DXコンサルタントとして、大手電力事業者や大手建設業における戦略・企画構想の策定に携わる。DX推進に必要なスキルやマインド育成のための人材育成や、DX推進組織における組織構造・プロセスモデル設計、アウトソーシング戦略の策定なども担当し、お客様のDX推進のパートナーとして活動。
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DXはいまや、企業競争力を強化し、成長を続けるための基本戦略です。しかし、成功を収めている企業はまだ少数派。全社展開を前に“息切れ”するケースが少なくありません。
多数のITサービスを提供し続けるIIJが、自社の取り組みから得たDX成功の法則とは?「チャレンジ」と「慎重さ」を併せ持つ、独自のアプローチを紹介します。
DXの取り組みは、単に新しい技術を導入することとは異なる目的・狙いを持ちます。企業文化の変革、プロセスの再設計、そしてビジネスモデル自体の再構築を含む包括的なプロジェクトだからです。その道のりは平たんではありません。IPA「DX推進指標」の成熟度レベルで言えば、DXに取り組んでいても「レベル1」か「レベル2」のケースがほとんど。「レベル4」や「レベル5」に至っている企業はごく一握りです(表1)(図1)。
成熟度レベル | 特性 | |
---|---|---|
レベル0 | 未着手 | 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない |
レベル1 | 一部での散発的実施 | 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている (例)PoCの実施において、トップの号令があったとしても、全社的な仕組みがない場合は、ただ単に失敗を繰り返すだけになってしまい、失敗から学ぶことができなくなる。 |
レベル2 | 一部での戦略的実施 | 全社戦略に基づく一部の部門での推進 |
レベル3 | 全社戦略に基づく部門横断的推進 | 全社戦略に基づく部門横断的推進 全社的な取組となっていることが望ましいが、必ずしも全社で画一的な仕組みとすることを指しているわけではなく、仕組みが明確化され部門横断的に実践されていることを指す。 |
レベル4 | 全社戦略に基づく持続的実施 | 定量的な指標などによる持続的な実施 持続的な実施には、同じ組織、やり方を定着させていくということ以外に、判断が誤っていた場合に積極的に組織、やり方を変えることで、継続的に改善していくということも含まれる。 |
レベル5 | グローバル市場におけるデジタル企業 | デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル レベル4における特性を満たした上で、グローバル市場でも存在感を発揮し、競争上の優位性を確立している。 |
※ 表1、図1ともにIPA「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2023年版)」より引用
図1で示しているように多くの企業が小規模なPoC(評価検証の段階)にとどまっており、事業全体の成果につながっていないのです。
原因の1つが、DXとの向き合い方です。デジタルやシステムといった部分に重きを置きすぎると、その導入が目的化してしまいます。ビジネスの視点が置き去りにされた結果、現場に展開しても結局は使われず、成果も上がらない。組織文化やマインドセットの変革がなければ、どんなに先進的なテクノロジーを導入しても、そのポテンシャルを完全に発揮できません。
IIJはサービス提供事業者として、ITサービスを企画・開発し、安定的・継続的に提供・進化させることを通じて多くのお客様のビジネス成長に貢献してきました。この取り組みはDXそのものと言っても過言ではありません。この強みを活かし、お客様のDX推進を支援するのが「DXコンサルティングサービス」です。サービスは以下の3つの領域で展開します。
これらのコンサルティングサービスを組み合わせることで、最新のデジタル技術やツールを活用するだけでなく、従業員のマインドチェンジやリテラシー向上を支援。根本的な事業・業務のあり方を再構築し、全社的な変革を成功へと導きます。
一般的にDXの取り組みは「戦略」「企画」「開発」「展開」というフェーズで進めていきます(図2)。大切なことは、すべてのフェーズを通じて「事業や業務が大きく変わる」という“ワクワク感”を経営・現場双方が共有すること。そして革新的な施策を着実に実現し、作り上げた業務環境を堅実に維持・改善していくことです。すなわち「チャレンジ」と「慎重さ」の両面を併せ持つことが重要なのです。
この両立が特に強く求められるのが「企画」フェーズです。企画フェーズは下記のようなプロセスで推進していきます。
企画フェーズの取り組みが、その後の開発・展開フェーズ、さらに改善のためのPDCAサイクルの土台となります。この作業はより具体的に行うことが実現可能性を高めるため、簡易開発などのシステムのモックアップが必要です。「実際の業務環境でどのようなテクノロジーや機能が求められるか」「構築した仕組みや機能が本当に有効か」「実際の開発や運用にどれだけのコストがかかり、どれぐらいのリターンが期待できるか」。簡易開発を通した技術評価と業務評価を実施することで、これらの解像度が高まっていきます。
事例を1つ紹介しましょう。住宅総合メーカー大手の大和ハウス工業は、労働環境を改革する「建設DX」を推進しています。IIJはDXパートナーの1社として、このプロジェクトに参画。ネットワークカメラで建設現場をモニタリングする「統合ビデオ管理システム」の開発により、リモート環境での品質管理や安全管理、建設現場の無人化・省人化が大きく加速しました。
建設現場を俯瞰的にモニタリングするためには、どこに、どのようにカメラを設置するかが重要なポイントになります。しかし、実際にやってみなければわからないことも多々あります。IIJはカメラの設置場所やモニタリング状況の検証などもサポートし、現場目線で改善を繰り返すことで、効果の創出に貢献しました。
高い理想や青写真をいかに現実のものにしていくか。これがDXを成功へと導くキーファクターであり、IIJが大切にしていることです。上述したプロセスをしっかり踏んで、業務・技術両面での評価を得ながら施策を改善していく。IIJは実際にお客様の業務が行われる現場に赴き、課題抽出・業務評価を行い現状の課題を把握した上で、理想と現実のギャップを埋め、成功を目指していきます。
IIJはサービス提供事業者として多数のサービスを開発・提供しています。これらを支える多様なフレームワークも有しています。コンサルティングサービスでは、この実効性あるフレームワークをベースにサポートしていきます。
例えば、構想企画の段階では業務・人・デジタルの組み合わせで変革のステップを描くためのフレームワークを提供します。変革の推進に必要となる組織構造やプロセスモデルの設計を支援するフレームワークもあります。コスト試算や効果検証には、施策に対する投資対効果をモニタリングするフレームワークが効果を発揮します。
更にコンサルティングでは、IIJが一方的に企画を担うのではなく、「このフレームワークを活用した有効な企画手法とはどのような方法か」「IIJが支援してきた他社・過去実績ではどのように変革を進めてきたか」といった点も含め、DXの推進担当者へのスキル・マインド・ナレッジのトランスファーを行いながら支援活動を行っていきます。これにより、継続的な改善施策や新たなDXの取り組みを自社で主導的に進めていく組織・文化の変革につながります。
システムの新規開発を伴う場合には、インテグレーションやサービス提供などのサポートも可能です。既存のシステムや業務プロセスとの橋渡しを行いつつ、足りないピースを埋め、DXの実現、IPA「DX推進指標」の成熟度レベルで言えばレベル4以上を目指します。
このようにIIJのDXコンサルティングは、コンサルティングとはいえ、理想像を示すだけではありません。目指すゴールに向けて、ビジネスや業務をどう変えていけばいいのか。その中で直面する課題にどのように対処すべきか。DXを推進する上で必要となる組織体制や業務プロセスの変革まで踏み込み、運用の定着と成果の創出をサポートします。
IIJはインターネットの黎明期からその発展に貢献してきた技術と知見を活かし、インターネットやデジタルの更なる価値を引き出します。DXの推進に課題を抱えている、ビジネスで結果を出すDXを目指している、そんなお客様は、ぜひIIJのDXコンサルティング活用をご検討ください。