電子@連絡帳を基盤とした「地域とくらしを支える」ネットワーク構築

電子@連絡帳は、国が進める地域包括ケアシステムの構築に向けて、各行政が運営主体となり在宅医療・介護連携事業における多職種連携システムとして運営されている。
各行政は、超高齢社会において新たに発生する問題に対応すべく、近隣市町村と連携しながら課題解決を目指している。

目次
  1. 人生の最後まで安心して暮らせる街
  2. 電子@連絡帳の広域連携
  3. 広域連携の拡大と活用
  4. 災害・救急連携

人生の最後まで安心して暮らせる街

愛知県内の行政では、早いところで平成24年度から多職種連携システムである電子@連絡帳の運営が開始されました。

電子@連絡帳は、「人生の最後まで安心して暮らせる街」を目指す地域包括システムを構築するために、各行政単位で(もしくは近隣市町村と連携して)設立された「在宅医療・介護連携推進協議会」が運営主体となり、住民が望む在宅医療の提供に向けて、医療・介護に携わる地域の多職種が、日々の訪問結果を安心・安全に共有できるシステムです。

ただ、人口規模の大きな「市」と少ない「町村」行政とでは、医師・訪問看護ステーション・訪問入浴など、サービスを提供する資源数に差があり、在宅医療を受けられる環境が異なります。例えば、市民病院を運営していない「市」では、住民が自分たちの地域で医療介護サービスを受けられないため、近隣市町村の事業所からサービスを受けているケースも散見されます。

近隣市町村との連携が必要なケースは、規模の小さな行政に限ったことではありません。大都市圏でも、市境で暮らす住民は、近隣市町村の訪問看護ステーションからのサービスを受けたほうが効率的な場合もあります。

電子@連絡帳の広域連携

愛知県内の各行政では、地域住民への在宅医療の提供に向けて、積極的に近隣市町村と電子@絡帳による広域連携を進めています。

電子@連絡帳の広域連携では、例えば、ケアマネージャは、所属する行政から与えられた「ID・パスワード・電子証明書」で電子@連絡帳にログインすることにより、近隣市町村の多職種から構成される患者連携に参加できます。そして、自市町村の患者に対し、近隣市町村の医師や訪問看護ステーションとも連携しながら、在宅医療を提供することが可能になります。その際、連携された医師と訪問看護ステーションは、患者が所属する電子@連絡帳にログインするのではなく、自らが所属する行政が運営する電子@連絡帳を介して患者情報を閲覧できます。

このように、広域的な連携が各地域で運営できているのは、各行政が多職種連携システムの導入を検討していた段階で、広域的な患者連携の視点を持ちながら、近隣市町村と足並みを揃えて、統一したシステム導入を目指したためです。地域包括ケアシステムの構築には、近隣市町村との連携が欠かせないのです。

広域連携の拡大と活用

電子@連絡帳の広域連携は、各行政間だけでなく、医師会・歯科医師会・薬剤師会など、複数の行政に所属会員がいる際の情報共有にも有効です。例えば、医師間の看取りの情報連携や、薬剤師の訪問服薬指導に関する医師への情報共有など、患者支援に必要な連携を電子@連絡帳で迅速に実現できます。

連携事例の報告としては、在宅医療における口腔ケアに関して、歯科医師との連携も増えています。高齢者の歯の治療状態に合わせて「食事の固さ・栄養」などを考えるには、歯科医師に加え、管理栄養士との情報連携も欠かせません。ただ、県に所属する管理栄養士が地域毎に異なる個別システムを利用するのは運用負担が大きいため、県単位での電子@連絡帳の広域連携が進められています。

また、在宅医療での食事の状態、特に認知症高齢者の方が自宅では食事を摂れていたのに、入院にともなう環境変化で食事ができなくなり、点滴治療に移行してもなかなか基礎代謝が回復せず、退院が遅れるといった事例報告もあります。

愛知県豊川市では、ケアマネージャが高齢者の自宅で、食事の状況について「車椅子なのか、ベッドなのか、どのような角度なのか、スプーンの形状は……など」を電子@連絡帳の動画機能で撮影・共有し、入院医療機関に「実際に本人が食べている状態」を見てもらい、入院期間中も自宅と同じように「食事ができた状態」を再現するようにしています。

実際に入院医療機関の主治医が「自宅で食事をしている状態」を確認することで、治療計画を見直すキッカケにつながり、食事が摂れるようになり、運動機能が回復して、ご本人が望む在宅医療を早期に実現できたとの事例報告もあります。

愛知県内の全域を生活圏と見た場合、今後、電子@連絡帳を活用して、都市部に集中する高度な医療機関と各地域の医療機関とが、入退院や検査に関する医療情報を共有することは、治療計画を立てるうえでも不可欠になると考えられます。加えて、「ご本人やご家族が自宅でどのように生活しているのか」という情報連携は、健康寿命の延伸という観点からも重要です。

今後、県域で高齢者だけでなく、小児医療拠点と各地域の小児科医や訪問看護ステーションを結ぶ情報連携にも電子@連絡帳を活用できるよう、検討を進めています。

災害・救急連携

各行政で電子@連絡帳の活用が定着し、地域間の広域連携が可能になったことで、地域包括ケアシステムのさらなる発展型として「災害・救急」においても、近隣市町村と連携した電子@連絡帳の活用が検討されています。その一例として、有事の避難計画立案に際して、高齢者や障がい者の日頃の在宅医療の生活情報や緊急連絡先を電子@連絡帳に蓄積し、広域連携できるシステム構築を、愛知県瀬戸市とともに検討しています。

IIJは行政を支援する

電子@連絡帳は、各行政の在宅医療・介護連携事業における多職種の情報連携ツールとして利用が開始されましたが、近隣市町村との連携が求められる「災害・救急」での活用など、地域住民サービスの基盤を作り上げることにも役立ちます。

今後もIIJでは、各地域における電子@連絡帳の運営を通して、行政が目指す「地域の住民とそのご家族が安心して過ごせる魅力ある街づくり」を支援していきます。

特集イラスト/高橋 庸平

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※IIJグループ広報誌「IIJ.news vol.156」(2020年2月発行)より転載」