第5話:IIJ GIGAスクールソリューションの導入事例

連載

先輩、教えて!
GIGAスクールのネットワーク

2020年度(令和2年度)のGIGAスクール構想に基づく環境整備が行われてから2年。
学校現場でのネットワーク利用にはどのような課題があり、どのような解決策が取られているのでしょうか。GIGAスクール案件に携わる営業部門のメンバーがその実経験などをご紹介。
今回は、IIJ GIGAスクールソリューションの導入事例をご紹介します。

登場人物

けいじ先生(統括)

やたら先進的な試みを実施しているが実はせっかちとの噂も。先生役を買って出たが思い込みも激しい。 IIJ在籍25年を超える生き字引的レジェンド。

たくみ部長

優しさとマメが取り柄の中間管理職。当人はしっかり仕事をしているつもりでもどこか肝心なところが抜けている。

みなこ担当

入社1年目、右も左もわからないままいきなり教育業界担当を課せられ困惑している。先輩からの叱咤激励に耐え、日々勉強に励む健気な新人営業。


たくみ
けいじ先生、今日はお便りが来ています。
「当教育委員会もGIGAスクール構想に基づく環境整備を行ったのですが、正直今後の本格利用に耐えられるか不安です。将来を見据え、先進的な取り組みをしている教育委員会を参考としたく、ご教示いただけませんか」とのことです。

けいじ
わかりました。それでは設計理念が異なる代表例として「横浜市様」と「関東圏内の某県教育委員会様」についてご紹介しましょう。

みなこ
横浜市様に県教育委員会様ですか!どちらも規模が大きそうですね!!

けいじ
どちらのお客様も、GIGAスクール構想に基づく環境整備後のトラフィック量の増大や、今後のデジタル教科書などの本格利用に備えて環境整備を行われた事例です。

【横浜市様の事例】

【横浜市様 概要】

  • 案件名「横浜市GIGAスクール用ネットワーク運用業務委託」
  • 拠点(学校)数:516校
  • 各拠点の回線帯域:1Gbps帯域確保

けいじ
まず横浜市様の事例です。市内510を超える小学校、中学校のWANを市内データセンターに集約し、更にSINETにも広帯域で接続されたモデルです。各学校の回線帯域を確保するために、WANを専用線とすることをご決断されました。

たくみ
さすが全国一の学校数規模を誇る団体様ですね!でも集約型ってボトルネックになるのですよね?

けいじ
「集約型=ボトルネックが生じる」というのは、いささか安易な解釈です。ちょっと逆の見方をしてみましょう。
集約型のメリットは「自組織で帯域を設計できる」と言う点です。専用線化は、その精度(1学校あたりの帯域確保)を高められる手段です。

みなこ
なるほど~!!悪い見方ばかりしていましたが、集約モデルにはまだまだたくさんのメリットがありそうですね!

けいじ
そのとおりです。文字どおりすべてのデータが集約ポイントを通過するため、一点を集中して監視・分析することで現状把握や将来構想にも繋げられる利点があります。また、ローカルブレイクアウト(LBO)と対極のように言われていますが、LBOも実は広い視野で見ると集約型なのです。

みなこ
ええー!?どういうことでしょう…

けいじ
答えは次にご紹介する、関東圏内の某県教育委員会様の事例を見てみたら分かります。

【某県教育委員会様の事例】

【概要】

  • 拠点(学校)数:約70校
  • 各拠点の回線帯域:1Gbpsベストエフォート×2~3

けいじ
こちらの某県教育委員会様では県内約70校の高校をLBOする方式を採用されました。1校1回線のベストエフォート回線で構築されたのですが、帯域不足が問題となり、今では1学校あたり2回線または3回線のベストエフォート回線を敷設したLBO環境を利用されています。

みなこ
ベストエフォート回線ではありますが、合計で2~3Gbpsってことですよね!ちなみにこれ、普通のLBOですよね?どこに集約があるのでしょう。

けいじ
はい、結局LBO環境が繋がる先はどこになるか考えてみましょう。インターネット向け接続環境ですから、インターネットサービスプロバイダー(ISP)にすべての回線が接続されているわけですよね。

たくみ
わかりました!図中で言うとIIJ NOC(ネットワークオペレーションセンター)に全部集中しているのですね。つまり「ISPで集約されている」のですね!!

けいじ
はい、そうなのです。また実際の利用帯域は、ベストエフォート回線をいくら束ねても数倍にはなりません。これはベストエフォート回線の設計が「最大1Gbpsのセンター装置(※)を複数のユーザで分割・分岐利用している」という点にあります。また、ISPと相互接続している部分の帯域も基本秘密ですし、設備増強もISPに任せるしかありません。

※ 例:G-PON(Gigabit Passive Optical Network)


みなこ
んん?つまりは、集約型もLBOもどちらも集約ポイントはあるものの、集約型は「自組織である程度拠点の帯域を設計できる」。LBOは「自組織では設計できない(ISPにお任せする形)」ということですか。

けいじ
おっ、鋭いですね!集約ポイントのお話に集中してしまいましたが、どちらの手法にも特徴があり、一概に良し悪しは決められません。様々な観点から分析して共通点・相違点を確認したり、目線を変えて判断することが大事です。なによりも、他団体様の事例ですね。私たちも多くのお客様の実態をお聞きして、その経験を「IIJ GIGAスクールソリューション」と言う形でお客様へ提供しています。

今後も様々な事例をご紹介していきます。(続く