IIJ IoTサービス~ユースケースと今後の展望~

※ IIJグループ広報誌「IIJ.news vol.159」(2020年8月発行)より転載

IoT を活用・運用する上でプラットフォームが重要であることは言を俟たない。 本稿では、IIJ が提供している IoT プラットフォーム「IIJ IoT サービス」の概要を、 個々のユースケースを交えながら紹介する。

IIJ IoTビジネス事業部ソリューションインテグレーション課長 高舘 洋介

目次
  1. IoTプラットフォームとは?
  2. ユースケース(1):IoTデバイスの管理
  3. ユースケース(2):GPSトラッカーなど、省電力端末
  4. ユースケース(3):ネットワークカメラ
  5. 今後の展望

IoTプラットフォームとは?

皆さんは「IoTプラットフォーム」という言葉から、どんなシステムあるいはサービスを想像するでしょうか?
多くの方は、センシングされたデータを扱うクラウドプラットフォームを思い浮かべるかもしれませんが、実際に各社から様々なIoTプラットフォームが提供されています。

例えば、メッセージングシステムに対しIoTの名を冠したPaaSサービス、モバイル回線の管理システム、エッジ端末/クラウドで動作するワークフロー定義ソフトウェア、Industry4.0を主導する工業製品メーカが展開する業務に特化したクラウドサービス……などなど。これらすべてがIoTプラットフォームとして認知されています。

多層にわたるIoTの構成要素において、IIJのコアとなるのは、やはりコネクティビティです。特に、フルMVNOとして提供開始した「IIJモバイルサービス/タイプI」、WAN/VPNを包括するSDN/NFVサービス「IIJ Omnibus」は、IoTの取り組みにおいても安全な閉域ネットワークを提供します。そして、IoTプラットフォーム「IIJ IoTサービス」は、これらのIoT専用ネットワークに付加価値を与え、エッジ端末でセンシングされたデータをクラウドへ連携したり、クラウド側からの制御指示をエッジ端末へ連携したり、あるいはIoTシステム管理者による遠隔地の端末へのリモートアクセスなど、IoTにおける開発・運用を効率化するプラットフォームです(図1参照)。

これらの機能は、ネットワークと共にプラットフォームを提供できるIIJだから取り得る構成であり、IIJのIoTプラットフォームの特長となっています。以下では、IIJ IoTサービスを活用したいくつかのユースケースをご紹介します。

図1:ネットワーク付加価値(サービスコンセプト 図)

ユースケース(1):IoTデバイスの管理

HACCP(ハサップ)を例に挙げると、センシングされた温度情報はクラウドに蓄積され、食品衛生の観点から飲食店などの店舗管理者に提供されます。一方、導入したシステムの構成要素であるセンサーやゲートウェイ機器を管理・運用するのは、情報システム部門やSIerの業務です。

IIJ IoTサービスは、センサーやゲートウェイ機器の通信の異常や、電池残量・電波強度に関連する数値を監視し、検知・通知する機能(デバイスモニタリング)を提供します。また、問題を検知したときは、システム管理者が現地対応しなくていいように、リモートメンテナンスの機能(デバイスコントロール)も提供しています。こうした仕組みは、HACCPだけでなく、圃場監視、工場設備監視など、様々なシーンに適用できます(図2参照)。

図2:IoTデバイスの管理

ユースケース(2):GPSトラッカーなど、省電力端末

GPSトラッカーに代表されるIoT端末は内蔵バッテリで稼働するため、省電力性が求められます。一般的に、セルラーLPWAの一つであるeDRX(※1)を適用したLTE-Mなどの通信を用いることでバッテリ消費を抑えますが、個人の位置情報をインターネット経由で通信するため暗号化が必要となり、端末側の暗号化処理・TLSにより通信量が増大し、バッテリ消費を抑えることができません。

IIJ IoTサービスが提供するモバイル網は閉域ネットワークで構成されるため、UDPなどの軽量な非暗号化プロトコルで端末からのデータ送信が可能です。インターネットを経由してクラウドへ位置情報を届ける際は、本サービスが暗号化処理を代替し、転送先の設定もプラットフォーム側であとから変更できる機能(データハブ)を提供しています。

GPSトラッカーサービスで求められる機能として、IoT端末への下り方向の制御通信があります。例えば、位置情報の送信間隔変更、位置情報の即時送信指示、ファームウェアアップデートの制御トリガーとしての利用です。通常、クラウドからの下り通信ができないNAT環境において、IoT端末への制御通信はMQTT(※2)プロトコルを用いますが、端末側とクラウド側に Publisher/Subscriberの開発を要するため、開発ハードルを高める要素になっています。本サービスでは、クラウドからWebで一般的に用いられるHTTP(RESTful API)によるリクエストを受信し、UDP/ICMP/HTTP/SSHのプロトコルに変換した上で、端末側へ制御通信を送り届けることができます。これは、GPSトラッカーにとどまらず、自動販売機、コインランドリー、産業用コンピュータなど、比較的レガシーな通信を用いる機器にも利用可能な機能(デバイスコントロール)となっています(図3参照)。

(※1)extended Discontinuous Reception:消費電力を抑える技術
(※2)Message Queue Telemetry Transport:軽量なメッセージプロトコル

図3:GPSトラッカーなど、省電力端末

ユースケース(3):ネットワークカメラ

IIJ IoTサービスの開始当初は、扱うデータとして、時系列の数値データやテキストデータを対象としていましたが、工場内の設備や圃場の状態など「リアルタイムの映像」を監視したいというニーズが増えてきました。ただ、ネットワークカメラ向けの映像監視システム「VMS(Video Management System/Service)」は、非常に高機能であるが故に、高価なソフトウェアです。

そこで、本サービスでは、ネットワークカメラに求められるライブストリーミング動画の参照、過去映像の録画、カメラ機器の正常性監視という3つの機能を低コストで用意しました。ライブストリーミング動画参照とカメラ機器監視は、ユースケース(1)「IoTデバイスの管理」と同じサービス機能で提供していますが、ネットワークカメラ上のSDカードに収録できない長期間の映像を保管したい場合は、ストレージ機能(データストレージ)を用意しました。ストレージはギガバイト容量単価で月額7円のクラウドストレージで、ダウンロード時のネットワーク費用もかからないため、コストメリットのある映像保管先としてご活用いただけます(図4参照)。

図4:ネットワークカメラ

今後の展望

IIJ IoTサービスの2020年度の計画として、台湾のアドバンテック株式会社との協業による産業用IoTプラットフォーム「WISE-PaaS IIJ Japan-East」との閉域ネットワーク接続機能、SoftSIM(IIJモバイルIMSI提供サービス)とのプラットフォーム連携、Kubernetesを採用した社内共通のサービス基盤への移行があります。

特にKubernetes環境への移行に関しては、コンテナ管理による自社システム運用の効率化にとどまらず、将来的なIoTプラットフォームの発展に向けたアプローチにもつなげていく予定です。ローカル5GのMEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)設備とクラウドをシームレスに管理するプラットフォームとして、あるいは、コンテナ化したアプリケーションを配備できる柔軟なプラットフォームとして、お客さまに機能を還元できるよう開発を進めていきます。

IoTサービスのユースケースを詳しくご紹介!

利用シーンごとに課題解消へのアプローチ方法やシステム構成図を掲載(PDF:29ページ)


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