの進化についても触れておきたいと思います。

生成AIはここ数年で急速に進化しました。初期は一部の限られた層が試す段階にとどまっていましたが、現在では多くの企業が「業務で活用できる」と認識するようになっており、その性能も向上を続けています。

(クリックして拡大)

OpenAIに加え、GoogleやAnthropicといった複数プレイヤーが競争していることに加え、MicrosoftやGoogleが業務ツールと組み合わせて提供していることで、より洗練されたツールに進化しています。この流れの中で、従来の業務特化型ツールが汎用AIに置き換わる可能性も見え始めており、市場やビジネスモデルにも影響が及びつつあります。

一方で、日本企業における活用はまだ過渡期にあり、PoC止まりのケースが多いのが実情です。現場では「コストが高いのではないか」という議論に時間を費やしがちですが、重要なのは価格そのものではなく、そこからどれだけ価値を生み出せるかという点にあります。


続くレポート後編では、「再定義される情シスの役割」に加え、視聴者の皆さんからいただいた質問にお答えするQ&A・トークセッションの様子をご覧いただけます。

(次ページ)「守り」から「価値創出」へ、再定義される情シスの役割

本セミナーは2026年8月2日(日)までの期間限定で、アーカイブ映像を公開しています。実際の発表や質疑応答の模様は、ぜひ映像でもお楽しみください。

課題解決のヒントと明日への活力を得られる IIJ Motivate Seminar
生成AI活用を成果に変える情シス戦略 いま求められる発想転換とは
【無料】アーカイブ動画を視聴する