「経営戦略・IT戦略について考える」イベントレポート(後編)

◇ 本記事は後編です。前編も併せてご覧ください。

目次
  1. 経営戦略/IT戦略の策定単位・従業員への浸透度・実行度
  2. 戦略を検討、実行する組織体制
  3. 現場からのご要望への対応
  4. 戦略の存在意義

経営戦略/IT戦略の策定単位・従業員への浸透度・実行度

「経営戦略/計画は従業員に浸透していますか?」と尋ねた設問では、こんな結果になりました。

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約4割が「浸透している」、約6割は「どちらともいえない」から「そう思わない」という分布になっています。従業員規模別で見ると、従業員規模が多いほど「浸透している」結果です。
「なぜ浸透していると思うか」、「なぜ浸透していないと思うか」、それぞれの理由を尋ねた結果が以下になります。

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経営企画部門など、経営戦略を浸透させるための部門があるかが、浸透度に大きく影響しているのかもしれないですね。
次は、経営戦略/計画が「浸透している」ではなく、「実行できている」と感じる割合について尋ねた結果です。

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「80%以上は実行できている」と回答している割合が約4割で、こちらも従業員規模が上がるほど実行できている割合も上がるという結果です。これもやはり、浸透させる部門のように、実行できているかをチェックする部門があるかが影響しているのかもしれないですね。
続いて、IT戦略についてです。IT戦略も経営戦略と同じ質問をしています。
まずは「IT戦略は何年単位で策定されていますか?」と尋ねた設問の結果です。

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これも経営戦略と同じで、1年、3年、5年という単位で策定している企業が1番多くて、従業員規模別に見ても、大きな差はないんですけど、大企業になるほど策定する年次は長くなっています。ただ、IT戦略を策定してない企業もどの従業員規模にも一定数存在していて、従業員が少ない企業ほどその割合は大きくなるという結果になっています。
次が「IT戦略の実行度合は?」と尋ねた設問の結果です。

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「80%以上は実行できている」という企業が約6割で、経営戦略と比較すると実行している度合はかなり上がっていますね。従業員規模別で見ても、やはり大企業ほど実行されているという結果になっています。
続いて「IT戦略の実行度合いの理由」について尋ねた結果です。

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チャットでも「振り返りって、あまりできてないイメージ」とコメントいただきましたが、「戦略を立てて実行するけど、振り返りができてない」という企業は結構ありますね。
続いて、「IT戦略をより良いものにするために必要と感じる事は?」と尋ねた設問の結果です。

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1番多いのは「戦略立案できる人材」ということで、これはどの情報システム部門の方に聞いても、過去のトークセッションを見ても「人材不足が課題」というお話は多いです。そもそも人材が少ないっていうことも考えられるのかなと思っています。
「IT戦略策定の際に参考にする情報は?」と尋ねた結果です。

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続いて「IT戦略で、重要アクションとして設定されているものは?」と尋ねた設問の結果です。

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セキュリティ強化がかなりの票数を集めています。いろいろなセキュリティインシデントの話を聞くと、重要度として上がってくるのかなと感じました。
ここからはパネリストの皆さんにもご意見を伺っていきたいと思います。今ご紹介した調査結果をご覧いただいてご意見があれば伺いたいです。また、ご自身のお勤めの会社で経営戦略、IT戦略をどのぐらいの単位で立てて、その実行度はどのくらいなのかお聞きしたいと思います。

井原様

経営戦略って、経営のなりたい姿の話だと思うので、毎年変わるようなものじゃないし、1年、2年でなれるものでもないので、基本的には中長期的なものだろうなと思います。弊社では経営戦略を明文化はしてないですが存在はしていまして、計画自体は3年間で立てています。でも計画と戦略は全然違うもので、経営戦略は毎年変わるものではないので、そういう意味では「経営戦略を何年間で立てていますか?」という設問は、設定自体が私としては違和感がありました。IT戦略も、経営戦略があってのIT戦略ですので、毎年立てるものではないかなと思います。ToDoリストみたいなことは毎年立てていますけど。

井原さんはIT戦略もそうだし、経営戦略にも携わっていると思いますが、どのくらいの期間で戦略を立てているんですか?

井原様

弊社の場合は上場もしてなくて、オーナー企業なので、オーナーがやりたいことが経営戦略にかなり近しいですね。オーナーだけじゃなく、経営層は成長志向で、こんな姿になりたいんだって攻めの人が多いですね。経営のなりたい姿はかなり固まっているんですが、なりたいなと思ってもすぐになれるものでもないので、いろんな種を蒔いて芽が出てきて、チャンスが来たらやっと実現できるという感じです。

園さん、いかがでしょうか。

園様

弊社の場合は2030年に向けてなりたいビジョンと、5年ごとの中期の経営戦略を発表しています。それに基づいて、各年度の計画を立てています。それが浸透しているかについては、毎年、社長が年度始めにビデオで伝えていますけど、私は細かいことは覚えてなくても、こういう風に変わってほしいぐらいのメッセージさえ伝わっていればいいかと思います。我々、現場のマネージャーとかがこういう風に変わろうとしているよね、で成り立つと思うので。弊社はそれぐらいの浸透度はあるかなと思います。

藪田さん、いかがでしょう?

籔田様

ここまでのアンケート結果を見た時に、大きい会社ほど戦略を大事にしているという結果が出ていましたよね。逆に従業員規模が少ない場合って、果たして戦略っているのかな?ない方がいいのかな?必然的に減っているのかな?とは思いました。弊社の場合は1,000人規模ぐらいの会社ですが、経営戦略とIT戦略しっかり立ててやっていますし、浸透度合に関して言うと、毎年、社員全員に対して今期の戦略や目標を理解しているかテストを実施しています。何回もやっていると慣れてしまいますが、みんな実施しています。なので、経営戦略、IT戦略の浸透のための工夫はしていますね。テストを嫌がる人は多いですけど。

ちょっとそれが気になりました。テストというと面倒に思う人もいますよね。

籔田様

でも、いい機会だなと思いますね。やっぱりそういうのを知っていて仕事するのと、そうでないのとでは微妙に変わるんですよね。日々の仕事で判断に迷った時などに。それがベストだとは言わないですけど、皆さんが知っていることは非常に有意義だと思います。

毎年テストを実施されると思うのですが、経営戦略、IT戦略に関する内容が変わるのはどのくらいの単位なんですか?

籔田様

大きい流れは5年ぐらいですね。毎年微妙に戦術が変わるので。各部門が掲げているビジョン、こんな世界観を目指してます、みたいなのはあまり変わらないので、毎回テストに出てきて目にしている感じですね。

戦略を検討、実行する組織体制

園様

例えば弊社では業務改善や、新しいビジネスを創るとかは各事業本部、グループ会社単位が主体になっているのですが、それに基づいて情報システム部がサポートするという体制になっています。ただ第三者の目がないと短視眼的な改善で、もっと全体のプロセス変えた方がいいんじゃないかとか、全体最適なことができないので、最近DXサポート組織をつくりました。各事業本部、グループ会社はまずDXサポート組織と相談して、どういうことをやるべきか考えて、情報システム部が具体化する、という流れになってます。戦略は情報システム部でつくっているわけではないですね。

事業部、グループ会社が主体となって、DXサポート組織に相談しながら、いろいろやりたいことを考えていくのですね。よくある話で、相談してもよい回答が得られないから、それなら勝手に進めた方が早い、ということがあります。DX推進アドバイザーの実力、力量が問われるのかなと思いますが、そのあたり御社はいかがでしょうか。

園様

弊社のDXサポート組織のメンバーは、かつてそれぞれの組織の中で色々な成功体験、実績を持った人達です。実は専門でやっているわけではなく、兼務しています。今までの自分の経験、知見を他の部署でも活かしてほしいので、やってもらっています。業務プロセスを変えなきゃいけないだとか、もっと違う目線で新サービスを考えなきゃいけない、というところに注力しています。改善ツールとかまで細かくやっているわけではないですね。

なるほど、情報システム部門の皆さんは、DX検討の主体である事業部門、グループ会社とDXサポート組織で会話された内容が下りてきた時に、それを実現できるようなシステム構造を作り上げることが大事なミッションということですね。

園様

そうですね。

籔田様

戦略を立てて実行する時にすごく大事なことは、実行者がそれをよいと思っていることなんですよね。上から言われたからやりました、だと大抵は上手くいかないですね。そういう時に、自分も戦略を考える一員という状態をつくる、その状態でないにしても、これやることでこんな素晴らしいことが起きるんだよ、というイメージができている状態でないと、なかなか難しい。やっぱりその部門を横断して実行するので、これをやるとこっちは得するけど、こっちは得しない、みたいなことで喧嘩になってしまうので。

まったくその通りですよね。井原さん、いかがでしょうか?

井原様

いい枠組みだなと思いました。よくも悪くもテクノロジー起点とか、IT起点で考えると、どうしてもビジネスでやりたいこととズレてしまう。ビジネス側にオーナーシップを持ってもらうとなると、エクシオグループさんの体制、やり方はいいなと思いました。

現場からのご要望への対応

チャットで「全体最適にした時に各部門、職種から依頼のあるITサービスの多くは断ってる」というコメントと「でも断り方って難しい」「いつも断ってると情シスが協力してくれないって波風が立ちますし」というコメントいただいています。これは前のトークセッションの時にも少し話題になっていましたね。

籔田様

そうですね。相談してくる人は、自分の周りを見てここだけ改善できればいいって提案してくるんですけど、私はそれをきっかけに、別の問題も一緒に解決できる方法を考えていますね。

井原様

現場から出てくる要望って日々の改善ですよね。この改善は積み重ねるべしなんですが、現場、マネージャー、役員層でそれぞれ見方が違うので、全部の話を聞かないといけないんですよね。でもやっぱり経営層とか、部門長がどうやりたいかは優先した方がいいんじゃないかと思いますね。弊社のIT部門は「ビジネスリレーションチーム」というのを作っていて、現場の人とやり取りするのはサービスをデリバリーするチームで、部門長とやりとりするのはビジネスリレーションチームという役割に分担しています。部門長・経営クラスと、リソース配分の話とか、日々積み上げられている改善要望の話をしていると、部門長・経営クラス側が優先度を決めてくれるんですね。現場はいかに効率よくやるか、楽になりたい、というケースが多い一方で、部門長とかはもっと働けと思っているので、目線が合わないんですよね。ITとしては両方見ながら、でもやっぱりビジネスでやりたいことを助けるという意味では、部門長、経営層がやりたいようにやる方がいいと思うので、そんな関係があったらやりやすいかなと思います。

チャットで「やりたいこととその効果を事業部門側に出させて、効果が高いものを進めると、1番平等性がある気がしますが、そんなの誰が出してくれるのか」というコメントをいただいていますね。そうですよね。

井原様

弊社はIT部門が一緒になってプロジェクトチャーターを作りつつ、一緒に事前評価書も作っています。そこで計測する効果は定量、定性、どちらも測定します。システムの導入目的と、そのためにどの仕事のやり方を変えるのか、事業部門と約束して、導入後は「本当に変わりましたか?」って効果を確認しています。大抵は上手くいっているんですけど、上手くいってなかったら、言ってたことと違うじゃん、ということで、追加策で何をやるか決めていますね。貴重なリソースを割いて対応しているため、やった甲斐がある状態にしたいので、事前に事業部門と約束して進めることを大事にしています。

戦略の存在意義

チャットで「そもそも自分の業務を説明できる社員がいないので、業務プロセス改善の主導は情シスがやるしかないのが現状です。」というコメントに「激しく同意」の方がたくさんいらっしゃいますね。

園様

弊社もプロセスの可視化支援までやってあげないとだめかな。そこまでサポートするようにはしています。

籔田様

過去にやったプロジェクトでは「業務プロセスの最適化」が1番大変でしたね。色んなプロセスがある中で、それを汎用化しましょう、一律化しましょう、システムに合わせましょう、みたいなことをやりましたが、本当に大変でした。

園様

現場の抵抗がありますよね。

籔田様

まず理想形をつくるのですが、今どうなっているかを調べてみたら微妙に違うとかね。最適化することで最終的にはよくなるんですが、そこに至るまでは本当大変でした。

園様

ベタな話ですけど、プリンターをなくすから紙に写し出しているプロセスなんか絶対にダメだよという状況になって、無理やり新しいやり方をさせるということもありましたね。

籔田様

正直、現場からは嫌がられるので誰もやりたくないじゃないですか。それをやらなきゃいけないのが戦略なんですよね。こういう戦略を会社で打ち出しているからこれはやらなきゃいけないんだという強制力により、納得してくれて、しょうがないな、じゃあ協力するかとなるので。

戦略の役割ってそこが大きいのかなと思っていて、そう考えると精度の高い戦略って重要なんだなと思います。

籔田様

私はいつもITのロードマップ5年分ぐらいを1枚にまとめて、ことあるごとに出してますね。「Dr.STONE」って漫画をご存知ですか?誰が見てもゴールできるプロセスを得て、進めていくんだよ、というのが分かりやすく書いてあるんですが、それを真似た感じです。経営戦略的に解決しなければいけないボトルネックがあって、順を追っていけばここは解決しますというのを誰から見ても分かるようにしておく。5年ぐらいかかっているんですけど、段々とゴールに近づいてきています。そういうのを広めていると、会社内でそれに関するお話が来た時に、これやるのにいい機会ですね、という話になったり、こういうのをやろうとしているんですよね、って勝手に相談がきますね。

パネリストの皆さん、本日は有意義なお話、ありがとうございました。

IIJでは今後も情報システム部門の皆さま向けに、イベントを定期的に開催していきます。最新情報は以下のサイトからご覧ください。