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IIJでは、社内のWindowsファイルサーバをBoxへ移行することにしました。検討のきっかけや社員の反応は?移行作業のポイントは?IIJの情シスに聞きました。
登場人物
IIJ 情シス
関 一夫
IIJグループの社内ITインフラを統括。
インフラからアプリケーションまで豊富な知識と経験を備える
IIJ 情シス
長谷川 誠
ファイルサーバの企画運用を担当。
新ファイルサーバの選定から移行プロジェクトを推進。
(聞き手) IIJマーケティング担当 向平
長谷川
既存のファイルサーバは、関東圏のデータセンターに物理サーバ2台のクラスタ+SANストレージの構成で配置していました。さらにDRとして、関西圏のデータセンターにArcserveを利用してリアルタイムレプリケーションを行っていました。いわゆるオンプレミスの構成ですね。
長谷川
社員に加えて協力会社の方にも使っていただいているので、全体では4,000名程の規模になります。容量にして、だいたい25TBぐらい。同時接続数は変動がありますが、平均して2,000同時接続ぐらいでしょうか。
長谷川
IIJではMicrosoft 365の活用を全社的に推進していますが、ファイルが散らばってしまって、ファイル管理が効率的でないという課題がありました。例えば、メールの添付ファイルやTeamsで送ったファイル、SharePointにアップしたファイル、そしてファイルサーバに置いたファイルというようにです。Boxなら、Microsoft 365だけではなくて、Salesforceのファイルも統合管理できます。
長谷川
社内のある部署から、ファイルサーバに置いたファイルの全文検索がしたい、と要望をもらっていました。実現できるツールは見つけたものの、調べてみると既存環境に対する負荷が高かったり、ツール自体のコストが高かったりしたんです。ちょうど既存機器のリプレースのタイミングでもあったので、「新環境で実現できるのが一番いいな」という話になりました。
(資料DL)「Boxだけじゃない!ファイルサーバのクラウド化ガイドブック」を差し上げます。
ダウンロード(無料)
関
そうですね。現在は、Box以外のインターネット通信と同様にプロキシ経由で通信しています。Boxを利用すると回線の帯域が心配だったんですが、ちょうどコロナウイルスによるリモートワーク対応でインターネット回線の帯域も増強する必要があったので、同時に対処ができました。
長谷川
はい。今後、Boxへの通信はプロキシを迂回するように検討しているところです。
長谷川
Boxは世界展開しているサービスなので、海外にも多くのリージョンがあります。ただIIJでは、日本国内のリージョンのみ利用する契約をしています。国内のみといっても東西にリージョンがあり、その間でDR構成がされていて、障害が起きた時はDR側に切り替わります。その点は既存オンプレミスのDRレベルを踏襲できました。
長谷川
UIが変わる点は社内でも議論がありました。Boxにもエクスプローラーのように使えるツールがありますが、社外ユーザとフォルダ共有する場合に社内と混同する心配がありました。また、Boxの機能を一部制限してしまいます。そこで、エクスプローラーとは明示的に異なるUIであり、Boxの推奨でもあるブラウザで使う方向に決めました。
関
まずは導入前の社内上層部への説明ですね。Boxという社外のクラウドサービスを利用することになるので、キャッシュアウトは利用期間が長くなるとオンプレより大きくなるタイミングがあります。しかし、SaaSならではのメリットもあります。インフラの運用負荷がなくなるという運用管理の効率性の側面と、点在しているファイル資源を統合的に管理できるという生産性向上の側面。この2つのメリットが非常に大きい点を理解してもらいました。
関
Boxという1つのインタフェースから検索すればすぐ見つかるのは、すごく生産性が上がりますよね。そうやってBoxに統合していくとSharePointやOneDriveの容量に余裕が生まれるので、そちらはBoxのバックアップデータを置くことで、無駄なく、しかもデータの保全性も高めるような工夫をしてます。
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長谷川
移行の際にポイントになったことの1つは権限設定です。詳しい方はご存じかもしれませんが、Boxでは最上位のフォルダに与えた権限がその下のディレクトリにも引き継がれる「ウォータフォール型」と呼ばれる考え方を採用しています。既存のWindowsファイルサーバの権限設定とは考え方が違いますね。権限設定をうまく引き継ぐような設計を検討するのに苦労しました。
長谷川
サードパーティ製の移行ツールを使ってます。既存のファイルサーバと同じLAN上にそのツールのサーバを準備して、ツールがBoxにデータ転送をする仕組みです。既存ファイルサーバへの負荷も少ないので、日中帯でも作業できる点は良かったです。ただ、データ量がものすごいので、地道にやってる感じです。
長谷川
切り替えのタイミングで既存のファイルサーバはRead onlyにして静止点を設けるつもりです。そして差分転送ですね。
関
Boxの選定や社内稟議に向けた準備など、企画は長谷川と私の2名で主に行いました。現在は移行作業も始まっているので、プラス5名で実施しています。
関
実は、オンプレミスのWindowsファイルサーバでないと要件が満たせないものもありました。例えばファイルサーバのパスがマニュアルにたくさん記載されている社内業務や、Excelのマクロで他のファイルと連携をしているもの。お客様から委託を受けたプロジェクトの契約上、IIJ社外やデータの保管先を特定できないSaaSなどにファイルを置くことができないケースもあります。
そこで、規模は縮小しつつもオンプレミスファイルサーバは一部継続する予定です。IIJのサービスにもオンプレと変わらない構成で管理が可能なクラウドファイルサーバ(SCCloud with IIJ/ファイルサーバサービス)があるので、それを利用することも検討してます。
関
コストメリットやシステム運用上のメリットは当然考える必要がありますが、それ以上に、「いかに生産性を高めるか」という観点が必要だと思います。IIJでは「デジタルワークプレース」という概念で、どこでも生産性の高い仕事ができるデジタル環境を作るというテーマでシステムを検討しています。ファイルサーバは多くの従業員が利用する生産性に直結するシステムなので、特に生産性の向上を強く意識しました。
長谷川
既存のWindowsファイルサーバからクラウド型のサービスへ移行する場合、UIの違いや権限設定の考え方の違いなど、変わる点をしっかり理解したうえで移行設計することが大事ですね。
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