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海外・国内拠点でバラバラに導入していたMicrosoft 365を統合。国内と海外での使い方の違いは?統合時の苦労は?IIJの情シスに聞きました。
登場人物
IIJ 情シス
関 一夫
IIJグループの社内ITインフラを統括。
インフラからアプリケーションまで豊富な知識と経験を備える
IIJ 情シス
森 耕平
IIJグループ全体のMicrosoft 365の企画運用を担当。海外・国内拠点のMicrosoft 365のテナント統合を実現
(聞き手) IIJマーケティング担当 向平
関
国内拠点と海外拠点間のコミュニケーションはVoIP網の音声通信がメインでした。やがて時代が進むと、音声通話以外にビデオ通話などのリッチなコミュニケーションツールのニーズが高まってきました。加えて、音声通話網のシステムや電話端末がEOSを迎えるタイミングが近づいたこともあり、IIJ全体のコミュニケーション基盤の最適化を検討することになりました。
関
そうですね。海外拠点ではもともと独自にMicrosoft 365を導入していたのですが、国内のMicrosoft 365とは別のテナント、つまり別の会社が導入していたようなイメージでした。
その形態だとグループ内でのスムーズなコミュニケーションが実現できないので、海外拠点で既に導入しているMicrosoft 365のテナントを、IIJ国内のMicrosoft 365テナントと統合することにしました。
森
ヨーロッパの拠点は2020年12月、ASEANの拠点は2021年3月にそれぞれ統合済みです。2021年中にアメリカ拠点のテナントを統合する予定です。
関
繰り返しになりますが、テナントが分かれた状態で運用するということは、グループ会社であっても別の企業のようになります。例えば、グループ会社の社員同士の予定が透過的に確認できなかったり、Teamsで同じテナント内の人と同じような操作感で会話できなかったり。テナントを統合するとこれらが解消され、グループ内のコミュニケーションがスムーズになります。
関
テナントを統合するにあたり、全体の大きな運用ポリシーは国内側に合わせることにしました。それによって海外拠点では「今までできていた運用ができなくなる」といったことは大小様々ですが、ありましたね。
森
例えば、スケジューラの会議室や備品のポリシーが、海外拠点と国内とで食い違うことがありました。国内のポリシー変更も難しかったので、別の運用を用意することでカバーしました。
あと、国内のポリシーではセキュリティ維持のため、メールのオートリプライ機能を禁止しているのですが、海外のある拠点では、ビジネス上その機能が必須だった、ということもありました。
関
それ以外にもたくさんあって、細かいオペレーションの差異を埋めようとすると、キリがないので、最終的にはトップダウンで全体のポリシーに合わせました。
やはりテナントを統合するメリットは大きいので。
関
そうですね、具体的な数字は公開できないのですが(笑)
コストメリットは非常に大きいですね。それもテナント統合の大きなモチベーションでした。
関
先ほどお話した運用の統合が苦労したポイントの1つですね。それ以外では、テナント統合時のダウンタイムですね。テナント統合の際にどうしてもダウンタイムが発生します。その間はMicrosoft 365が利用できなくなるので、影響が大きいんですよね。
森
Microsoft側からは、当初『ダウンタイムは「最大」72時間』と聞いていました。72時間、つまり最大3日間はMicrosoft 365が使えないことになります。メールに関しては受信もできないことになります。
森
そうですね。あくまで「最大」72時間ではあったんですが、何とか短くできないか調査はしましたね。
関
メールに関しては、もともと海外拠点で使っていた「IIJセキュアMXサービス」というサービスを利用しました。このサービスには「スペアメール」という機能があります。メインのメールサーバが停止したときでも同じアカウントでメール送受信ができる機能です。移行の間はこの機能を利用することで、少なくともメール送受信に関してはダウンタイムなしで移行することができました。
森
スペアメールは元々障害対策の機能ですが、テナント統合のようなダウンタイムが発生するイベントでも有効ですね。テナント統合を検討する場合は、メールのダウンタイムを回避できるツールが必須だと思います。
関
2021年中にアメリカ拠点のテナントを統合することで、テナント統合のプロジェクトは完了です。アメリカではTeamsで外線・内線通話する機能を先行導入した後にテナント統合する予定で、これまでとは違った統合プロセスになります。
それに関しても、ちょうど技術検証が完了したところですので、また機会があれば情報公開したいと思います。
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