「情報システム部門のための社内プレゼンス向上のヒント」イベントレポート(後編)

デジタル化が叫ばれるいま、情報システム部門に求められる業務範囲は「新規システムの導入/開発」「既存システムの保守/運用」「IT サポート」「インフラ」「セキュリティ」更にはDXなど幅広く、“何でも屋”になってしまっているという組織も多いのではないでしょうか。
また、重要な業務を担う存在である一方で、社内では「評価されづらい」「立場が低い」といった状況に苦労しているという声も聞こえてきます。

2023年6月23日に「情報システム部門のための社内プレゼンス向上のヒント」をテーマに開催したオンラインセミナー「IIJ Motivate Seminar」では、IT戦略やDX戦略の立案推進に従事する、株式会社コーセー 経営企画部 DX推進担当部長 兼 情報統括部 グループマネージャーの進藤広輔氏が登壇。前半は進藤氏による「「情シス」が変わり会社を変える。これからの「情シス」が進むべき道」と題した講演を、後半はIIJの向平と共に、視聴者から寄せられた質問に回答するQ&A・トークセッションの2部構成で展開されました。本記事では、このセミナーの模様をお届けします。

◇ 本記事は後編です。前編も併せてご覧ください。

セミナーの後半は、引き続き株式会社コーセーの進藤氏に加え、IIJ サービスプロダクト推進本部 コミュニケーションデザイン室 シニアプログラムマネジャーの向平によるファシリテーションのもと、お申し込み時や当日に参加者の皆さんからいただいた質問にお答えするQ&A・トークセッションが繰り広げられました。ここではその一部をご紹介します。

目次
  1. マインドチェンジを促し、受け身体質から脱却するには?
  2. 情シス人材の教育はどうしている?
  3. もしも「一人きりの情シス」だったら?

マインドチェンジを促し、受け身体質から脱却するには?

Q.これまでシステムの安定稼働のみを担い、受け身体質であった情シスが、能動的にビジネス領域に踏み込むためのマインドチェンジを進めるためには、どのようにしたらよいでしょうか。

進藤氏:

とにかくまずシステムを作ってみること、そして利用者のフィードバックを得て認められる機会を作ること。この2つがマインドチェンジのポイントです。

情シス部門の人たちは、 “言われたことをこなすのが精一杯だ”と閉じた考えをしてしまい、自分たちが新しいことに取り組んで答えを出せる、と思っていないように感じます。そこでコーセーでは、会社に求められるものであれば、ニーズを聞くことなくまずは作ってしまうミニプロジェクトを多く立ち上げました。

その1つに入社式の配信システムがあります。少人数・短期間でシステムを構築してもらい、それがいきなり全社で使われるわけです。すると「自分たちもこんなことができるんだ」という気付きが得られ、どんどんやっていこうという前向きな雰囲気が生まれました。

事業部門から言われたものを作るのではなく、自分たちで見つけた課題に対してシステム化を行い、それを「どうぞ使ってみてください」と促す流れが大切です。また、実際のユーザから直接フィードバックが得られることで、感謝されたり認められたりする機会も得られます。

こうした “最初の小さな成功”を積み重ねることで、徐々にマインドが変わっていくのではないでしょうか。

情シス人材の教育はどうしている?

Q.20代が多い組織とのお話がありましたが、若手の教育プロセスはどのようにしていますか?また、ビジネススキルを身に付けるためにしていることはありますか?

進藤氏:

これまでの日本の情シスの問題点として、キャリアビジョンを示せていないという点があると思います。「キャリアパスがない」「ロールモデルがいない」といった状況で、更に転職をすることもなく閉鎖的な環境になってしまうケースもあるのではないでしょうか。そうならないよう、キャリアパスやロールモデルの例を提示しながら会話をし、自分の目指すべき姿や挑戦してみたい職種について、年齢問わず誰でも選べるような状態を作るように意識しています。

また教育は、実際にやってみると非常に難しいと感じます。我々の世代だと、自分でやって当たり前という感覚がありますが、今はそれでは通じません。

具体的な取り組みとして、基本を理解するための座学は必要です。これは、システムテクノロジーの分野だけに留まりません。情シスの仕事はテクノロジーだけ、あるいは業務知識だけでは成り立たないので、新人のときからビジネススクールで出されるようなケーススタディトレーニングを行い、「ロジカルシンキング」「問題解決手法」「リサーチ」といったスキルを身に付けられる教育を行っています。

特にロジカルシンキングは重要で、講演でもお話しましたが「現状を課題と捉えてしまって、それに対して対策を打ってしまって外す」というケースは意外と多いものです。システム開発はどうしても大きなコストがかかりますから、外れることのないよう、真因をきちんと探るスキルや、課題設定力は身に付けておくべき要素だと思います。

もしも「一人きりの情シス」だったら?

Q.進藤さんがひとりぼっちの情シスで孤軍奮闘しなければならない状況だったら、どのようにやりたいことを進めていくと思いますか。

進藤氏:

できることは限られるので、まずすべてをやろうとしないと思います。経営側の期待値の確認を行い、やるべきことを握り、そこに応えていく仕事から取り組むという進め方をすると思います。

一人きりの情シスの方の中には、全部やらなきゃいけないと感じている方も多いかと思いますが、それはもしかしたら思い込みかもしれません。任せている側も、全部できないということはわかっているのではないでしょうか。

とは言っても、絶対にやらなきゃいけないことはあると思いますので、その場合はやり方を変えます。自分で全部やるのは命題ではないはずですし、できることは限られているので、自分でやらない方法を取ります。

そのときに会社に認めてもらう方法ですが、例えば 「運用保守しなければいけない」などと訴求してしまうと、会社はお金を出す気にならないものです。競争領域に対してシステム化は絶対必要だと言われている中で、今だとその時間が割けない。なぜなら人がいないからだ、などと訴求すると会社は動きやすいと思います。

情シスにいる人間として、何が自分の会社にとっての競争領域で、何が非競争領域なのかを明確にし、それをもとに意思決定できる方々と会話することが大切です。すべてを同じ粒度で喋ってしまうと、1人でできるんじゃないかとか、そこまでそれは要らないんじゃないか、などと言われてしまいます。“承認する人が何を意識してるか” を強く想像することが大事だと思います。


当日は次のような質問が寄せられ、活発な質疑応答の時間となりました。

  1. マインドチェンジを促し、受け身体質から脱却するには?
  2. メンバーのモチベーションを上げるには?
  3. 新しいことに向き合うための時間を創出するには?
  4. 評価の基準と、挑戦の結果失敗したときは?
  5. 情シス人材の教育はどうしている?
  6. 経営層や上層部の理解を得るには?
  7. IT部門が戦略的な計画に参画するには?
  8. ビジネス部門との協業例はありますか?
  9. もしも「一人きりの情シス」だったら?

これらの質問への回答は、「イベント Q&A レポート」として一問一答の形式で資料にまとめています。無料でダウンロードいただけますので、ぜひ併せてご覧ください。

情シスの皆さんに役立つヒントを「IIJ 情シスBoost-up Project」

IIJでは、企業の情シス部門で働く方に向けた情報発信を行う「IIJ 情シスBoost-up Project」を推進しています。この活動の1つである「IIJ Motivate Seminar」では、有識者による講演を通じて、業務における課題解消のヒントを探り、明日へのモチベーションを感じられる情報をお持ち帰りいただけるイベントを定期開催しています。
「IIJ 情シスBoost-up Project」の最新情報は、以下のサイトからご覧ください。