第12話:千葉県立君津商業高等学校に突撃!アフターGIGAスクールに必要なネットワーク整備後のリアルを聞いてみた

連載

先輩、教えて!
GIGAスクールのネットワーク

個人所有端末を用いる「BYOD(Bring Your Own Device)」方式で、県立学校のICT活用の推進に力を入れている千葉県教育委員会。
安定して高速なネットワーク接続を実現するため、IIJでも学習用ネットワーク整備の支援をいたしました。
今回は千葉県立君津商業高等学校様を訪問し、お話をお伺いしました。

登場人物

けいじ先生
(統括)

やたら先進的な試みを実施しているが実はせっかちとの噂も。先生役を買って出たが思い込みも激しい。 IIJ在籍25年を超える生き字引的レジェンド。

みなこ担当

入社1年目、右も左もわからないままいきなり教育業界担当を課せられ困惑している。先輩からの叱咤激励に耐え、日々勉強に励む健気な新人営業。

けんさく先輩

入社5年目。主に教育業界を担当し、アフターGIGAスクールに必要なネットワーク更改案件に複数携わる。千葉県様の営業担当。

おかまつ教頭

千葉県立君津商業高等学校教頭。令和3年度までは同県教育委員会の教育政策課ICT計画・環境整備班長を務め、県立学校学習用ネットワーク整備にも携わっている。

よしだ先生

千葉県立君津商業高等学校商業科教諭。教員のICTに対する意識の変革、授業内での積極利用などに日夜励んでいる。料理が得意だとか……!?

千葉県立君津商業高等学校 正門


みなこ
教育現場での実際のネットワーク活用状況をもっと知りたい!ということで、今回はIIJのお客様である、千葉県教育委員会様管轄の千葉県立君津商業高等学校様にお邪魔しています。
担当営業のけんさく先輩!おかまつ教頭は、ネットワーク整備時に千葉県教育委員会のご担当者様だったって本当ですか!?

けんさく先輩
千葉県教育委員会様を担当しているけんさくです。そうなんです。
千葉県教育委員会様は、主に県立高校と特別支援学校を管轄されています。BYOD方式でICT教育の実践に取り組むということで、ご要望に合わせて提案しました。令和4年度に教頭として学校現場にお戻りになられたとのことです。今回、こうして君津商業高等学校様にお伺いするのは初めてなので、緊張します……!

おかまつ教頭
教頭のおかまつです。ようこそいらっしゃいました。千葉県教育委員会内でICT関連の組織すらなかった担当者時代、ネットワークといえばIIJ……という考えからけいじさんをはじめ皆さんと、熱くこういうことが実現できないか……と語っていましたね。
令和4年度を目前に無事ネットワーク整備が完了した矢先、現場に戻ることになりました。本校でのネットワークの利用状況については何でも話しますよ!

けいじ
ご無沙汰しています。大変心強いお言葉、ありがとうございます。教育のICT化に積極的に取り組んでおられる先生がいらっしゃるとお聞きしましたが、ご紹介いただけますか。

よしだ
先生
商業科教諭のよしだと申します。実はおかまつ教頭の教え子なんです!私自身も商業科出身で赴任して4年目ですが、大学在学中に起業して教員になる前は料理人の道に進んでいました。今は本校のネットワーク周りの主担当をしています。教室へのWi-Fi導入も、おかまつ教頭とIIJが当時ご担当されていたんですね。

けんさく先輩
料理人ですか!?興味深いご経歴をお持ちですね……!千葉県教育委員会様と言えば、BYOD端末用のWAN回線や、教室内のWi-Fi設置と同時にWi-Fiに接続する端末を制限する目的でMACアドレス認証システムを導入。主要なOSに合わせた接続マニュアルも作成しました。
ところで、それぞれが端末を持ち寄って接続するBYODならではの悩みはありますか?

おかまつ教頭
私がよしだ先生に仕組みを教えて、登録を進めてもらいました。Androidは、メーカや機種によってUIや画面遷移が異なるケースがあり、本校でも戸惑いはありました。一方で、あくまでも県のお金で作ったネットワークを、フリーWi-Fiのような仕組みで提供するには抵抗があり、教育を受ける人だけが使用できるようなシステムを整えられたのは良かったと思います。生徒指導の先生も、無法地帯になっているのではないかと懸念していましたが、しっかりと私から説明し、理解してもらいました。保護者の皆さまにとっても安心材料になっていると思います。

けいじ
教育現場でのネットワーク機器が、ウイルスの侵入口になることだけは避けたいですからね。少々手間取ってしまって恐縮ですが、学校をインターネットカフェ化しないための仕組みであることをご理解いただいて感謝です。

みなこ
勉強になります。訪問に先んじて、ホームページを拝見しました。TOPページにICT活用について、大々的にリーフレットが載っていました!「ICT教育の地域トップランナーを目指します」というメッセージがありましたが、商業高校としてどのような活用を目指しているのでしょうか。

令和5年度入学生用に千葉県立君津商業高等学校が作成したICT活用に関するリーフレット。
ICT活用への積極性が見て取れます!


おかまつ教頭
本校では、教育系の決まったアプリケーションを使って授業をするのではなく、千葉県教育委員会で調達しているMicrosoft 365 A5内のExcelなどのアプリケーションを利用し、すぐ社会に出ても不自由のないようリテラシーを高めていきたいと思っています。商業高校は、週に実施する授業の3分の1は商業の授業をする学校で、卒業後はすぐ社会に出る生徒が多いんですよ。簿記などの授業ではExcelとの親和性も高いですからね。「伝統と先進が調和している学校」を目指し、最新のビジネス教育を提供していく所存です。

けんさく先輩
小中学校では、国によるデジタル教科書やCBTなどの学習コンテンツがありますが、高校では特に指定もないためどんな活用をしているのだろう……と思っていました。実用性を意識された授業、また即戦力を付けることを重視しているんですね。このリーフレットの中の写真に写っている生徒さんは、何をしているのでしょうか?「キャリア教育支援授業」……と書いてありますね!

おかまつ教頭
県内の小中学校向けに、商業科の特徴を生かしたキャリア教育を、出前授業のような形で実践しています。本校独自の取り組みで、よしだ先生のような先生方をはじめ、その小中学校の卒業生である本校の生徒が授業をすることもあります。高校でパソコンを使って学んだことを、まとめて発表したりしているんです。令和4年度は3回実施しました。

みなこ
それは素晴らしい小中高連携ですね……!生徒さんにとっては、学んだことをアウトプットする経験にもなり、端末を活用した資料作成のスキルも格段に上がりそうですね。ホームページにはリーフレットと一緒に、端末の標準的な推奨仕様も公開されていましたよね。

令和5年度入学生用に千葉県立君津商業高等学校が作成した端末の標準的な推奨仕様。
自宅にある端末でも仕様を満たせれば持ち込み可のようです。


よしだ
先生
はい。3年後にすぐ社会に出る生徒のことを考慮し、Windowsを標準にしました。検定試験などでもMicrosoftのアプリケーションを使うことが多いため、Windowsに慣れることを意識しています。授業では共同で編集できるPowerPointやExcelを使うこともありますね。商業高校出身の生徒を募集する企業の中では、少しでも情報処理に長けている生徒を求めるところも多く、実際に卒業生がICTリテラシー向上に貢献していると聞いています。

けいじ
最終的に、地域産業内のICTリテラシーの底上げになりそうな取り組みですね。パソコンが好きな生徒が多く集まってくるでしょうから、利便性を享受する一方で、個人情報保護の考え方やリスクマネジメントの教育についても注力されることと思います。……と、まじめに語ってしまいましたが、我々が提供していますネットワーク環境はズバリ好調なのでしょうか!?

よしだ
先生
はい!社会人の方に講演いただく講習会を、各学期に1回程度実施しているんですが、各教室のプロジェクターを使ってオンラインで接続しても、安定して利用できています。体育館で集まってハブをいくつも繋げて……と苦労していた時代が懐かしいくらいです。地理的要素もあるかもしれませんが、授業で1クラス40人が1つの無線APに接続しても遅延は起きていませんでした。あとは、授業準備でクラウド上に授業資料をアップロードしたり、生徒に提出してもらったりすることも多いのですが、速くて助かっています。資料印刷の手間も省けましたし、願ったり叶ったりです。

みなこ
安心しました……!よしだ先生以外の先生方も、授業で積極的に活用いただいているのでしょうか。

おかまつ教頭
全世代の先生が前向きに利用していますよ!研究授業の期間に、お互いの授業を見学し合っているのを見かけます。よしだ先生をはじめICTを積極的に使う先生の授業は、教科の違う先生も見に行っていますね。新任の先生には、特に使ってもらうように働きかけています。ネットワークが整備され、よしだ先生の働きかけによって、まず先生方の意識と働き方が変わりました。校務に関しては先行して活用が定着していて、授業では令和5年度から一斉に利用し始めることになります。アンケートもWeb形式にするなど、ペーパレス化も強化していきたいです。改めてIIJには、安定した高速のネットワークを提供いただいてありがたく思っています。

インタビューの様子。
おかまつ教頭とよしだ先生の熱量を肌で感じました!


けんさく先輩
営業担当としてなんだか照れるな……と冗談はさておき、こちらこそありがとうございます!
千葉県教育委員会様には、月次で運用報告をしています。学校単位ではなくユーザ単位ですが令和4年の11月から、君津商業高等学校様のアドレスが常時トップ10の中に登場されていました。この時期から力を入れて取り組まれたことは何かありましたか。

よしだ
先生
その時期であれば授業配信が始まって、先生方が撮影した授業をアップロードしたり、リモートでライブ配信をし始めたころだと思います。大病を患った生徒が入院することになり、このままでは単位を落として留年になってしまう……ということがきっかけで、病室から授業に参加できないか模索していました。おかまつ教頭に制度面を確認してもらいながら、裏では技術的に実施するための準備を進めていました。コロナの影響で法律が変わって、特別な理由があればリモートでの授業参加も認められることとなり、コロナウイルスの濃厚接触者となった生徒にも同様に対応できました。

みなこ
まさに新しい学びの形ですね!学校現場はもうここまできているんですか……!
大病を患った生徒さんはその後どうなったのでしょうか……?

よしだ
先生
該当の生徒は見事に回復して卒業ができたんです!ライブ配信の時にクラスメートとコミュニケーションを取れていたので、卒業までの数日間登校した際も、難なく交流できていました。保護者の方も涙ぐんでおられましたね。教員としては嬉しい限りでした。これもネットワーク整備の賜物ですね。

けいじ
大変貴重なエピソード、教えていただきありがとうございます。先生方の熱心さが伝わりました。これもよしだ先生という、熱く若きリーダーの存在が大きいのではないかと思います。
先生方だけでなく、保護者の皆さまの意識についても変化はありましたか。

おかまつ教頭
基本的に高校はBYODですから、端末の準備やICT活用について、様々な意見があるのではないか、と我々としても身構えていましたが、保護者説明会の場で「ICTは今の時代必要だよね」と必要性を認識されていることに大変驚きました。その際、先述した端末の推奨仕様を満たすものを実機として用意しましたが、ものすごい列を作って皆さん興味津々でしたね。もちろん家庭の事情で端末を用意できない生徒については、端末を貸与する準備もありますし、社会に貢献できる生徒を育成していくことが使命ですから、その軸はブレずに進めていきたいです。

みなこ
保護者の皆さまのご理解と、支えあってこその教育ですものね。
本日は大変勉強になりました。お忙しいところお時間をいただき、ありがとうございました!

千葉県立君津商業高等学校様の正門から校舎入口までの景色。
桜並木を通って入学された新入生のICT活用に、期待が高まります!

令和5年度の千葉県立君津商業高等学校様のICT活用に今後も注目ですね!(続く