2023年12月21日に開催さ…
DX推進やAI活用など、データドリブン経営の重要性が高まる中、情報システム部門には、従来の「守り」から脱却し、改革をリードする役割が求められています。
しかし現実には、「人材が足りない」「育成が進まない」といった課題に直面し、思うように進められない企業も少なくありません。
こうした課題へのヒントを得るべく、2025年12月19日に「非IT人材を戦力化し、人材不足を突破する ~アルペン流 内製化成功の秘訣~」と題したIIJ Motivate Seminarを開催。アルペンでデジタル本部を統括する蒲山 雅文氏に登壇いただきました。本記事ではこのセミナーの模様をお届けします。(前編と併せてご覧ください)
本セミナーは2026年3月31日(火)までの期間限定で、アーカイブ映像を公開しています。実際の発表や質疑応答の模様は、ぜひ映像でもお楽しみください。
蒲山氏:
ここからは「ステークホルダーマネジメント」についてです。もともとは「IT人材不足」に絡めて、IT人材をどう組織化するかを話してほしいというリクエストをいただいていました。ただ、私自身の経験からすると、IT人材だけで内製化を進めようとしても、うまくいかないケースが多いのではと感じています。そこで今回は、「内製化を進めるITリーダーが、周囲のステークホルダーとどう向き合うか」という観点で整理してお話しします。
IT部門の責任者というのは、四方八方からさまざまなことを言われがちです。経営からは『システムにお金をかけるな』、ユーザー部門からは『情シスはコストを理由に動いてくれない』と言われる。部門内では『予算取りとベンダー管理が仕事』と割り切られてしまう。クラウドベンダーからは“数ある取引先の一つ”として見られ、構築ベンダーからは『内製化が進むと仕事がなくなるのでは』と不安を持たれる。
こうした“5方向の圧”に手を打つことこそが、ここでいうステークホルダーマネジメントです。
経営陣に対しては、全社システムを「基幹系」「管理系」「顧客系」「情報系」の4つに分けて説明しました。細部ではなく枠組みを揃えるためです。
基幹系は止めないことが最優先のため「お金をケチらない」ことを明確に宣言しました。管理系は標準化を重視し、パッケージで業務を揃える方針です。顧客系はローコードを活用し、100点を目指さずに60〜80点を短納期で作る。情報系はスピードを最優先に内製化する一方で、止まる可能性があることも含めて正直に伝える。メリットだけでなくリスクもセットで伝えたことで、経営のIT理解が変わった実感がありました。
次に社内との関係、特にIT人材をどう育て、どう戦力化していくかについてです。
結論として、最初の「0→1」は、ITリーダー自身が走るしかないと考えています。
私は入社直後、全部長と1on1を行い、それ以降もなるべく気軽にそれぞれと日々チャットでのコミュニケーションを心がけて接点を増やし、「どこに困りごとがあるか」「どこなら内製でできそうか」を探りました。そして、見えてきた課題のうち、プログラミングをせずに自分で作れそうなものは、まず自分で内製し、部長のところに持っていきました。この体験が“情シスに相談すれば動く”という空気を作りました。
このサイクルが回り始めると、ユーザー部門側からリクエストが出てくるようになります。ここで重要なのは、「こういう仕組みがあったら便利だと思うんですが」といった“着想”がユーザー側から出る状態になることです。
情シスが全部署を回ってヒアリングマラソンをするのはサステナブルではありません。だからこそ、「とりあえず情シスに聞いてみよう」という入口を作ることが重要でした。
その後は同じプロセスを部下に経験させ、作る・持っていく・フィードバックをもらうまでを任せていきます。これは非常に強い成功体験になります。
実際、2019年当時の主な仕事は「PC手配」「ネットワーク運用」「レガシー運用」「POS」でしたが、今では同等の人数で年間100件を超える内製案件を回しています。社内は“情シスに言えば何とかしてくれる”へ、部下も“自分たちでできる方法がある”へと意識が変わりました。
結局いちばん難しいのは、最初の0→1でした。部下に未経験を無茶ぶりする前に、言うなら自分でやる――これが心からのメッセージです。
最後に、社外との関係性についてお話しします。
私は完全内製にはこだわっていませんでした。社外パートナーは、大きく「クラウドサービスのベンダー」と「長年付き合ってきた構築ベンダー」の2つに分けて考えています。
愛知には大手製造業も多く、当社のITコストの規模ではベンダー側に十分な体制を組んでもらいにくいという現実がありました。そこで私が行ったのは、事例を語れる立場になることです。
事例紹介の依頼は断らずに受け、露出を増やし、「アルペンと仕事ができると宣伝になる」と思ってもらえる状態を作りました。こちらとしては“大規模契約は難しいが、事例協力や登壇は全面的に行うのでコストは調整してほしい”というスタンスでした。
その結果、社内理解の進展や異動希望、採用面でのプラスといった副次的な効果も得られました。
もう一つが、長年レガシーシステムを支えてくれていた構築ベンダーです。
内製化やDXが進むと置き去りになりがちですが、優秀で機動力もあり、関係性は大事にしたい存在でした。
そこで、BIやローコードの中で当社側のスキルが足りない部分を、準委任で支援してもらう形にしました。結果として、レガシーだけを担当する関係から、伴走支援のパートナーへ立ち位置が変わっていきました。
地方では似た状況も多いと思います。馴染みのベンダーに任せきりでシステムが陳腐化し、クラウド化で仕事が減る――。そうしたときに、ベンダーを“切る/残す”の二択にするのではなく、内製体制の中に組み込む付き合い方は、一つの道筋になると感じています。
最後に、少し偏見にも近い私の個人的な意見をお伝えしたいと思います。
まずお伝えしたいのは、リスクを適切に理解し、説明できれば、経営層は決して敵ではないということです。経営が「分かってくれない」ように見えるのは、結局はこちらの伝え方に問題があると感じています。
何が得られて、何を失う可能性があるのかを、シンプルな言葉で説明することが重要です。ここを怠ると、経営層はずっと敵のままだと思います。
経営は「DXを進めなさい」「AIを入れなさい」と言ってくることがありますが、そこで文句を言う前に、DXとは何か、AIの得意・不得意は何かを、こちらから説明しに行くべきでした。
よく「業務側」「システム側」と言われますが、私はこの言い方自体が、互いの距離を広げてしまっていると感じています。
業務部門と向き合わずに、IT部門だけで効率化やシステム化を進めることはできますが、ビジネスそのものを変えるような変革は起こせません。変革を目指すのであれば、実務部門と肩を並べ、対等な立場で向き合うことが必要です。
もう1つのポイントが、人材不足についてです。外部を適切に活用すれば、内部の人材不足は致命的な課題になりにくいと実感しています。
技術面はクラウドやツールで補えますし、開発力も外部の力でカバーできます。
必要なのは、インテグレーションする勇気、つまり“自分が引っ張る”という覚悟でした。
最後にお伝えしたいのは、まずやってみることの大切さです。
壮大なロードマップに大きな時間と費用をかけるよりも、まず小さく始めるほうがよいと考えています。どれだけ小さな仕組みでも構いません。そこから少しずつ広げていけば、内製化を定着させることは不可能ではないと思います。
セミナーの後半は、IIJによるファシリテーションのもと、皆さんからの質問にお答えするQ&A・トークセッションが繰り広げられました。
A. 非IT人材は「できるところから入り、実務で育てる」
新卒や若手でも、できることは意外とたくさんあります。ローコードツールであれば、項目を並べて設定するだけで画面が作れるので、まずはそこから入ると、苦手意識は生まれにくいと思います。
ただ、それだけではITスキルは向上しないので、少しずつ基幹システムのスクラッチ案件に関わったり、PMOを経験したり、ベンダーと技術的な話ができるようになったりと、なるべく得意分野に偏らないように経験を積んでもらいます。
また、内製化ばかりやっていると大規模案件を回す力がつきません。そこで、メンバーが一定数入ってくるタイミングごとに、「ベンダーとの請負契約で気をつけるべきこと」や「要件定義でここを握っておかないと失敗する」といった、本や資料にはなかなか書いていない生々しい実務の話を私から直接するようにしています。
それ以外は基本的に、自律的・自発的な動きを重視しています。ツールを使えるようになり、成果を実感することで、自分から学び、動けるようになるはずです。
A. 経営層の理解は「応援者づくり」と分かりやすい対話から
私が一番意識したのは、自分を応援してくれる役員を1人でも多くつくることでした。
やり方は様々あるでしょう。飲みに行って関係をつくるのもいいですし、実績を積んでいくのもひとつ。場合によっては、所謂「よく分からない人」として、少し怖がられつつ覚えてもらう、というのもありだと思っています。誰が自分を信頼し、応援してくれる存在になってもらえそうかを具体的に考えながら行動しました。
また、経営層に対してはITの専門用語を使わず、業務とITをつなぐ存在として、分かりやすく話すことを常に意識しています。ITが当たり前になる前から経営に携わっている方も多く、横文字ばかりだと、そこで聞く耳を持ってもらえなくなってしまいます。
情シスの案件を持ち込む「営業」のような立ち位置で、プライドを捨てて動く覚悟で取り組んでいます。
当日はこのほかにも次のような様々な質問が寄せられ、活発な質疑応答の時間となりました。
本セミナーは2026年3月31日(火)までの期間限定で、アーカイブ映像を公開しています。実際の発表や質疑応答の模様は、ぜひ映像でもお楽しみください。
IIJでは、企業の情シス部門で働く方に向けた情報発信を行う「IIJ 情シスBoost-up Project」を推進しています。この活動の1つである「IIJ Motivate Seminar」では、有識者による講演を通じて、業務における課題解消のヒントを探り、明日へのモチベーションを感じられる情報をお持ち帰りいただけるイベントを定期開催しています。「IIJ 情シスBoost-up Project」の最新情報は、以下のサイトからご覧ください。
気になることがあればお気軽に