データセンターとは?基礎知識と利用メリットを徹底解説

IIJ 基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部 データセンターサービス課

平川 一貴

執筆・監修者ページ/掲載記事:3件

東日本大震災をきっかけに、オンプレミス(自社設備)のIT環境をデータセンターに移行する企業が増加しました。災害に備え、事業継続性を確保するためです。近年はこれに加え、デジタル化を支える基盤としても、データセンターのニーズが高まっています。そもそもデータセンターとはどういうもので、どんな利用メリットがあるのでしょうか。基礎知識から最適なデータセンター選びのポイントまで徹底解説します。

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目次
  1. データセンターとは? クラウドとは何が違うのか
  2. サービスの選択肢は「ハウジング」と「ホスティング」
  3. データセンターを利用するメリット
  4. データセンターに適した立地は?
  5. データセンター選定時に重視すべきポイント
  6. データセンターの料金体系
  7. データセンターはなくなるのか?今後の展望
  8. IIJのデータセンターの取り組み

データセンターとは? クラウドとは何が違うのか

データセンターとは、サーバやネットワーク機器などを保管するため特別に作られた施設のことです。内部にはサーバやネットワーク機器を収納するラックやスペースが設けられ、これらを動かすための大容量電源装置、冷却・空調設備、外部と接続するための高速回線などが整備されています。

金融機関の取引システム、交通システムなど社会インフラを支える基盤として、また一般企業でも基幹系をはじめとするミッションクリティカルなシステムを支える基盤として広く利用されています。

データセンターとよく混同されてしまうのが「クラウド」です。最近は多くの企業がクラウドを利用していますが、データセンターとは何が違うのでしょうか。

基本的にデータセンターはサーバなどを設置する「場所」を提供するサービスです。この中に大容量電源装置、冷却・空調設備、高速回線などが含まれますが、サーバやネットワーク機器の購入、運用・保守はユーザが行います。それに対しクラウドは、事業者が所有するITリソースを、必要な時に必要な分だけ提供するサービス。ユーザ側でサーバやネットワーク機器を購入したり保守したりする必要はありません。ここが大きな違いです。

(図1)データセンターとクラウドの違い

ただし、クラウドも元を辿れば、その設備や機器はデータセンターに収容されています。クラウドは、データセンターを利用して提供される商用サービスの1つと言えるでしょう。

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サービスの選択肢は「ハウジング」と「ホスティング」

データセンターの利用形態は大きく2種類あります。

ハウジング

1つは、自前のサーバをデータセンターに置く「ハウジング」。ラックやスペースを貸し出すサービスで、基本的には機器の監視や運用・保守はユーザ側で行います。

ホスティング

もう1つは、場所だけでなく、事業者のサーバも借りる「ホスティング」です。サーバの保守は事業者側で行うため負担が少ない半面、サーバの種類やOSのバージョンなどは用意されたメニューから選ぶことになるため、ハウジングに比べて自由度は低くなります。

サービスとしてはホスティングとクラウドは似ていますが、例えばリソースを増強・縮退したい場合はサーバを借りているユーザ自身で行う必要があります。ここがクラウドと違う点です。

サーバなどの調達から設定、運用・保守まで自前で行え、なおかつ長期的に利用したいならハウジング、ある程度制限はあっても保守まで任せたいならホスティングが適しているでしょう。

データセンターを利用するメリット

オンプレミスからデータセンターへIT環境を移行した場合のメリットとして以下のような点が挙げられます。

事業継続性の向上

まず事業継続性が大幅に向上します。データセンターは強固な耐震構造で作られているからです。建物の変形や揺れを軽減する免震装置を設置しているデータセンターもあります。電気系統の冗長化、災害時に備えたUPSや非常用発電機が用意されており、安定的な電力の提供が可能です。

最適な温湿度環境

更に、効率的な冷却・空調装置によりサーバの温度上昇を防ぐため、安定的な運用が可能です。

物理的なセキュリティ

物理的なセキュリティ対策も徹底しています。入館・退館時には生体認証などによる本人確認を行います。データセンター内部にも監視カメラを設置し、いつ・誰が・どんな作業を行ったかをチェックできる仕組みを実装しているところもあります。

(図2)データセンターを利用するメリット

オンプレミスでこれだけの設備や対策を実現するのは、コスト的にも技術的にもハードルは非常に高くなります。データセンターを利用すれば、高額な投資をすることなく、必要な設備や対策を利用でき、大切なIT環境を安心して預けられます。また、ファシリティを含め、サーバルーム運用技術者のコストを削減することもできます。

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データセンターに適した立地は?

では、データセンターにはどのような立地が適しているのでしょうか。まず地盤が強く災害時の影響が抑えられること、そしてアクセスの良さも重要なポイントになります。保守や障害対応が必要になった時、すぐに駆け付けられるからです。駅や空港、高速道路の出入口に近いデータセンターも存在します。

東日本では大手町エリア、西日本では大阪の堂島地区や彩都地区に多くのデータセンターが集まっていることが知られています。また近年、千葉の印西エリアでの大規模なデータセンター建設が相次いでおり、Google社がクラウドサービスの拠点となるデータセンターを展開しているほか、IIJも近隣の白井市に最先端のデータセンターを展開しています。

(関連記事)データセンターはどこにある?「場所」が大切な理由とその選定ポイントとは

データセンター選定時に重視すべきポイント

実際にデータセンターを選定する際は、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。災害時には建物自体の堅牢性・信頼性が重要になるため、まず耐震・免震性能の確認は必須です。電源設備は大容量であるだけでなく、冗長化されていることや、長時間の非常用バックアップ電源が確保されているかどうかを確認しましょう。空調や防火設備の性能、入退館時のセキュリティ対策なども重要なチェックポイントになります。

こうした要点を踏まえた総合的な評価軸として参考になるのが「ティア(tier)」基準です。データセンターの品質や付帯設備の格付けを示すもので、ランクはティア1からティア4まであります。日本では日本データセンター協会(JDCC)の定める基準によって評価されます。目安としてティア3以上のデータセンターなら安心でしょう。

データセンターの料金体系

気になる料金ですが、費目としては初期費用、月額利用料、電力利用料、回線使用料、マネージドサービスなどのオプション費用などがあります。

なかでも大きな比重を占めるのが電力利用料です。料金体系はこれを月額利用料に含めた固定料金制と、電力使用量に応じた従量課金制があります。固定料金の場合はどれだけ電力を消費しても月額料金は一定です。新しいデータセンターはユーザごとの電力消費を正確に把握する設備が整っており、ユーザ側も使った分だけで料金を支払う従量課金制を選択するケースが増えています。オンプレミスで、冗長化された電源や温湿度環境を整える空調の設備を用意すると相当な投資が必要ですが、データセンターを利用すれば月額の利用料だけで最適な設備を利用できます。

データセンターはなくなるのか?今後の展望

昨今はクラウドの利用が増加していますが、一方でミッションクリティカルなシステムや機微情報を扱うシステムはクラウド化せず、データセンター内にて自前で運用したいというニーズも根強くあります。その両方を組み合わせて利用するハイブリッドな環境での運用を希望するユーザも増えています。こうしたニーズがある限り、データセンターサービスがなくなることはないでしょう。

また耐震性に優れたデータセンターを活用することで、災害対策を強化できます。環境性能に優れたデータセンターであれば、省エネや脱炭素化といったグリーン化にも貢献できます。

特にグリーン化に対するユーザ企業の期待は大きく、データセンター自体もグリーン化に向けて進化しています。例えば、使用する電力の再生可能エネルギーへのシフトや、より少ない電力消費で効率的に冷やせる外気冷却方式や水冷式、液化式冷却装置の導入が進んでいます。

(関連記事)グリーンデータセンターとは?グリーン化の方法や国内外の動向などを解説

IIJのデータセンターの取り組み

国内外でデータセンターを展開するIIJも、データセンターの未来に向かって、さまざまな取り組みを進めています。

先述した千葉県白井市にある「白井データセンターキャンパス」と、島根県松江市にある「松江データセンターパーク」は、商用データセンターであると同時に、先進的なR&Dを進める“実験室”でもあります。

(図3)白井データセンターキャンパス

敷地内での地産地消による再生可能エネルギーの利用を進めているほか、蓄電池や先進的な空調モジュールの活用によるエネルギー効率向上、AIやロボットの活用による運用の自動化など新たな技術開発に挑み、その成果の実装を進めています。

IIJのデータセンターの取り組みについては、こちらでも詳しくご紹介しています。

IIJはデータセンター事業者であると同時に、その設備を活かしたクラウドサービス「IIJ GIO」や多様なITサービスをトータルに提供しています。SI事業も手掛けているため、データセンターのIT環境とパブリッククラウドをシームレスに連携させるハイブリッド環境の構築も可能です。データセンターを提供するだけでなく、その先まで幅広くサポートできるのが強みです。

オンプレミスからデータセンターへの移行や、次世代を見据えたデータセンターの最適活用を考えているお客様はぜひご相談ください。

(関連記事)最近よく聞く「データセンター」ってなに?(IIJ Engineers Blogへ)

<よくあるご質問>

データセンターとはどういうところでしょうか?
データセンターとは、サーバやネットワーク機器などを保管するため特別に作られた施設のことです。内部にはサーバやネットワーク機器を収納するラックやスペースが設けられ、これらを動かすための大容量電源装置、冷却・空調設備、外部と接続するための高速回線などが整備されています。

データセンターとクラウドの違いは何ですか?
基本的にデータセンターはサーバなどを設置する「場所」を提供するサービスです。この中に大容量電源装置、冷却・空調設備、高速回線などが含まれますが、サーバやネットワーク機器の購入、運用・保守はユーザが行います。それに対しクラウドは、事業者が所有するITリソースを、必要な時に必要な分だけ提供するサービス。ユーザ側でサーバやネットワーク機器を購入したり保守したりする必要はありません。ここが大きな違いです。