Microsoft 365の障害でメールが使えない! その時慌てないための“秘策”とは

IIJ ネットワーク本部 サービス推進部

メールセキュリティエバンジェリスト

久保田 範夫

メール、セキュリティを専門とし、M3AAWG会員、及びサービスの企画、戦略を担当。国内だけでなく、ASEAN、米国、欧州でのグローバルサービス展開を精力的に推進しながらメールセキュリティのエバンジェリストとして活動。講演多数。

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メールが使えなくなったら、業務はストップし、ビジネスの現場は大混乱に陥る――。2019年11月19日に発生したOffice 365(現Microsoft 365)障害によって、そのリスクを改めて痛感した企業も多いでしょう。この障害によって、メールはほぼ1日使えない状態が続きました。クラウドサービスは便利で多くのメリットを享受できる半面、ひとたび障害が発生すると、その影響が広範囲に及びます。クラウド事業者のシステムをサービスとして利用するため、障害復旧も事業者の対応に頼らざるを得ません。業務を止めないためには、万が一に備え、代替のメール手段を用意しておくことが肝要です。

2019年11月のOffice 365(現Microsoft 365)障害の顛末(てんまつ)と露呈した業務リスク

情報システムのクラウドシフトの拡大に伴い、業務アプリケーションとしてMicrosoft 365を利用する企業が増えています。インターネットにつながる環境さえあれば、場所やデバイスを問わず利用できるため、働き方改革を推進する上でも有効な手段です。導入企業の多くがオンプレミスのメールシステムを移行し、全社のメール環境をMicrosoft 365に一本化しています。

しかし、そのメールがもし使えなくなったとしたら、どうなるでしょう。ビジネスコミュニケーションが滞り、業務そのものがストップしてしまいます。その懸念が現実になった出来事があります。2019年11月19日に発生したOffice 365障害がそれです。Office 365のExchange Onlineでシステム障害が発生し、当日昼頃から「メールが届かない」「届くまでに非常に時間がかかる」といった状況に陥ったのです。

IIJでは、Office 365と連携可能なクラウド型メールセキュリティサービスを提供しており、メールが配送できない場合には、本サービス上で配送待ちとなる仕組みになっています。 本サービスにおける2019年11月19日の観測結果では、昼前より配送待ちとなるメールが発生し始め、時間の経過とともに増加する状態が見られました。同日20:30頃にOffice 365障害の解消とともに徐々にメールが配送されるようになり、最長10時間停止していた再配送待ちメールがすべて配送完了となったのは、同日21:30頃のことでした。

2019年11月19日のOffice 365障害による配送待機メール※の推移

※)IIJ提供サービスにおける観測結果

社内外の人との情報共有が滞り、意思決定が遅れる――。大切なお客様からのメールが届かない上、こちらからの情報伝達もできない――。オフィスの電話は鳴りっぱなしで、クレーム対応に追われ、仕事ができない――。そんな事態に見舞われた企業も少なくないでしょう。

情報システム部門も利用ユーザから突き上げられ、大変なプレッシャーにさらされたことでしょう。同時に歯がゆい思いも抱いていたはずです。というのも、クラウドサービスの障害復旧は、事業者の対応に任せるしかないからです。障害が起きているのはOffice 365側なので、企業の情報システム部門では手の打ちようがないのです。便利なクラウドサービスの危うさを露呈した出来事と言えるでしょう。

メールサービスの冗長化はコストが高額。切り替え時の“空白期間”も避けられない

この障害はスパム対策機能の更新により、メールフローへ予想しない影響が及んだことが原因と言われます。Office 365の障害はこれが初めてではなく、以前にも障害が発生したことがあります。同じような事態が、またいつ起きるとも限らないのです。ビジネスコミュニケーションを支えるメールが使えなくなったら一大事。今から、万が一の「備え」を考えておく必要があります。

対策としては「メインの事業者とは別のクラウドサービスを契約し、有事の際に切り替える」「自社でDRサイトを用意し、サブドメインで別のメールアドレスを利用する」などの方法が考えられます。

ただし、いずれもメインサービスと同じ仕組みを別途用意しなければならないため、コストは2倍かかります。いつ使うかわからない“保険”のために、高額な投資が必要になるのです。

加えて、これらの方法には致命的な欠点があります。切り替える前のメールを読むことができないことです。障害発生から切り替えるまでは、メールの“空白期間”が発生してしまうため、ある程度の混乱は避けられないでしょう。また、切り替え先の環境のドメイン(アドレス)が異なる場合は、送信相手への配慮などユーザビリティへの影響も発生します。

低コストかつ切り替え時の“空白期間”も発生しないメールサービスとは

高額なコストをかけることなく、“空白期間”なしにメールを使い続けたい――。こうした期待に応えるサービスとして注目したいのが、IIJセキュアMXサービスの「スペアメールオプション」です。

これは緊急時にすぐに使えるバックアップ用のWebメール。お客様宛てのメールをMicrosoft 365へ配送する直前で、そのコピーをIIJの設備に保管する仕組みです。

スペアメールオプションの仕組み

クラウドサービスのメールが利用できない状態になったとしても、いつもと同じドメイン・同じメールアドレスでメールの送受信を継続できます。接続元IPアドレスによるアクセス制限や二要素認証にも対応しており、セキュリティ面でも安心です。

導入方法はDNSサーバで定義されるMXレコード(メールの配送先情報)を変更し、Microsoft 365の前段にスペアメールオプションを経由するようにするだけ。お客様側で特別な設備は不要です。1メールアドレスあたり、1日数円程度のわずかなコストで利用できます。

導入環境の制約もありません。Microsoft 365だけでなく、G Suiteなどのクラウドメール、オンプレミスのメールシステムでも利用可能です。

クラウドサービスのメールからスペアメールへの切り替えも非常に簡単です。Webブラウザを開いて、スペアメールオプションにアクセスすれば利用を開始できます。メールの“空白期間”が発生する心配もありません。いつもと同じドメイン・同じメールアドレスのメールを、常時最大14日分コピーして保存しているからです。

障害発生前の直近のメールも読むことができるため、コミュニケーションが滞ることなく、業務を継続できるでしょう。メール受信箱や送信メール作成画面もシンプルな構成なので、誰でも戸惑うことなく使いこなせます。

スペアメールオプションのWebメール画面イメージ

PC版画面イメージ
(クリックすると拡大表示します)

スマートフォン版画面イメージ

クラウドサービスのメールは便利な半面、障害が発生すると影響が大きく、復旧も事業者側の対応に頼らざるを得ません。その間、大切なメールは使えなくなったままです。万が一の場合に備え、メールを継続的に利用できる環境を整えることは、クラウド時代に欠かせない対策です。スペアメールオプションなら、それをわずかなコストで簡単に実現することができます。