組織・状況に合わせた運用改革の進め方(後編)

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運用体制検討の進め方

千差万別の企業背景に加え、人材が不足している状況下で運用体制検討を要求されるIT部門の方も多いと思います。ここでは、IIJの運用コンサルティングによる体制検討の進め方をご説明します。

まず、運用の可視化を行い、運用する担当者を決定していきます。可視化を行うところまでは、ある程度のスキルセットがあれば資料を作成、整理していくことで現場の運用担当者だけで進めていけます。しかし、実際に運用する担当者を決めていくところでは、既存の体制にこだわらず、自社の他部門や他社の体制の利用を考えていくことが重要です。体制検討する上での大きな方向性として挙げられる2つの手法がインソースの活用とアウトソースです。

1つ目の手法がインソースの活用です。会社独自のノウハウを内部に溜めておきたい、情報を社外に任せることができないなどの背景がある場合に採用されることが多い手法です。内部リソースを有効活用して行うため、自社向けに体制をカスタマイズでき、柔軟性が高いことが利点と言えます。また、会社内に情報や技術を留めるため、IT運用で独自性や安全性を保持することが望ましい企業にとって有効な手法と言えます。

短所としては、体制を構築するためにマネジメント、及び現場の両方での人材確保が必要であり、市場での人材不足に加え、社内リソースでも推進力のある人材については上流工程の業務に充てたいなどの場合が多く、確保が難しいことが挙げられます。

もう1つの手法がアウトソーシングです。専門知識を有した高度なスキルセットを確保する場合や、単純業務など企業自身で実行体制を保有する必要がない領域について有効な手法です。外部ベンダが得意とする領域をアウトソースすることによって、効率よく運用業務を回していけます。アウトソース領域を広げると内部リソースに余力が生まれるため、貴重な社内リソースを別業務に割り当てられます。

反面、業務をアウトソースする場合、社内にスキルやノウハウが溜まらないことや、運用コストが適正かどうかの判断が難しくなるという短所があります。

それぞれ有効な手法ですので、どちらの手法が優れているかではなく、事業や企業方針などを踏まえて、どちらの手法が適しているかを考慮して検討していくべきでしょう。

2つの手法(インソース活用・アウトソース)をどのように選択して使い分けていくかを考える際には、判断ポイントが3つあります。

  1. 今後の運用体制を考える際に、会社として外部に任せられる情報・技術があるか
  2. インソース活用で進める場合、必要なスキルセットを保有した人材を確保できるか
  3. アウトソースで進める場合、委託する運用の範囲を明確にできるか

1つ目のポイントは、会社として外部に出せない情報・技術があるかを整理することです。独自に開発した技術や個人情報など、会社の方針として絶対に外部に出せないものは出せませんが、例えば一般的に広く流通しているツールの利用方法や定型作業の実施方法などについては、改めて内製化するメリットは少ないでしょう。断捨離ではないですが、本当に自社内に保有する必要があるものは何なのか、客観的に整理する必要があります。

2つ目のポイントは、インソース活用を考えた時にその体制を準備することが可能か、ということです。
昨今のIT人材の市場は供給より需要が多い状態で、必要なリソースを確保するのが難しくなっています。これは確保するための難易度はもちろん、優秀な人材を確保するための費用増にもつながります。また、技術進歩とともに新しい技術領域が運用に追加されることなどもあり、体制を維持更新することが可能な企業としての体力が必要となってきます。

3つ目のポイントは、アウトソース体制を組む場合に範囲を明確にできるかどうかです。この場合、完全に運用を任せている状態でその運用内容が不明確な場合に起きるベンダロックインが最大のリスクです。コスト・運用内容が適正かどうかなどを常に判断できるように運用が可視化、標準化されており、定期的に状況が把握できる状態が求められます。適切な手続きと準備を行った上でアウトソースをすると、継続的に運用標準化、可視化が進みます。この状態であれば、コスト面や品質面などで適切な運用ベンダの変更が可能となり、ベンダロックインを回避できます。逆を言えば、適切な手続きを踏まない状態でのアウトソースは運用をブラックボックス化し、ベンダロックインを招くため、しっかりとした運用範囲の可視化を行うことが重要なポイントです。

これらのポイントを考慮して体制検討を進めていくことで、インソース活用で実施する領域とアウトソースで進める領域の整理が進み、適切な体制を考えていけるはずです。

運用体制最適化の促進

運用体制を検討して最適化するためには、上述したようなポイントを考慮し、それを計画・立案していくことが重要です。下記のような流れで行っていくことが考えられます。

  • 体制検討する領域の整理
  • 手法の検討(インソース活用、アウトソース)
  • 変更にかかるコストと効果の整理
  • ロードマップ策定

企業の状況を踏まえて、領域や手法、コストと効果を整理して総合的に判断していくことで、有効な運用体制の最適化を進められます。

もし、体制検討や計画立案の実施体制に不安がある場合にはIIJにご相談ください。
IIJの運用コンサルティングで領域整理からロードマップ策定まで支援します。運用体制の最適化を実現するための手段の1つとしてぜひご検討ください。