iPaaS(アイパース)とは?ETLやSaaS・PaaS・IaaSとの違い、仕組みやメリット、選定のポイントを分かりやすく徹底解説

IIJ クラウド本部 プラットフォームサービス部

部長

鈴木 透

執筆・監修者ページ/掲載記事:11件

クラウドのビジネス利用が当たり前になり、複数のクラウドを使いこなすマルチクラウド化も広がりを見せています。一方でデータのサイロ化という新たな課題も浮き彫りになっています。複数のクラウドやオンプレミスにデータが分散し、連携・活用が難しくなっているのです。その解決策として注目されているのが「iPaaS」です。その仕組みやメリット、効果的な使い方や選定ポイントまで徹底解説します。

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目次
  1. iPaaSとは?
  2. データ連携・統合を実現するiPaaSの仕組み
  3. SaaS、PaaS、IaaSとの違いとは
  4. ETL、EAIとは何が違うか?
  5. RPA、APIとiPaaSの関係性
  6. iPaaSには4つのタイプがある
  7. iPaaSの特徴とメリット、外せない選定ポイントとは
  8. タイプ別に見る主なiPaaSサービス
  9. ニーズを先取りした「IIJクラウドデータプラットフォームサービス」

iPaaSとは?

iPaaS(アイパース)とは「Integration Platform as a Service」の略。複数のクラウドやオンプレミスに分散したデータを連携・統合するソリューションです。データの連携・統合基盤をクラウド型のサービスとして提供しているのが特徴です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現にはデータの分析・活用が欠かせません。しかし、必要なデータが各所に分散・サイロ化していると、その活用が難しくなります。この課題解決策として、iPaaSの注目が高まっています。

データの連携・統合を通じて、業務フローを自動化することもできます。例えば、あるデータが更新されたら、対象のシステムにデータを自動で格納させる。そんなことも可能なのです。ITRの調査では、iPaaS市場は2026年度には115億円、CAGR(2021~2026年度)は32.7%の高い伸びを予測しています。

※(出典)ITRプレスリリース(2022年7月14日)

データ連携・統合を実現するiPaaSの仕組み

異なる環境のデータを連携・統合するためには、必要なデータを抽出してフォーマットを変換し、連携先のシステムに受け渡しする処理が必要です。これを人手で行うのは大変な手間です。データを連携させるインタフェースのプログラムを開発すれば、一連の処理を自動化できますが、データの種類や連携先のシステムごとに作り込みが必要です。システムが複雑化すると、今度はプログラムの開発が大きな負担になってしまいます。

iPaaSを使えば、プログラムの開発は不要です。データの抽出、フォーマット変換、連携先システムへの受け渡しという一連の処理をiPaaSで行えるからです。

iPaaSはクラウドサービスや各種システムが公開している「API」などを利用する仕組み。APIとは、システムやアプリケーション同士がデータをやりとりする際に使用するインタフェースのこと。iPaaSは多様なAPIに対応しているため、異なるプラットフォーム上の様々なシステムやデータを簡単につなぐことができるのです。

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SaaS、PaaS、IaaSとの違いとは

クラウドサービスには「SaaS」「PaaS」「IaaS」という3つの形態があります。iPaaSとは何が違うのでしょうか。

SaaSは、クラウド上のアプリケーションやソフトウェアをネットワーク経由で利用する形態。Microsoft 365などのオフィスソフト、CRMソリューションのSalesforceなどが代表格です。

PaaSは、アプリケーションの基盤となるプラットフォームをクラウド上で提供するサービス。アプリケーションの開発環境やオンプレミスのシステムをクラウド化する基盤などに利用されます。

IaaSは、インフラ環境をクラウド上で提供するサービス。どのようなプラットフォームやアプリケーションを使うかはユーザ次第。3つの形態の中で、最も自由度の高いサービスです。

これに対し、iPaaSは異なる環境のデータやサービス間データ連携機能をクラウド上で提供するサービス。表記は似ていますが、一般的なPaaSとは用途がまったく異なります。

iPaaS、SaaS、PaaS、IaaSの違い
名称
(略称)
正式名称 サービス概要
iPaaS Integration Platform as a Service 異なる環境のデータやサービス間のデータ連携機能をクラウド上で提供するサービス
SaaS Software as a Service アプリケーションやソフトウェアの機能をクラウド上で提供するサービス
PaaS Platform as a Service ミドルウェア、データベース、OSといったプラットフォームをクラウド上で提供するサービス
IaaS Infrastructure as a Service サーバ、ストレージ、ネットワークなどのインフラ環境をクラウド上で提供するサービス

ETL、EAIとは何が違うか?

iPaaS以外にもデータの連携・統合が可能なツールはあります。その代表格がETLとEAIです。

ETLはデータの抽出・変換・書き出しを行うツール。大容量データの連携が可能で、複数システムのデータを1ヵ所に集約する処理に適しています。この特性を活かし、主にBIツールやDWHへデータを集約・統合し、データ分析を行う用途で利用されています。

EAIはデータの取得・加工・変換・登録といった一連の処理を実行するツール。ETLとの一番の違いは、多様なシステムやデータをつなぐ「ハブ」として機能する点。データの集約・統合はもちろん、複数のシステムやデータを連携させて業務フローを自動化することも可能です。

ETL/EAIツールの多くはパッケージ版として提供されています。オンプレミスやクラウド環境に組み込んで利用する形です。iPaaSはマルチクラウドの連携を前提に、もともとクラウド上で提供されるサービス。データの連携・統合という大きな括りではETL/EAIと似ていますが、コンセプトと提供形態が大きく異なります。

iPaaS、EAI、ETLの違い
名称
(略称)
正式名称 機能概要 提供形態
iPaaS Integration Platform as a Service データを抽出してフォーマットを変換し、連携先のシステムに受け渡す。異なる環境の多様なシステムやデータと連携が可能 クラウド上のサービスとして提供
EAI Enterprise Application Integration EAIがハブとなり多様なシステムと連携。データやプロセスの連携・統合が可能 多くはパッケージ版。クラウドでの利用も可能だが、自前で実装する必要がある
ETL Extract Transform Load 複数システムのデータをBIやDWHに集約・統合するための仕組み。分析しやすいように抽出・変換・書き出しを行う 多くはパッケージ版。クラウドでの利用も可能だが、自前で実装する必要がある

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RPA、APIとiPaaSの関係性

近年はDXのニーズの高まりに伴い、業務現場でも様々なツールが活用されています。その1つが、RPA(Robotic Process Automation)。PC上で人が行っていた定型的な作業を自動化するソフトウェアロボットです。例えば、Excelで集計したデータを別のシステムに転記するといった作業の自動化に適しています。

ツールではありませんが、クラウドの利用とともにAPIというキーワードもよく目にするようになりました。APIは先述したように、情報をやりとりする際のインタフェースのこと。定められた形式に従って、何を実行したいかというリクエストを送れば、その処理結果をレスポンスとして返してくれます。

APIは、いわばシステムやアプリケーションの接続窓口。iPaaSはこのAPIを使って、多様なシステムやデータの連携を実現しています。APIはiPaaSにとって必須の技術と言えるでしょう。

iPaaSには4つのタイプがある

iPaaSは多くのベンダーがサービスを提供していますが、大きく分けると「ETL型」「EAI型」「ESB型」「レシピ型」という4つのタイプに分類できます。それぞれの特徴は下記の表の通りです。

iPaaSの4つのタイプ
タイプ 機能概要
ETL型 ETLツールの特徴を備えたタイプ。BIツールやDWHへデータを集約・統合し、データ分析を行う用途に適している
EAI型 EAIツールの特徴を備えたツール。多様なシステムをつなぐハブとなり、フォーマットの異なるデータとも連携可能
ESB型 ESBのように機能するツール。システムを「サービス」という単位の部品の組み合わせとして捉え、それらを疎結合で組み合わせる。サービス指向アーキテクチャ(SOA)で利用される
レシピ型 イベントドリブン型のデータ連携が可能。テンプレートも豊富にあり、分かりやすく、使いやすい。連携処理やその後のフローの自動化も簡単に実現できる

なかでも近年利用が増えているのがレシピ型です。データの連携・統合だけでなく、データの更新やユーザ操作などのイベントをトリガーとして、サービスとサービスをつなぐイベントドリブンな使い方ができるのが特徴です。その処理をテンプレート化した「レシピ」が豊富に揃っており、パラメータを設定・変更するだけで、多彩な処理を実行できます。

iPaaSの特徴とメリット、外せない選定ポイントとは

iPaaSは多彩な機能を実装しています。その機能を活用することで、様々なメリットを享受できます。特徴とメリットを理解した上で、自社のニーズや用途にマッチしたサービスを選択することが肝要です。iPaaSの主な特徴・メリットと重要な選定ポイントは下記の表の通りです。

iPaaSの特徴とメリット
特徴とメリット 概要
ローコード・ノーコードで開発が可能 コードを書かずに開発できるノーコード・ローコード開発が可能。高度なプログラミングのスキルは必要ない。GUI上で必要な設定や数値を入力するだけ。ITに精通していない業務部門でも利用可能
属人化を防ぎ、開発を内製化できる エンジニア以外でもノーコード・ローコードによる開発ができるため、属人化とブラックボックス化を防止。IT部門に依存しない、現場主導の内製開発もやりやすい
業務の自動化を促進 様々な部門をまたいで人手で行っていた業務フローを自動化することも可能。特にレシピ型はこの機能が充実している。業務の自動化により、生産性が向上し、データの入力・転記ミスも解消できる
導入・運用が容易 サーバなどのインフラ環境を自前で整備する必要はなく、すぐに利用を開始できる。導入後もインフラ環境はクラウドベンダーが保守するため、運用管理の手間も軽減できる
システムの価値向上 データがサイロ化していた既存システムも、システムに大きな改修を加えることなく、データ連携が可能。新たに導入したシステムともスムーズに連携できる。データの連携性が向上することで、新旧システムの価値が大きく向上する
iPaaSの選定ポイント
選定ポイント 概要
連携可能なAPIの種類 iPaaSはAPIを利用してシステムとデータの連携を実現するため、APIの種類が豊富なほど、多彩な連携が可能。国産サービスは、国内で普及しているクラウドやアプリケーションの連携に幅広く対応している。海外産サービスは、海外で広く利用されるクラウドやアプリケーションのAPIが豊富。自社のクラウド戦略やデータ活用ニーズに応じて見極めることが重要
ネットワークの連携性 iPaaSはネットワークの利用が不可欠だが、ファイアウォールやゲートウェイが設置されたオンプレミスへの接続が難しいものもある。この場合は自社のネットワーク構成を見直すなどの対応が必要。オンプレミスのシステムやデータと連携する場合は要注意
用途に応じたタイプの見極め アプリケーション統合を考えている場合、カスタマイズによる複雑な処理も行いたい場合はESB型、EAI型がおすすめ。データ分析を目的とした場合はETL型。業務の自動化を目的とした場合はレシピ型
サポート体制 「障害や遅延発生時の連絡や対応は迅速か」「提供機能の使い方が分からない場合は24時間365日で対応してくれるのか」「サポートセンターは日本語に対応しているか」などがポイントになる。海外産サービスはサポート拠点が海外にある場合や、日本語に対応していない場合もある。事前確認が不可欠
価格 料金形態はデータ量に応じた従量課金、利用ユーザ数に応じたサブスクリプションモデル、制約のない月額固定など様々な形態がある。スモールスタートなら従量課金が適しているが、やりとりするデータ量が増えると思わぬ高額になってしまう。定額制を選んでも、利用が広がらないと割高になる。誰がどういう用途で使うか。ポリシーをしっかり決めた上で選択することが重要

タイプ別に見る主なiPaaSサービス

国産/海外産ともにiPaaSは様々なサービスが提供されています。ここでは4つのタイプ別に、主なサービスを紹介しましょう。

ETL型

  • trocco(トロッコ)

EAI型

  • HULFT Square(ハルフトスクエア)
  • IIJクラウドデータプラットフォームサービス

ESB型

  • Anypoint Platform

レシピ型

  • Zapier
  • Workato(ワーカート)

ニーズを先取りした「IIJクラウドデータプラットフォームサービス」

iPaaSは利用の拡大に伴い、その適用領域や用途も広がりを見せています。データ連携・統合を核としつつ、いかに多様なニーズに対応するか。これが今後のiPaaS選びのポイントになってくるでしょう。このニーズを先取りしたサービスが「IIJクラウドデータプラットフォームサービス」です。

アステリア社のEAIツール「ASTERIA Warp」をコアエンジンとして採用。約90種類の豊富なアダプタが用意されており、GUIベースでデータの加工・変換・連携が可能です。データフローやワークフローの開発もGUIベースのノーコードで簡単に作成できます。

オンプレミス環境とプライベート接続することで、本サービスをオンプレミスの一部のように利用可能。連携したオンプレミスやクラウドのデータは、サービスのプラットフォーム上に集約されるため、様々な活用が可能です。それを支援する機能も充実しています。「データマスキング」機能はその1つ。データの参照整合性は維持したまま、データにマスクをかけて秘匿性を高めます。個人情報などの機微データも安全に取り扱えます。

ユーザ専用のデータベース(PostgreSQL)も提供可能です。収集したデータを一時的に保管する中間データベースとして利用できるほか、複数のマスターデータを集約した統合マスターも簡単に作成できます。

DXを推進する上でデータの活用は不可欠ですが、サイロ化したままでは“宝の持ち腐れ”です。「IIJクラウドデータプラットフォームサービス」は既存環境にほとんど手を加えることなく、データのサイロ化を打開し、お客様のDX戦略を新たなフェーズに引き上げます。