第19話:アフターGIGAスクールの授業に突撃!千葉県立君津商業高等学校の授業に潜入してみた

連載

先輩、教えて!
GIGAスクールのネットワーク

個人所有端末を用いる「BYOD(Bring Your Own Device)」方式で、県立学校のICT活用の推進に力を入れており、IIJが学習用ネットワーク整備の支援をさせていただいた千葉県教育委員会。
今回は以前インタビューを実施した千葉県立君津商業高等学校様の簿記の授業を見学させていただきましたので、一人1台端末の授業での活用状況についてレポートします。

登場人物

けいじ先生(統括)

やたら先進的な試みを実施しているが実はせっかちとの噂も。先生役を買って出たが思い込みも激しい。 IIJ在籍25年を超える生き字引的レジェンド。

みなこ担当

入社1年目、右も左もわからないままいきなり教育業界担当を課せられ困惑している。先輩からの叱咤激励に耐え、日々勉強に励む健気な新人営業。

おかまつ教頭

千葉県立君津商業高等学校教頭。令和3年度までは同県教育委員会の教育政策課ICT計画・環境整備班長を務め、県立学校学習用ネットワーク整備にも携わっている。

よしだ先生

千葉県立君津商業高等学校商業科教諭。教員のICTに対する意識の変革、授業内での積極利用などに日夜励んでいる。料理が得意だとか……!?

千葉県立君津商業高等学校校舎


みなこ
今日は千葉県立君津商業高等学校様に来ています!
お邪魔するのはけいじ先生の講演会以来ですね!(笑)

けいじ
いやぁ、あの時は緊張した…今日は授業見学の身なので心が楽です。(笑)
君津商業高等学校様は昨年のインタビューで、Teamsを使った遠隔授業など実施されると伺っていましたし、
今日の授業も大いに期待ですね!

みなこ
商業高校ならではの「簿記」の授業を拝見できるなんて貴重な機会ですよね!
あっ、おかまつ教頭、よしだ先生、本日はよろしくお願いいたします!

おかまつ教頭
よろしくお願いします。今日は2月末に日商簿記検定3級の試験を控える1年生の演習授業の様子をご見学いただきます。
特別に端末を使う授業を用意したわけではなく、あくまでもいつもの授業でどのように利活用しているかをご覧いただきたかったので、等身大の授業をお見せできればと思います。

よしだ
先生
先日は社会人講演会ご登壇ありがとうございました!授業を担当するよしだです。
検定試験に向けた授業ということで、検定試験の本番を想定して問題演習はプリントで実施させ、問題の解説はTeamsの画面共有を用いて行います。
早速教室に移動しましょう!

みなこ
おおお、Teamsが登場するのですね!どんな授業になるんだろう!わくわくです!お邪魔しま~す!
あれ、黒板に向かって机を並べるスタイルではないんですね!?

見学した授業のクラスの全貌。4~5人1組のグループで机を繋げ、机には端末と電卓が!


けいじ
各々の机の上にはBYOD端末がありますね。ここからTeamsに接続していくのでしょう。
Teams上で解説するとおっしゃっていましたから、わざわざ黒板がある前を向く必要はないんですね。

みなこ
(10分間個人で問題を解くように指示があった後)よしだ先生が口を開き始めました!
まずは解けた生徒を挙手させて、解答にあたってどこから着手したか聞いていますね。
ここで先生のGoodNotesの画面共有登場…!重要な部分や解答を導き出すヒントとなる箇所をマーカやペンを用いて強調されていますね。
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けいじ
よく見ると、簿記の問題文は長かったり表の中で空欄になっている部分も多いですね。
これを板書した上でポイントを解説する従来の方法より、ずっと労力を削減できそうです。
手元にある自分の端末で解法を確認しながら、プリント上の自分の解き方と照らし合わせて定着させていくのですね、これは面白い!

(上)Teamsで画面共有している自分の端末上のGoodNotesで解法やポイントを記入しているよしだ先生。

(下)実際にTeamsで画面共有されているよしだ先生の画面。穴埋め箇所も生徒たちに答えさせながら埋められていく。

自分の端末上で解法を確認しながら電卓で計算をする生徒。


みなこ
去年の利益が繰越利益剰余金になる、っと…おっと、解説が明快すぎて、思わず授業の様子をメモするつもりが授業の内容を必死にメモしていました(笑)
黒板を見るために顔を上げる必要もなく、集中して手元の端末を見ながら重要なところは紙でメモを取る、まさにICTと紙のハイブリッド授業ですね。

けいじ
穴埋め問題は生徒に一斉に答えさせたり、大事なポイントを伝えるときは「前を向いて」と一声かけていましたね。
向かい合う机の形から驚きましたが、端末を上手く授業の中で溶け込ませ、演習の授業ながらも対話型の要素も取り入れておられるところに従来の授業とは異なる刺激を感じました。

グループ内で教え合いをする場面も。
進捗具合は生徒によってまちまちで、解説の時間ではじっくり解説を聞き込む生徒もいれば次のプリントの演習に取り組む生徒もいました。
よしだ先生、みなさん、授業お疲れ様でした!


みなこ
よしだ先生、授業見学ありがとうございました!端末が授業に組み込まれることで、授業スタイル自体がガラッと変わることに個人的に感動しました。
今後端末を使って実践してみたい授業や発展させていきたい授業スタイルはありますか?

よしだ
先生
ありがとうございました。今は「端末やアプリケーションをツールとして用いて、普段行っている授業をいかに効率的にするか」という点を重視して授業準備に取り組んでいます。
今はまだ正直「ICT」の「C」、コミュニケーションの部分が足りていないと思っています。
今後は順次生徒たちの手元の端末の画面を共有して解答をクラス全体に共有するなど、端末をベースとしてコミュニケーションや対話を意識した一体感のある授業を作り上げていきたいですね。

けいじ
1人1台端末とネットワーク環境を駆使すれば、電子黒板の代わりにもなりそうだなと今日の授業を見て思いました。
トラフィックの負荷は普段感じないでしょうか?

おかまつ教頭
よしだ先生の授業が一番トラフィック量が多いと想像できますが(笑)、同じくらい端末を用いた授業をしている先生と同時に授業を実施しても遅延は見られないですよ。
アプリケーション側の画面設定を変更したのもあるかとは思いますがカメラをONにして顔出ししても止まらないですね。

みなこ
安心しました…!授業以外でも端末やアプリケーションを使う機会は以前と比べて増えましたか?

よしだ
先生
私が顧問を務める家庭科部で、2023年度初めから地域のメロン農園を巻き込んで生産の途中で間引かれて廃棄されてしまうメロンを用いたピクルスの商品化プロジェクトを立ち上げました。
その中で、端末やネットワーク環境を駆使して農園のホームページの大幅リニューアルや企業ロゴ・購入フォームなどの新規作成に取り組みましたね。
実は商業高の甲子園と呼ばれる生徒商業研究発表大会で本校が全国準優勝に輝いたんです!
これもやろうと思ったときにすぐに着手できる端末やインターネット環境が整えられているからこそ実現できたチャレンジだと思っています。

おかまつ教頭
マスクメロン、甘くて有名なんですよ(笑)この大会は全国商業高校協会主催で、商業に関する研究や地域と一緒に取り組んだ試みを論文とプレゼンテーションで発表します。
わが校は総合得点は同点首位だったものの同点の場合は論文点の優劣で順位が決まってしまって。それでも発表点は1位でした!
PowerPointのありとあらゆる機能や動画を駆使して出来上がったスライド、そしてプレゼンテーションの内容には思わず私も涙してしまいました…(笑)

プレゼン動画から一部抜粋。投影されているのがリニューアルされたホームページです。


けいじ
発表能力についてももちろん驚愕なのですが、このスライド作成能力は凄まじいですね。。。
GIGAスクール構想の環境を享受した世代が社会人になって弊社のような企業に入社してくる時代が恐ろしいです。(笑)

みなこ
私なんかすでにゆうに超えられています。。。泣

よしだ
先生
本日こうして皆さんが授業見学にいらしてくださっていますが、私も以前千葉市内の中学校の授業を見学しに行ったことがあります。
率直な感想は“この子たちが高校生になる頃には、教師である自分がもっと端末を使いこなせていないとマズい”。
ICT活用の旗振り役のイメージを持たれているかもしれませんが、今では生徒から教えてもらうことも増えてきていて、「自分が校内で一番できると思っていたのに…」と思うことも増えました(笑)
先陣切って端末利用の幅を広げることに奮起するのも良いのですが、生徒やほかの先生からも教えてもらいながら一緒に「これを使って何をやるか?」という発想を大事にしていきたいと考えています。

みなこ
新しい発想を実践に移すにあたり、円滑なコミュニケーション・情報発信などすべての支えとなるインターネットインフラの重要性を改めて痛感しました。
これからも皆さんの一つ一つの「チャレンジ」を微力ながらサポートしていきたいです!!燃えてきました!

けいじ
心にグッとくるエピソードまで、共有いただきありがとうございました。
授業についても端末やインターネットの活用の可能性をまだまだ感じますね!
これからも色々とお伺いさせてください。本日はありがとうございました。

これからの時代を生きる児童・生徒の皆さんの可能性を最大化させるインターネット接続を、IIJはこれからも提供してまいります(続く)