継続的なコスト削減とIT組織の構造変革を両立する戦略的アプローチ<前編>

企業のIT予算のおよそ8割を占めるのが、既存システムの維持運用コストです。足元の事業を支える既存インフラの維持運用は欠かせませんが、これが足かせになると、投資も人の割り当ても限定的になり、新規分野へのチャレンジが難しくなります。このジレンマを解決するため、IIJが新たに提供を開始したソリューションが「ストラテジックITアウトソーシング」です。単なるアウトソーシングにとどまらない、独自の価値を提供するIIJの戦略的アプローチを紹介しましょう。

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IT予算の8割を占める維持運用コストが「攻めのIT」を阻害

企業活動において、ITはビジネスの競争力や生産性に直結する存在になっています。複雑かつ高度化した現在のビジネスは、ITを抜きに語れないと言っても過言ではないでしょう。多様化する顧客・市場ニーズに対応し、顧客満足度や体験価値を高めるためには、最新デジタル技術を活用したアプリケーションやサービスの提供などイノベーションの創出に継続的に取り組むことが大切です。

多様なプレイヤーとの連携で成り立つバリューチェーンの最適化・効率化を図る上でもITの活用は欠かせません。ビジネスライフサイクルは短縮化しており、事業展開のスピード強化を図る上でもITへの期待はますます高まっています。少子高齢化を背景に労働人口が減少する中、ITによる生産力の維持・強化、コロナ禍により訪れた「ニューノーマル」時代の働き方改革も重要な企業課題です。

しかし、IT前提の競争環境に多くの企業が対応できていません。IT部門はシステムの維持運用、つまり「守りのIT」に多くの時間とコストが獲られているからです。システムの維持運用コストはIT予算のおよそ8割を占めており、この構造は長く変わっていません。その結果、「攻めのIT」を十分に検討できていないのです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みも、成功事例はごく一握りです。部門横断でDX組織を新設しても、大半の企業は縦割りの組織構造、レガシーシステムの保守、IT部門のリソース不足などが影響して苦戦を強いられています。そもそもDXによる「事業の高度化」や「新事業創出」は、短期的に成果を出せるものではありません。経営層の理解が得にくく、着手すら難しいのが現状です。成果が未知数のものに、高額な投資はリスクが大きいと判断されるためです。

加えて、高度なIT人材は慢性的に不足しています。ユーザ企業にとって要員の確保は非常に困難です。その人材不足を補うはずのITパートナーを十分活用できていないことも問題です。ITパートナーは「システム機能の提供とその運用保守を担う外部事業者」という関係性に終始しているケースがほとんどです。

長年の運用でシステムは複雑化・ブラックボックス化

こうした状況を抜け出せない背景には、「日本型IT戦略」の功罪が強く影響しています。欧米企業は自社でIT人材を抱え、システムを内製する形態が主流です。一方、日本企業はシステムの設計・構築・運用・保守を部分的にITパートナーに委託する形態が一般的。ユーザ企業のIT部門はそのハンドリングを行う形です。

煩雑なシステムの運用・保守をアウトソースすれば、それだけ自社リソースの負担が減ると思われがちですが、中途半端なアウトソースではむしろその逆。先述したように「守りのIT」から抜け出せずにいるのです。

システムを長年運用していると、ビジネス環境の変化に対応するための改修・アドオンが増えていきます。これを繰り返していくと、システムはますます複雑化・ブラックボックス化していきます。パフォーマンスの低下や予期せぬトラブルなどの発生頻度も多くなります。

しかし、システムが複雑化・ブラックボックス化していると、その原因特定や対処は非常に難しくなります。アウトソースしているとはいえ、すべての作業をITパートナーに任せることはできません。ビジネスへの影響度調査やヘルプデスク対応はIT部門の重要な仕事です。このため、IT部門の負担が減らないばかりか、その負担はますます膨らんでいます。

足元の事業を支えるシステムの維持運用は欠くことのできない重要な仕事ですが、一方で事業の競争力に寄与しにくい活動であることも事実。この負担を減らし、システムの戦略立案やDXを支える新サービスの企画・開発など「攻めのIT」へシフトチェンジすることが、いま求められています。

限られたリソースの中で「攻めのIT」にシフトチェンジする方策

体力のある大手企業なら、欧米企業のように内製化を図ることで「攻めのIT」へシフトチェンジすることも可能でしょう。しかし、すべての企業がこれを実現できるわけではありません。IT人材や予算が限られている企業では、方針転換は非常に困難です。

そもそもIT人材が不足している上、ユーザ企業に活躍の場を求める人材も少ない。アウトソーシングの流れの中で、「守り」に比重を置いてきたユーザ企業のIT部門はスキルアップやキャリアアップの場として魅力的とは映らないようです。ここにも日本型IT戦略の弊害が色濃く反映されています。

IT人材や予算が限られる中で「攻めのIT」へシフトチェンジするためには、IT部門が自身の役割を変えていくことが重要です。従来のアウトソーシング形態を抜本的に見直し、負荷の高いシステム維持運用の領域を拡大させ、アウトソース可能な仕事はITパートナーに徹底的に任せていくのです。

そうすれば人的リソースの再配置が可能になり、業務の「選択」と「集中」も進めやすくなります。IT部門は経営や事業戦略を支えるシステムの戦略立案など“本来取り組むべきこと”に注力できるようになります。ビジネスとITの整合性が高まり、コア事業への貢献度も上がっていくでしょう。

後編に続く